『歴史探偵』×『どうする家康』コラボSPが放送!河井雅也CP「松本潤さんは家康に対して真摯に、真面目に向き合われている方です」

特集・インタビュー
2023年08月20日
『歴史探偵』©NHK

俳優・佐藤二朗が結成した架空の探偵社が、歴史の謎や新事実に深くスリリングに切り込んでいく『歴史探偵』。8月23日・30日(水)の放送では、そんな同番組と大河ドラマ『どうする家康』がスペシャルコラボ。徳川家康役の松本潤、井伊直政役の板垣李光人をゲストに迎え、家康VS秀吉の壮絶なバトルに迫る。

前編では、大河ドラマの放送に合わせ、小牧・長久手の戦いに着目。合戦の舞台となった小牧山城を徹底調査する。いっぽう、後編では、家康と秀吉の戦いに大きな影響を与えた戦国の巨大地震を検証。さらに、大河ドラマの撮影現場に潜入し、その舞台裏も紹介する。

そんなスペシャルの放送に当たり、『歴史探偵』のチーフプロデューサー・河井雅也さんに前後編の見どころや同番組への思い、収録時の松本さんのエピソードなどをお聞きしました。さらに、『どうする家康』に感じる魅力なども。


◆まず、『歴史探偵』という番組の特色を教えてください。

僕は、『歴史探偵』を“攻めの歴史番組”だと思っています。NHKではもう何十年も歴史番組を作っていますし、家康と秀吉なんてもう数えきれないほど特集していると思うのですが、そんな中でいかに新しいものを提示するかというのが『歴史探偵』だと思っていて。探偵が現場に行って調査を行うというのが一番の売りであり、どのように番組を作ったら歴史を知らない人でも楽しんでいただけるのかということをずっと考えながら作っています。専門家の先生に相談に行ったり、情報交換をしながら、どのように毎回“攻めるか”というのを楽しみながら考えています。

◆今回の前後編スペシャルの見どころは?

前編(8月23日)で言うと、探偵が小牧山城に行き、再現された堀を見せてもらい、実際にその中を通って…ということをしているのですが、「あのころはこういう感じだったんだ」というのを視聴者の方に身近に感じていただきたいという意図があって。後編(8月30日)では天正地震に迫っていますが、その地震の影響で家康と秀吉が手を結ぶようになったと言われていて。私とディレクターでなぜ2人が地震後にそういう関係性に至ったのかと話し合う中で、それぞれ領地の被害状況が全く違ったのも理由の一つとしてあるんじゃないかな、と。そこで、探偵が専門家の方と共にマップを使って各地の震度予想を行い、分かりやすく、今の時代に沿って落とし込むということを行っています。

◆番組を作る上で、構成を組みやすい人物や時代というのはあるのでしょうか?

それはあります。僕ら『歴史探偵』は戦国時代を一番得意としているのですが、資料がたくさんあるが故に新しさを探すのが難しい時代でもあって。今回取り上げている小牧山城の枡形虎口の造形の秘密なども、独自に専門家の先生にお聞きしてたどり着いた部分なんです。新しさを探すのは難しくもあり、同時に醍醐味でもあると思っています。

『歴史探偵』左から)佐藤二朗、松本潤©NHK

◆松本さんが『歴史探偵』に出演されるのは2度目となりますが、印象はいかがですか?

松本さんとは打ち合わせなどで何度かお話させていただいていますが、家康についてめちゃめちゃ詳しいんです。僕らはYouTubeのNHK公式アカウント内で『YouTube歴史探偵』という動画を配信しているのですが、その収録時に、松本さんと“家康はどのような本を読んでいたのか”という話題になって。家康の愛読書として有名な作品はいくつかあるのですが、松本さんの口から出てきたのは「貞観政要」という本。これは唐の第二代皇帝・李世民と彼の重臣たちの問答を基に編集された言行録で、実際に家康が読んでいたとされているのですが、僕ら歴史番組のディレクターでも知らない人がいるんじゃないかと思うくらいの話なんです。また、松本さんは家康について深く調べているだけでなく、ゆかりのある場所にも自ら足を運ばれていることから、お話していても僕らが想定している以上の答えが返ってくるのでとても面白くて。今、日本の中でも一番と言っていいほど家康に対して真摯に、真面目に向き合われている方だと思います。

◆それでは、板垣さんはいかがでしたか?

