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「大島優子さんの中にドラマを感じていた」『ロマンス』タナダユキ監督インタビュー

「大島優子さんの中にドラマを感じていた」『ロマンス』タナダユキ監督インタビュー

タナダユキ監督の7年ぶりのオリジナル脚本作品で、大島優子のAKB48卒業後の初主演作となった映画『ロマンス』のBlu-ray&DVDが2月10日に発売決定。これを記念して、タナダ監督に撮影の裏話や作品への想いを伺いました。

画面を通して見る大島さんの中に、勝手にドラマを感じていた

──『ロマンス』は7年ぶりのオリジナル脚本作品となりますが、この映画を撮ることになったきっかけを教えてください

大島優子さん主演で何か企画を立てませんか、ということでプロデューサーからお話をいただいて、それから進んでいった感じですね。

──脚本もタナダ監督で、というお話だったんですか?

それは自由でしたね。何か企画しましょうというようなお話でした。

──脚本がある作品もたくさん撮られていますが、オリジナル脚本はどんなところが違いますか?

オリジナルは、自分で書く場合には、ちょっと気が楽な面もあるんです。必要なら現場ですぐ直せるので。ただ、一人で書く場合は、脚本家と組んでやるわけではないので、「本当にこれでいいのか」という不安はつきまといます。

──タナダ監督は小説も書かれていますが、映画の脚本との違いはありますか?

たとえば小説だと東京ドームを満席にすることもできますが、映像だと難しいです(笑)。小説なら書けるっていう楽しさはあります。

──映像化の苦労も分かっている分、逆にそういうところを小説で書いたりも?

ちょっとあるかもしれないです。どの映画もそうですけど、ワンカット撮るだけでも絶対に経済というものがのしかかってくるんです。小説の場合は、自分と紙と編集者がいれば成り立つので、もっと経済の負担みたいなものに関して気楽にできますね。

──ご自身が書いた小説を映画化しませんかと言われたら…?

出来るのかな?と考えてしまうかもしれません(笑)。逆に、映画化を前提に書いてくださいって言われたら、小さくなってしまうかもしれないです。自分が書いたものを撮ろうとすると、いくらくらいかかるのか、なんとなくわかってしまうので。

──本作のキャスティングについてお伺いします。まず主人公・鉢子を演じた大島優子さん。本作がAKB48卒業後、初主演作となりました。

うれしかったですね。AKB48のころから“優子推し”だったので。テレビなどで拝見していて、大島さんは私より一回り以上年下なんですけど、やっぱりトップアイドルグループのセンターを務めたような人の苦悩って絶対あるだろうなと思っていて。画面を通して見る大島さんの中に、勝手にドラマを感じていたんです。苦労がにじみ出ているとかではなく、苦労を全く見せないところに、陰の努力がこの人には絶対あるはずっていう、こちらの意欲をかき立てるドラマが大島優子という人の中にあった。ですから、一緒にお仕事ができると決まったときはうれしかったです。
ただ、最初に大島さんで何か企画をというお話が来たときは、本当に実現するの?って(笑)。AKB48を卒業してすぐの作品だったので、ほかにもたくさんオファーがあったと思いますので、うちのチームがやれる保証なんてどこにもないですし。話をくれたプロデューサーの佐藤さんに、しばらく疑いのまなざしを向けていました(笑)。

──どんなことがあっても、お客さんに笑顔で接するという部分で、アイドルと本作で大島さんが演じたアテンダントという職業が重なって見える部分があったのですが、脚本段階で意識はされましたか?

大島優子がこの年齢であるっていうのは意識しました。それは母親との関係に象徴されていたり、彼氏との関係だったり。もうちょっと若ければあんな彼氏すぐ切れるんでしょうけど(笑)、何か惰性で付き合っちゃってるみたいなことも、25歳を過ぎるとあり得るよなとか。
お母さんとの関係も、憎み切れない何かがある。若いころだと突っぱねることもできるのに、自分が年を重ねるに従って、経験はなくても子供を育てるっていう苦労が何となく実感できてしまう年齢ですよね。憎み切れないつらさというか、かといってじゃあ許せるほど心が広くなれるわけでもないみたいなものは、この年齢の大島さんでやれたからこそ生まれたものかなと思っています。

大倉さんはもう“おっさん”をやれる年齢だと思ってお願いしました(笑)

──鉢子を振り回す怪しい映画プロデューサー・桜庭を大倉孝二さんが演じました。

もう10何年も前から舞台でよく拝見していて、機会があれば一度お仕事したいなってずっと思っていたんです。役柄の年齢設定はちょっと上になりますけど、私とほぼ同世代なのでもう“おっさん”をやれる年齢だと思ってお願いしました(笑)。

──当て書きかというくらい桜庭役がぴったりでしたね。鉢子と桜庭のかけ合いは見どころの一つですが、あの絶妙な間は細かく演出されたんですか?

