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『3月のライオン』監督・大友啓史インタビュー 映画と人生を語る番組「この映画が観たい」に出演

『3月のライオン』監督・大友啓史インタビュー 映画と人生を語る番組「この映画が観たい」に出演

 CS映画専門チャンネル「ムービープラス」で放送中の人気オリジナル番組『この映画が観たい』3月放送回は、数々のヒット作を手がける映画監督の大友啓史さんが登場。番組内で自身のオールタイム・ベストを紹介しながら、映画との出会いから青春時代、朝ドラ『ちゅらさん』、大河ドラマ『龍馬伝』などを手がけたNHK時代、そして映画監督として独立するまでを語った大友監督に、新作映画「3月のライオン」(前編:3月18日公開/後編:4月22日公開)について伺いました。

『3月のライオン』

◆漫画「3月のライオン」はかわいらしい絵柄と反してすごく骨太な物語だと思うんですが、原作を読まれた時の感想を教えてください。

仕事うんぬんは別にして、シンプルにすごく感動しました。最初にお話をいただいたのは4巻くらいが出たころで、そのころから既にいい物語だなと思っていて。
漫画とか小説とか、ジャンルは関係ないじゃないですか、すばらしい作品って。
羽海野チカさんの作品は、「ハチクロ」(ハチミツとクローバー)もそうだったけど、やっぱり練りに練られていて、時間をかけて繊細に丁寧に描かれているし。
漫画としての完成度が高いので、実写化するのはなかなか手ごわいと思いましたね。

◆主人公の桐山零=神木隆之介さんを筆頭に、絶妙すぎるキャスティングが大きな話題となりました。監督的には快心のキャスティングといった感じでしょうか。

準備期間中はいろいろ試行錯誤しながら進めましたが、結局、生身のキャスティングにしていくということは、ああ言われる、こう言われるというのはもう折り込み済みなんですよね。何をどうしようが言われる人からは言われてしまうので。

俳優というのは独自の力、キャラクターを手繰り寄せていく力があるんです。力のある俳優たちは感情からちゃんと埋めていってくれるしね。
そういう俳優たちを集めてこの原作に立ち向かいたいと思っていたので、似てる似てないというよりも、とにかくこの作品を作るために力になってくれる、しっかりぞれぞれの役割を演じてくれる俳優たちを集めることができたかなという感じですね。

◆神木さんについてはいかがですか?

神木くんはプロですからね。そこは零くんと一緒で。零くんは中学生でプロの棋士になったわけです。それでいうと、神木くんも小さいころからプロの俳優だったわけで。
僕なんて何していいか分からなくて部活やってたくらいの歳に、彼は既にプロとしてやっていたんですね。そういう人間の意識っていうのは、同じ体験をしていなきゃ分からない。
だから俳優・神木隆之介っていうのもあるけれど、そういう生き方をしてきた神木くんが桐山零を演じる上で、僕らが分からない部分を神木隆之介が埋めていくということもあるかもしれない。そういう期待もした上でのキャスティングなんです。
似てる似てないっていうだけの基準ではないキャスティングをしているつもりなので、やっぱり最高に良かったかな。

これはいろんなところで言ってるんだけど、「るろうに剣心」をやった後に、彼は“フィクションの申し子”だなって思ったんです。小さいころから演じることで成長してきた子だから。演じることで、他者の人生を追体験していく中で、何かを覚えてきた子っていうか。
俳優ってみんなそうですからね。スキーができなかった人がスキーヤーの役をやることで覚えていったり。他者の人生を演じることで、1つひとつ蓄えていく仕事でもあるから。
それを幼いころからやっているわけです。物心つく前から。ある意味、俳優としての英才教育とも言える。
だから、彼にしかできない役であり、もう“男の子”から“男”になりつつあるから、このくらいの歳の子の役をやるのは最後のタイミングかなと思って。
もう二度とこのくらいの歳の役ができないような、いわばこの年齢設定での神木隆之介の代表作にしてやろう、そのくらいの勢いと思いでやっていましたね。

◆お話をうかがっていて、俳優陣への信頼を感じたのですが、大友監督の著書「クリエイティブ喧嘩術」の中で、小道具を用意する際に具体的にこれというのではなく、このシーンに合うものを、という「お題」を出してスタッフにゆだねたというエピソードが印象に残っています。

