『ヒプノシスマイク』観音坂独歩役・伊東健人が語る麻天狼の今「最終的にはいちばん怖い、底が知れない麻天狼が戻ってきた」 – ディビジョン別CDリリースインタビュー

特集・インタビュー
2024年09月20日
伊東健人
伊東健人

音楽原作キャラクターラッププロジェクト『ヒプノシスマイク -Divisiion Rap Battle-』(『ヒプマイ』)が、ディビジョン別CDを7か月連続でリリース。イケブクロ・ディビジョン『.Buster Bros!!!』、ヨコハマ・ディビジョン『.MAD TRIGGER CREW』、シブヤ・ディビジョン『.Fling Posse』に続いて、2024年9月18日(水)にはシンジュク・ディビジョン『.麻天狼』が発売となる。

リリースを記念して、TV LIFE webでは麻天狼の3人にインタビュー。今回は、過酷な労働環境で、課長からの嫌がらせを受けながら莫大な業務をこなすサラリーマン・観音坂独歩を演じる伊東健人さんにお話を聞きました。ソロ曲「Andante」は、今までの独歩なら絶対に言わなかったリリックが出てくると熱く語る伊東さん。そんな伊東さんが感じた独歩や麻天狼の変化とは。

忘れてはいけないのは、独歩は働くのが嫌いという訳ではないこと

◆4月に『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle- 10th LIVE ≪LIVE ANIMA≫』が開催されました。さまざまな展開も発表され、大きな盛り上がりを見せましたが、出演してみての感想を振り返っていただければと思います。

初めてのヒプマイアニメ楽曲も披露したライブでしたが、麻天狼のアニメの曲は原作のラップと比べるとノリがいいナンバーが多いんですよ。よりみんなを巻き込みやすい楽曲が多いので、楽しかったですね。

◆ライブでの盛り上がりもさることながら、多岐にわたる展開をみせながら続いてきた『ヒプマイ』。コンテンツが始まったばかりの頃と比べて、作品やキャラクターへの想いは変化していますか?

キャラクターが成長……というか変化していくコンテンツなので、その心境の変化があるたびに、愛着が湧く部分も変わっています。独歩は反発心みたいなものを表に出せなかったのが、最近はちょっと出せるようになりましたよね。上司にもたてつくようになってきました。今回のドラマトラックでもそういう独歩の姿が見られて、「やるじゃん」と思いました。キャラクターの成長がうれしいです。

◆逆に、独歩の「ここは変わっていないな」と感じる部分はありますか?

根っこは変わっていないと思います。たてつくこともありますが、ちょっとうだつが上がらないサラリーマンという立ち位置は変わっていないというか。それは、たぶん彼のアイデンティティが「働くこと」だからだと思うんです。待遇や扱われ方が雑というところに不満はあれども、別に働くのが嫌いという訳ではないんですよね。それは忘れずに演じています。

◆本心は「働きたくない」という訳ではない。

そうなんです。実際、「あー働きたくない」なんて言葉には出すけれど、いざ本当に「働かなくていいよ」と言われたら「どうやって生きていこう?」と不安になる人って、案外多いと思うんです。そういう意味で、独歩は少し昔のジャパニーズビジネスマンを体現しているのかも。時代の変化によって、独歩がクラシックな存在になっていくのもいいなと個人的には思っています。

伊東健人
伊東健人

◆コンテンツの始動から一緒に歩んできた神宮寺寂雷役の速水奨さん、伊弉冉一二三役の木島隆一さんとも付き合いが長くなったと思います。印象はいかがですか?

ここ数年、印象はもうずっと変わらないですね。2人ともいろんなことに付き合ってくれます。先日、奨さんに誕生日プレゼントを買ったんですけど…っていう話は木島さんがしていましたか?

◆木島さんも速水さんもお話されていました(笑)。

じゃあ、改めてになりますが(笑)。その日、たまたま木島さんと仕事で一緒だったんです。それで、「奨さんの誕生日だからプレゼントを買いに行こう」という話になったんですよ。直接はお会いできませんでしたが、事務所にシャンパンを置いて帰りました。なかなか他の事務所様に上がり込むことなんてないですよ(笑)。もちろん事前に「上がっていいですか」という連絡はしましたが、嫌と言わずに受け入れてくださいました。こういうのって、奨さんなら受け入れてくれるだろうという信頼感がないと、できないことだと思うんですよね。

◆確かにそうですね。

僕たちの図式は、木島さんが気づいてくれて、伊東が行動、それをぜんぶ奨さんが受け入れてくれるみたいな感じが多いです(笑)。今回がまさにそうでした。3人の絆、お互いの信頼感みたいなものを改めて感じた1日でしたね。