板垣さんは、この番組の収録中も役柄同様に松本さんを支えてらっしゃって。「こんな感じでいつも大河ドラマを撮影しているのだろうな」というのを感じられて楽しかったです。また、8月20日(日)の『どうする家康』(NHK総合)放送直後には、『歴史探偵』とのコラボで板垣さんが“大河受け”をするという新しい試みもやらせていただきました。板垣さんがご自身の演じる直政の小手・長久手の戦いにおける活躍を振り返っていますので、ぜひこちらもチェックしていただけたらうれしいです。

◆河井さんが感じる『どうする家康』の面白さは?

純粋にとても面白いなと思いながら、毎週見ています。家康って、資料がたくさん残っていて、分かっていることが多いながら、それでも空白の期間というのがいくつかあるんです。そこをうまく埋めていく演出が魅力的だなと。さらに、最新の知見というのもしっかりと取り入れられていて、いつも楽しく拝見しています。

◆これまで印象に残っているシーンはありますか?

すごくマニアックな視点ですが、長篠の戦いのシーンでしょうか。この戦いというのは、これまでの大河ドラマでは織田軍による三段撃ちの様子が描かれてきて、それが通説でもあるのですが、このドラマでは途中から準備ができた人からどんどん銃を撃っていくんです。これはまさに最新の知見で、「ここでそれを取り入れてきたか!」と感じて。歴史番組のディレクターなので、どうしても目がそういうところにいってしまいますね(笑)。

◆松本さん演じる家康と、ムロツヨシさん演じる秀吉に感じる印象は?

松本さん演じる家康は、これまで大河ドラマなどで描かれてきた家康像とは違っていて、最初は「この家康、大丈夫かな?」と不安もあったのですが、瀬名(有村架純)や信長(岡田准一)の死などを通し、成長していく姿がとてもすてきだなと思っています。また、ムロさんが演じる秀吉というのは、僕の中の秀吉ともイメージがぴったりで。特に、切り替えの早さの表現なんかは、実際の秀吉もまさにこういう感じだったんじゃないかなと思っています。

『歴史探偵』松本潤©NHK

◆河井さんから見た、将軍・家康の人物像は?

正直、よく天下を取れたな、と(笑)。三河一向一揆、三方ヶ原の戦い、伊賀越えと家康の3大危機と呼ばれる戦いがありますが、僕としては関ヶ原の戦いも実は結構ギリギリだったんじゃないかなと思っていて。そんな中、彼が天下を取れたのには、運の良さであったり、寿命に恵まれたことも大きかったのではないかなと考えています。これは松本さんともお話していたのですが、家康が亡くなった75歳というのは今でいう90~100歳ぐらいで。もし秀吉がもっと長生きしていたり、家康が早くに亡くなっていたら、徳川が天下を取ることはなかったんじゃないかなと思います。

◆次作の大河ドラマ『光る君へ』とのコラボにも期待が高まります。

僕自身、『光る君へ』がどのように作られていくのかというのはとても興味があって。というのも、紫式部にまつわる資料というのはかなり少ないんです。先日も、紫式部ゆかりの寺に行ってきたのですが、やっぱり当時を知る手がかりはあまり残っておらず、大河ドラマではどのように物語を埋めていくのかなと。また一緒にやらせていただける機会があれば、僕らとしてはぜひやれたらいいなと思っています。

◆最後に、読者へひと言お願い致します。

有名な歴史家の言葉に“歴史とは現在と過去との絶え間ない対話である”というのがありますが、まさにそれを今僕らがやっているのだなと感じています。新しい史料であったり、専門家の先生が新たな見解を見つけたり、歴史というのは常にアップデートされていきますから。それを専門家の先生方に協力していただきながら、信ぴょう性が高く新しい情報をどんどん皆さんに提示し、歴史の面白さや深さを知っていただけたらいいなと思っています。

●text/片岡聡恵

『歴史探偵』板垣李光人©NHK

番組情報

『歴史探偵』
「家康 VS.秀吉 どうする家康コラボスペシャル(前編・後編)」
NHK総合
2023年8月23日・30日(水)午後10時~10時45分