いえ、まず2人で自由にやってもらいました。2人の自然な間のとり方とかだけで、もう鉢子と桜庭がそこにいるという感じでしたね。最初の本読みの段階からそうだったので、本読みが5分か10分くらいで終わっちゃったんです。これ以上やると私の現場での楽しみがなくなると思って「もう大丈夫です」って(笑)。基本的には自由にやっていただきましたね。

──2人のシーンを見て、タナダ監督の『百万円と苦虫女』で蒼井優さん演じる鈴子の家族が見せる、名人の餅つきのようなテンポのよいかけ合いを思い出しました。

『百万円と苦虫女』ではああいうシーンにしたかったので、人物それぞれのカットを撮って、もっとテンポが出るように編集で工夫をしたんです。今回の鉢子と桜庭については、2人を撮るというシーンも多かったので、間のとり方っていうのは役者さんにゆだねているところがあって。ですから、もうちょっと間をどうしてほしいとかお願いした記憶はないですね。言ったかもしれませんが記憶にない(笑)。

──そのお話を聞くと、まさにキャスティングの妙ということですね。桜庭役=大倉さんという配役に引けをとらない、鉢子の同僚・久保ちゃん役=野嵜好美さんというのはすぐに決まりましたか? 本作のもうひとつの奇跡だと思っているんですが…。

演技で久保ちゃんの感じをやるとすごくわざとらしかったり、作った感じが出てくるなあと思っていて、誰がいるだろうって思った時に野嵜さんを思い出したんです。以前『週刊 真木よう子』というドラマでお仕事をしたことがあって、野嵜さんがいる!と思って。久保ちゃんは野嵜さんじゃないとできない役だったなと思います。

(編集部註:タナダ監督が手掛けた『週刊 真木よう子』第9話「蝶々のままで」で、野嵜は全身整形をして真木よう子になる整形前を演じている)

──映画のタイトル『ロマンス』は、鉢子が働く「ロマンスカー」からですか?

もともと“ロマンス”という言葉の響きが好きで。小説でも「ロマンスドール」っていうのを書いているくらい好きなんです。
“ロマンス”って、現在進行形の関係のことではなく、恋愛だったりなんだったりの「過去」の関係を思い返して「あれってロマンスだったな」って思う言葉のような気がして。
鉢子と桜庭の1日の出会いと別れを描いてはいるんだけど、この人たちが何年か後にあの1日を思い出したときに「何か悪くない1日だったな」っていうふうに思ってくれるといいなと思って、このタイトルになりました。

──そのきっかけとなる「ロマンスカー」って独特な存在ですよね。新宿から行楽地である箱根へ、というのが不思議な感じがします。

面白いですよね、ロマンスカー。アテンダントだけでいえば、新幹線だったりほかにもいろいろあるんですけど、東京駅、上野駅発着になると旅情があるじゃないですか。そうではなくて、新宿駅を拠点としているというところがもっと猥雑な感じがして。でもその猥雑な新宿から1時間半くらいでまったく違うところに行けるという不思議さというか、そういうのは感じました。
箱根にロケハンに行ったり、撮影が終わって新宿に戻った時の不思議な感じというのはありました。ついさっきまで、ほんの数時間前まであそこにいたのに、今はこんなざわざわしたところにいるっていう。

──ロマンスカーの窓からの風景や、箱根での移動のシーンが印象に残ったのですが、意図的なものでしょうか?

そんなに意識はしていなかったですけど、ロマンスカーは、新宿を出発するとだんだん高い建物がなくなっていくんです。現実から非現実になるような、その感じは好きだったので、少し意識はしました。車とか自転車とかの移動はそこまで強い意識というのはなかったですね。でも、箱根の景勝地も描きたかったということはあります。

とにかく気楽に楽しんでほしい

──鉢子と桜庭は、2人でいるけど1人と1人というような不思議な関係性でしたね。

お互いに連絡先とか聞かないだろうなって思ったんですよね、この2人って。昔から自分のことを知っているわけではないし、お互い影響を与えてやろうって思っている関係性でもなく、どっちかというと、相手のことをわりとどうでもいいと思っている(笑)。にもかかわらず、その2人が一緒に旅したことによって、知らない間に何かちょっとだけ影響を受けているというのを描けたらなと思っていました。

──こだわったシーン、苦労したシーンはありますか?