◆速水さんは2人のパフォーマンスも信頼しているとおっしゃっていました。

そこも信頼していただけて、ありがたい限りです。パフォーマンスで言えば、木島さんの音程のレンジの広さがうらやましいです。以前にリリースされた一二三のソロ曲「パーティーを止めないで」は男性の基本的な音域で言えば、めちゃくちゃ高いんですよ。でも木島さんは難なく歌えるんです。そして、奨さんはしゃべりもラップも説得力が半端ない。芝居に関する技術ももちろんすごい方ですが、もう普通にしゃべれば説得力があるから、それでいろいろなことが成立するんです。あの説得力は、あらゆるエンターテインメントが最終的に行きつくところと言っても過言ではない気がします。

フックで明確に仲間のことを彼なりに表現している

伊東健人
伊東健人

◆さて、この度、約4年ぶりにディビジョン別CDがリリースとなります。まず、ドラマトラックのシナリオについてお聞かせください。今回の独歩は得意先との食事を途中で抜け出して一二三の元へと駆けつけましたね。

なるべくそういう行動は取らないほうがいいんでしょうけど、今までの独歩だったら絶対にできなかった行動ですよね。立派になりました。今回のドラマトラックでは、なぜ独歩と一二三がこうなったのかというところまで、深く切り込んでいましたよね。

◆仄仄が一二三の家族にしたこと、そんな仄仄を「理解したい」という一二三の姿が描かれていました。

以前に、「女性恐怖症じゃなかった一二三と、まだ社会にもまれていないときの独歩はどういう関係だったのか」ということを考えたことがありました。ひょっとしたら今の関係とは逆の位置だったかもしれなくて、今は一二三が独歩を引っ張っている感がありますが、女性恐怖症を仄仄に植え付けられた時に引っ張り上げたのは、独歩だったのかもしれません。何だかそういう過去も垣間見えるようなドラマトラックだったなと感じました。

◆一方で、寂雷先生もまた違った表情を見せた気がします。

寂雷先生は博愛主義者なのか何なのか、個人的にまだよく分からないところがあって。今回のドラマトラックとソロ曲で一段と分からなくなりました。一体、どういう視点で平和を見ているんでしょう。時々、寂雷先生は自分がトップに立って先導することで世界平和を目指しているのかもと思う瞬間もあります。「自分がトップに立てば世界が平和になる」という考え方って、果ては独裁者になってしまう可能性もあって。先生は、そういう危うさを持っている気がします。

そういう意味では、今回のドラマトラックを通じて僕は一二三のほうが平和主義者・博愛主義者に感じました。もう愛だけを見つめて突っ走るというか。いくら何でもそんなことできるわけないじゃんということを真っすぐに「できるよ」と言って、やってしまうんです。

◆究極のお人好しと言いますか。

今回のドラマトラックでも独歩が「いくらなんでもさ……」みたいな感じでツッコんでいましたよね。楽曲も今回は完全に「愛」でした。一二三も印象がまたひとつ変わりましたね。ここにきてこれだけ印象が変化した麻天狼は、今後どうなっていくんでしょうね。タイプの違う3人がどういうふうに歩んでいくのか気になります。

◆独歩のソロ曲「Andante」は、そんなドラマトラックの物語を経ての楽曲になっている気がします。

そうですね。今回のドラマ後の最新の気持ちを表現していると思います。問題がいくつか解決して彼なりに成長した部分があってからの曲なので、追い込まれていないんですよね。それが今までの独歩のソロ曲と大きく違う点かと思います。朝日とか光を感じているというか、下ではなくて上を見ているというか。そういう気持ちを表している楽曲です。

ジャンル的には、ガチガチに韻を踏んでリズムを固めるというよりも、ポエトリーリーディングな曲ですね。アプローチの仕方が過去いちばん難しかったかもしれません。でも、作詞・作曲を担当してくださった小林私さんが『ヒプマイ』のこと、麻天狼のこと、観音坂独歩のことをちゃんと見てくれている人だったので、信頼を持ってレコーディングも進められました。

◆実際のレコーディングはいかがでしたか?

音として苦しく聞こえないようにと意識していました。今回はラップになり過ぎてもダメだし、普通にしゃべり過ぎてもダメで、そこの機微みたいなものがすごく難しかったんです。その塩梅がバチっとハマったとき、言葉がボンと耳のなかに入ってきて、アガるんですよね。でも、それを狙ってやれたら苦労はしない訳で。正直、レコーディングのときと同じものを歌うのは難しいんじゃないかなと思っています。歌っている分には楽しい曲なんですけどね。

伊東健人
伊東健人

◆改めて、楽曲の推しポイントを教えてください。

ポエトリーではない、フックの部分ですね。元々は「チグリジア」くらいのテンションで声も小さく歌っていたのですが、「もっと、もっと前に」という気持ちも入れていくことで、どんどん歌になっていきました。