僕の場合NHK時代もそうでしたが、自分自身、いまフリーになった身だから尚一層、適当なことをやったり、センスが合わなかったりしたら次の仕事はないっていう感覚なんですね。だから、プロでやっている人たちは他の人たちもみんな、きっと、ちゃんと仕事してくれるはずだって無条件で信頼しています。信頼から始める以外にないんですよね。
仕事をお願いするということは、任せるっていうことが前提。でも、任せた後は逆に本当にやってくれるんだろうな?ってジリジリと猜疑心の塊になっていく(笑)。愛情が強い分、どうやら猜疑心も強いんですね(笑)。
でもお陰様で、出てきたものを見て大丈夫だったってほっとするとか、もしくは、俺が思っていた以上にすごいじゃん!っていうことの方が多く、スタッフには何度も助けられています。

◆大友監督の予想を超えたものが出てくることも?

そう。どちらかというと、僕としては僕が思っていることをやってくれる人よりは、やっぱり予想を裏切ってくれる人が好きなんです。あんまりこっちで予想を立てちゃうとつまんなくなっていくから。敢えて、予想を立てないというのが僕なりの仕事の仕方なんです。
何が出てくるか分かんないよねっていうところで、ちょっぴり当日までワクワクできるわけですよ。

◆その信頼はどこから生まれてくるんですか?

それはね、僕の仕事なんて信頼しないと進まないからですよ。全部疑ってチェックしてたら、やることが多すぎて死んじゃうから(笑)。

◆(笑)。それできっちり成果を上げるスタッフさんもやっぱりプロフェッショナルですよね。

本当にそうですね。感謝してます。

◆「るろうに」や「ミュージアム」で、アクションの大友監督というイメージを持った方もいると思うんですが、今回の「3月のライオン」は、静かながらも心の中には熱いものが渦巻いている物語で、大友監督のドラマ『ハゲタカ』『白洲次郎』に近いのではと感じました。

アクションもドラマも、僕の中では基本的に違いはないんです。ただ、もともとは僕はドラマをやっていた人間だから、「3月のライオン」のほうが無条件で経験値は高い。それだけのことですね。でも、やっぱり人間の感情の動きって面白いじゃないですか。
俳優の芝居っていうのも、そこをどう撮るか、どう刺激していくかっていうのが演出だと思うし。物語も含めて、それをどう生かすかっていうところに向かっていくべきものなので、久しぶりにこういう題材をやって、またシンプルなドラマを作りたくなってきましたよね。

◆なるほど。「るろうに」も「ミュージアム」もド迫力のアクションもありますが、濃密なドラマも描かれていますもんね。

「ミュージアム」もいろんなテイストが含まれているけど、最終的に軸になっているのは家族のドラマですからね。サスペンスとかミステリーとかホラーとかを好きな人からすると、ちょっと物足りない部分もあるかもしれない。でも、もっとグロくやることも伏線の回収に固執することもできるけど、そこに僕の主眼はないんです。
「秘密 THE TOP SECRET」にしてもそうなんだけど、謎解きをやってるつもりもないんです。基本的には人間のドラマを撮っているつもりで。ある人物に感情移入してみてもらいたい。

だから、ジャンルが違ってみえたり、物語の背景は違ったりするけど、意識としてはそんなに変わってはいないんですね。

ただ、アクションを撮っているときはやっぱり楽しいんです(笑)。僕も発散できるから。「うひゃー!」とか「いけー!」とか言ったりね。アクションは大好きだし、また撮りたい。でも「3月のライオン」は、小さな目の動きとかに集中して撮っていて、モニターをジーっと見ているので、体もこわばってくる。実を言うと、自分の中で一番疲れ切った作品なんですよね(笑)。

現場に入るとスタッフはみんな準備ができてるんです。「るろうに」とかに比べると楽だから。だって将棋だからね(笑)。対局の席に着いちゃったら動きはないし。

メイクにしても「るろうに」だったら、血が出たり髪が乱れたり汗をつけたりとか、ワンカット毎に大変なことになってたわけですよ。ところが今回はそういうのがないから、現場に入ったら僕がひとりでモニターにかじりついてて…。
みんなは「お昼何にする?」って(笑)。