富士山ですね。

──やっぱり!あの曇天の具合がすごくいいと感じたんですが、晴天だったらどうしたんだろう?って思っていました。

何度かチャレンジしてるんです。脚本は、晴天できれいな富士山が見えているというものしか書いてなかったんです。
ロケハンに行ったときもすごく晴れていたので、これはいけると思ってたんですよ。ところが、クランクインした途端すごく天気が悪くなって(笑)。
富士山って、天気がよくて朝は晴れてても、すぐ雲が出てきたりするんですよね。それで撮影の途中でこれはマズイかもしれないと思って、急いで曇りバージョンを書き足して。
富士山の撮影をすることにしていた日もやっぱり曇っていて、曇りバージョンで撮っておこうっていうことにしたんです。でも、脚本は晴れだったので、やっぱり晴れも狙いたくて。スケジュール的に無理をしてどうにか行けるのがギリギリ3回くらいしかなかったんですけど、その3回も全部だめで(笑)。
で、最終日に別のシーンを撮り終わって、1時間くらい仮眠をとって午前3時出発で富士山の裾野に行ったら、富士山がやっと出ていたんです!このシーンでクランクアップできたのでよかったですけど、あれで曇ってたら「ドヨ~ン…」としてクランクアップしてたなって(笑)。

──そんな苦労があったんですね。もしかして晴れのシーンは2人にそっくりの影武者なんじゃないかと思っていました(笑)

ご本人たちなんです(笑)。過酷な撮影の中、何度も行ってようやく撮れたので本当にほっとしました。怪我の功名というか、最初の脚本では晴れバージョンの富士山だけでしたが、曇りバージョンを撮ったので、曇りと晴れを両方使うことができてよかったです。

──すごくいいシーンでしたよね。個人的にはここで晴れないというのがいいなと思いました。

私も撮っていくうちに、天気もぜんぜんよくならないけど、これはこういう話なのかもしれないと思うようになって。ずっと天気が悪いので、1日の話としてはつながっていますし(笑)。天候のことなんかは映画の大変さでもあるんですけど、面白さでもあるかなと。作品には合っていたと思います。

──本作は全体を通して劇的な出来事があるわけではないけれど、なぜか涙腺をつつかれている感じがします。タナダ監督がどんな魔法をかけているのか、映画的なテクニックのようなものがあれば教えていただきたいのですが…。

テクニックはないです。ただ、どの映画を作ってもそうですけど、あざとい映画にはしたくないなとは思っています。今作は特に、映画館でポップコーンを食べながら見られるような映画を撮りたかったんです。前作や前々作(『四十九日のレシピ』『ふがいない僕は空を見た』)が女性の不妊というのも扱っていたりと、ちょっと重いテーマも入っていたので、今回はもう少しだけ肩の力を抜いて気楽に楽しめる、でもちょっとした何かが心に残るみたいなものができないだろうかと思ったんです。重くなり過ぎないさじ加減みたいなものは、スタッフ・キャストと共に作っていったものなのかなと思います。

──それでは、最後に本作の見どころをお願いします。

まず、大島さんの制服姿が魅力的です。それと、やっぱり2人の掛け合いですね。
これまで私は、問題がきれいに解決する映画は撮ってきていません。今回もそうです。そんなに簡単に都合よく問題なんて解決しないですから。でも、物の見方が少し変化するだけでちょっとだけ楽になれることってあるんじゃないかと思うんです。そういうことが伝わればいいなと思ってはいますけど、でも、とにかく本当に気楽に楽しんでもらえるとうれしいです。

 

PROFILE

タナダユキ…1975年生まれ。福岡県出身。
2001年、デビュー作『モル』でPFFアワードグランプリを受賞。
蜷川実花監督の『さくらん』(2007年)では、脚本を担当。オリジナル脚本の『百万円と苦虫女』(2008年)で第49回日本映画監督協会新人賞を受賞。
映画のみならず、テレビドラマ、CM、ミュージックビデオなども手掛け、小説家としての顔も持つ。


作品情報

『ロマンス』Blu-ray&DVD
2016年2月10日(水)リリース

「ロマンス 特別限定版」(初回生産限定)
Blu-ray 6,800円+税
DVD 5,800円+税

■映像特典(本編ディスク)
特報、劇場予告

■ボーナスディスク
・メイキング
・公開初日舞台挨拶
・ロマンスカーイベント
・ジャパンプレミア上映会舞台挨拶
・予告(アナザーバージョン)
■デジパック ブック型ケース付き
■封入特典 フォトカードセット8枚(予定)

「ロマンス 通常版」
DVD 3,800円+税

■映像特典
特報、劇場予告

「ロマンス」レンタル

■映像特典
特報、劇場予告

【キャスト】
大島優子 大倉孝二 野嵜好美 窪田正孝 西牟田恵

【スタッフ】
脚本・監督:タナダユキ
音楽:周防義和 Jirafa
エンディングテーマ:三浦透子「Romance-サヨナラだけがロマンス-」
製作プロダクション:東北新社
製作:東映ビデオ

2015年8月全国劇場公開作品

公式サイト(http://movie-romance.com/

「第18回上海国際映画祭」パノラマ部門 オフィシャル・セレクション正式出品
「第9回JAPAN CUTS ジャパン・カッツ!」正式出品
「ウーディネ・ファーイースト映画祭2016」正式出品

販売元:東映株式会社
発売元:東映ビデオ株式会社

(C)2015 東映ビデオ

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