あとはリリックも好きです。「指定口座に振り込む電気代 日々は綱渡り、歩く平均台」のところは今までの独歩も言ってきたことかもしれませんが、フックはこれまでには絶対になかった、明確に仲間のことを彼なりに表現しているんです。僕は「喜ぼうと鏡の前で笑うふりをした」のは独歩で、「愛情と呼ぶ催眠術に罹ってみた」のは寂雷先生、「対等でいたい」のは一二三なのかなって思いました。そして、「響く雑踏を独歩しなくたって構わない、少しは」というリリックに繋がる。ここでひとりではないんだと、一気に晴れやかになるのが好きですね。

◆まさにこれまでの積み重ね、そして今回のドラマトラックの物語を経てという曲になっている。

そうですね。麻天狼の楽曲なら近いことは言っているのですが、ソロ曲でこれが言えたということが、独歩にとって大きなことだと思っています。

一方で最初と最後の4行で「束にして貴方に」と言っているところは、僕自身は特定の誰かに向けてはいません。強いて言えば、目の前に現れた誰かですかね。例えばレストランに入ったときに料理を運んでくれたウェイターさんとか。それくらいの感覚で歌っていました。ただ、曲の最初と最後は言葉としては同じですが、音の盛り上がり方は違うんです。そういうところも含めて、この曲のぜんぶが好きですね!

◆熱く語っていただきありがとうございました。本曲のライブでのパフォーマンスも楽しみです。楽曲のリリースやライブ、ゲームなどさまざまな展開をしてきた『ヒプマイ』。今後、伊東さんが『ヒプマイ』でやってみたいことはありますか?

今回のドラマトラックもそうですが、最近の『ヒプマイ』は、キャラクターたち各々が抱えている問題が少しずつ解決されてきている気がします。だからこそ、やってみたいこととは少し違うかもですが、ヒプマイのストーリーをこれからも見届けていきたいですね。もちろんエンディングを迎えるのは寂しいことですが、「結末はどうなったんだっけ」で終わってしまう作品もあるかもしれないなかで、ストーリーを結末まで見届けていけるというのは幸せなことでもあると思うんです。なので、『ヒプマイ』に関してはちゃんと最後まで一緒にたどっていきたいなという気持ちが、僕はありますね。あとは、もっと俗っぽい話をするならワールドツアーとかかな。

◆速水さんはドバイに行きたいとおっしゃっていました。

奨さん、もう行ったことあるでしょ(笑)。木島さんは何と言っていましたか?

◆海外でのライブほか、ディビジョン別のライブもやりたいと。

それぞれのディビジョンの現地でやれたら激アツですね。許されるのであれば、歌舞伎町をジャックして、各モニターでライブ配信なんかやったら、盛り上がりそうです。

◆確かに盛り上がりそうです! 本日は熱のこもったお話をありがとうございました。最後に、伊東さんが思う麻天狼の魅力を語っていただければと思います。

そうだなぁ。今までだとスルスル出てきたのですが、ここにきて若干迷ってきてしまいました。でも、今回のドラマを経てということであれば、「戻ってきた」ということでいいのかなと。最終的にはいちばん怖い、底が知れない麻天狼が。以前は「全員消滅」なんて攻撃力の高いリリックをかましていましたが、その片鱗が見えた気がします。最終的に強くて、怖くて、敵に回しちゃいけないのが麻天狼。「やっぱり、あいつらがいちばんつえー! カッコいい」と思ってもらえたら、僕はうれしいかもしれないです。

PROFILE

伊東健人
伊東健人

伊東健人
●いとう・けんと…10月18日生まれ。東京都出身。B型。主な出演作は『魔法使いの約束』ファウスト役、『【推しの子】』ゴロー役、『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』青柳冬弥役など。

●photo/YOSHIHITO_SASAKI text/M.TOKU

リリース情報

『.麻天狼』
『.麻天狼』

『.麻天狼』
2024年9月18日(水)発売
価格:通常盤 2,530円(税込)、ELR Store限定盤 6,000円(税込)

【収録内容】
M1.「威風颯爽」/神宮寺寂雷(CV.速水奨)
作詞:Micro(Def Tech)・Shinji Hirao(MSL.co)、作曲:Micro(Def Tech)・Nagacho、編曲:Nagacho
M2.「始まりのラストソング」/伊弉冉一二三(CV.木島隆一)
作詞・作曲・編曲:The Sopranos(RIMAZI & CITY-ACE)・AK-69
M3.「Andante」/観音坂独歩(CV.伊東健人)
作詞:小林私、作曲:No Buses・小林私、編曲:No Buses
M4. Drama Track「Not For You」

商品購入はこちら:https://hpmi.lnk.to/M2024

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