◆監督もまさかの孤独な戦い!(笑)。それでは最後に本作の見どころをお願いします。

俳優たちが真摯に、でも楽しんで演じてくれているので、その成り切りぶりも含めて、楽しんでほしいですね。
あと、本当に一番言いたいのは、原作がどうだからっていう間違い探しはやめて!(笑)。
つまり、先入観なしに見てほしいんです。
原作を知っている人からしたら、ダイジェストに見えちゃうのは仕方ないんです。でも映画単体として見たら絶対にそうはなっていないですから。特に後編は。
もちろん原作は原作ですばらしいけど、映画は映画として真っ白な気持ちで見ていただけるとありがたいですね。

あとは、それぞれの人物たちの感情を追いながら、四季のうつろいとか食べ物とか、季節の変わり目とかを味わってほしい。全編ロケにこだわったのは、2020年になるとあの辺りも変わるかなということで、変わる前に撮っておきたいなっていう気持ちもあったんです。セットをやめて、ほとんどロケにして。下手をすると撮影させていただいた川本家だってなくなっちゃうかもしれないもんね。

◆あの家、実在するんですか!?

そうそう。ほんっとに探して探して、必死で探し当てて。あそこで撮影するって決めたけど、普通だったら絶対選ばないんですよ。古い日本家屋の作りですから、狭くてね、カメラポジションとか何にもないから(笑)。

◆下町の普通の家なわけですもんね(笑)。

そのロケーションの魅力っていうのも楽しみ尽くしてほしいですね。三月町を実在する町として作っているし、将棋の駒の音1つ1つまでスタッフがこだわっているので、ぜひそのディテールまで楽しんでいただきたいです。

 

■番組情報

「この映画が観たい#42 ~大友啓史のオールタイム・ベスト~」
自身の人生に影響を与えた映画について語る、ムービープラスの人気番組。今回、大友が挙げたオールタイム・ベストは、「アラビアのロレンス」「暗殺の森」「時計じかけのオレンジ」「こわれゆく女」「インターステラー」の5作品。

CS映画専門チャンネル・ムービープラス
3月6日(月)23:00~23:30ほか

番組サイト(http://www.movieplus.jp/guide/mybest/

ムービープラス公式サイト(http://www.movieplus.jp/

 

■PROFILE

大友啓史●おおとも・けいし…1966年生まれ。岩手県盛岡市出身。
1990年NHK入局、秋田放送局を経て、1997年から2年間L.A.に留学、ハリウッドにて脚本や映像演出に関わることを学ぶ。
帰国後、連続テレビ小説『ちゅらさん』シリーズ、『深く潜れ』『ハゲタカ』『白洲次郎』、大河ドラマ『龍馬伝』等の演出、映画『ハゲタカ』(09年東宝)監督を務める。
2011年4月NHK退局、株式会社大友啓史事務所を設立。
2012年8月「るろうに剣心」、2013年3月「プラチナデータ」を公開。
2014年夏、「るろうに剣心 京都大火編/伝説の最期編」2作連続公開、14年度の実写邦画No.1ヒットを記録。日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞、毎日映画コンクールTSUATAYAファン賞、日本アカデミー賞話題賞など、国内外の賞を受賞。
2016年、「秘密 THE TOP SECRET」「ミュージアム」を公開。
2017年、「3月のライオン」前編(3月18日)、後編(4月22日)が公開予定。

公式サイト:http://keishiotomo.com/

 

■作品情報

映画「3月のライオン」
公開日:前編3月18日/後編4月22日

監督:大友啓史

<キャスト>
神木隆之介、有村架純、倉科カナ、染谷将太、清原果耶
佐々木蔵之介、加瀬亮
前田吟、高橋一生、岩松了、斉木しげる、中村倫也、尾上寛之、奥野瑛太、甲本雅裕、新津ちせ、板谷由夏
伊藤英明/豊川悦司

原作:羽海野チカ「3月のライオン」(白泉社刊・ヤングアニマル連載)
脚本:岩下悠子、渡部亮平、大友啓史
音楽:菅野祐悟
前編主題歌:ぼくのりりっくのぼうよみ「Be Noble」(コネクトーン)
後編主題歌:藤原さくら「春の歌」(スピードスターレコーズ)

制作:映画「3月のライオン」製作委員会
制作プロダクション:アスミック・エース、ROBOT
配給:東宝=アスミック・エース

公式サイト:http://3lion-movie.com/

©2017 映画「3月のライオン」製作委員会

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