前川泰之「熱護(船越英一郎)の生きざまを見ると、自分が大切にしてきたことは曲げちゃいけないんだなと」『テイオーの長い休日』

ドラマ
2023年07月07日
『テイオーの長い休日』©東海テレビ

船越英一郎が主演を務めるドラマ『テイオーの長い休日』(東海テレビ/フジテレビ系 毎週土曜 午後11時40分~深夜0時35分)より、前川泰之のインタビューが到着した。

本作は、昨今のドラマ業界のリアルを赤裸々に描きながら、悩みを抱えた登場人物たちを“元2サスの帝王”熱護大五郎(船越英一郎)が救っていくヒューマンコメディ。

そのせりふは他業種で働く人にも刺さるようで、付き人の萩原匠(今井悠貴)の事務所移籍問題を取り扱った第5話では「熱護語録の連発!」「『仕事は大きさで選ぶな。人で選べ』と言った(匠の)お母さんの言葉が深い!」といった声が上がるなど、働く人たちにとって土曜の夜のひそかな楽しみになっているようだ。

これまでドラマ内で描かれたのは、仕事欲しさにプロデューサーの言いなりになっていた新人脚本家や、自分の思うような仕事が与えられずくすぶっていたバラエティ番組のディレクター、何のために夢に向かって頑張っているのか分からなくなった少女など、目的があるからこそ悩んでいた若者たち。

そんな彼らに自分の信念を曲げない熱護が「仕事がなくても貫く信念」を見せ、それぞれに気付きを与える、胸アツな展開になっている。

7月8日(土)放送の第6話では、「出世」だけを目的にしたキャラクター・寿彰が熱護と対峙。前川泰之演じる大手事務所・トレランスの専務である寿は、社長になることだけを目的に汚いやり方も是として突き進む男だ。

SNSでは「最終話で寿がギッタギタにやっつけられるのを期待して待ってるw」といったコメントまで書き込まれるようになったが、早くも第6話でラスボス降臨!? 作品に緊張感を与える悪役として、“視聴者に嫌われること”に成功した前川に、作品や役どころについて聞いた。

前川泰之 インタビュー

『テイオーの長い休日』©東海テレビ

◆熱護やゆかり(戸田菜穂)、そして2人が所属するオリプロにも黒い影を落とし続ける寿を、どのような気持ちで演じているのでしょうか。

寿という人間は、いろいろと策を練る人で、相手の人によってあれこれ態度を変えたりも平気でできちゃう人なので、いろいろな表情とか側面を見せるのがいいんじゃないかな、と思って演じました。攻めるところは攻めたり、クールなところはクールだったり、おちゃらけるところはおちゃらけたり…いろいろな側面を見せておけると、寿の根本にあるものが際立ってくるかなぁ、と。ただ、そうやって寿という役を演じる中で、“人間って、こういうことなのかな”と思ったことがあるんです。それは、人が社会生活とか、生きていく中で、他の人に見せているところというのは、実はほんの一部分でしかないんじゃないか、ということなんです。

◆人間は、すべてを人前に見せて暮らしているわけではない…と?

人間って、人の前で見せている自分というのは、ほんとに何割でしかないと思うんです。だからこそ、寿という悪役を演じるにあたっては、見えていないところを意識しながら、外に出す部分を強調していくことで、あとで “ああ、そういうことか!” と見る人にも分かってもらえるかなと思いながらやっております(笑)。

◆いきなり、“人間の深さ” に入ってきますね。

いやいや、そんなことないです、ほんとに(笑)。今回も船越さんとか、大ベテランの先輩と一緒にやらせていただいていて、考えている深さとか、言葉の端々に感じられる深さとかが、もう段違いで…。 “うわぁ~~、やっぱ、ちげーなー!” などと思いながら、日々勉強させていただきました。そういう経験をさせていただけたのはものすごくありがたいですね。

『テイオーの長い休日』©東海テレビ

◆「熱護」の生き方から学んだことも、たくさんあったとか。

そうなんですよ! 熱護さんって、俳優として強烈な生き方をしているじゃないですか。その端々を見るだけでも「あ、確かにそうだよね」と気づかせてもらうというか、自分に対する戒めを含めて、そうだなと思ったことがあります。

2つあるんですが、まず1つは「手を抜くな」という戒め。熱護さんの言葉のそこかしこに出てくると思うんですが、仕事や役を作るといったことに対して、絶対に手を抜いちゃいけない。それは、他者からの評価に応えるためにそうするのではなくて、結局は自分との闘いみたいなことになってくる。僕らも現場に臨むにあたって、どれだけ準備をしていけるか…もちろん、現場のその場でもいろいろと勝負をしなきゃいけないんだけど、そこに至る前に、どれだけ自分で準備をしていけるかが大きな分かれ目になっていくと思うんですね。手を抜こうと思えば、「あ、これはこれくらいでいいか、これくらいで行けるんじゃないか」ということもありがちですけど、やっぱり、もう “これ以上ない!” っていうところくらいまで準備をして現場に臨まなきゃいけないよなぁ、と。これは、熱護さんの姿勢を見ていて、すごく思いました。

役者って、ほんとに自分の性格や性質と闘うようなところがある職業だと思っています。僕自身は結構のんびり屋さんでマイペースなところがあるんですが、この “手を抜かない” というところは大事だと思い知らされました。

◆もう1つは?

時代の流れに関することです。僕自身、実はここ数年、生き方とか仕事に対しての向き合い方が難しくなってる気がしていまして。選択肢が増えたり、情報発信の仕方が増えたり…役者として、お芝居していくことだけを突き詰めていければいいんだけど、そうではない…お芝居をする以外の部分がたくさん出てきたな、と感じています。そういう中で、「あぁ、俺こんな活動もやった方がいいのかな」とか思え始めたりして…。僕は割と考えがちょいちょいブレることがあるんで、熱護さんを見ていると、「あぁ、こうやってブレずにやっていける人は、すげーうらやましいなぁ!」と(笑)。しかも、最終的には自分の考えや価値観、自分がやりたいかやりたくないか、というところで判断しないとダメだよね、ということにも気づかせてもらいました。

『テイオーの長い休日』©東海テレビ

◆熱護さん、しぶといくらいにブレないですからね(笑)。

僕、何年か前に、ようやく役者としてちゃんと見てもらえるようになったと思った時がありまして…。その時に、「よっしゃ! これで俺も安泰か!」と思ったら、そこからババっとバラエティにも出るようになった時に、内心「俺、こっちを望んだわけじゃないんだけどなぁ…」なんて思っていた時期がありました(笑)。それはそれで、知名度とか認知度とか、お芝居以外の部分で皆さんに知っていただくためでもあるんですけど(笑)。

僕は2005年か2006年くらいに役者としてデビューしたんですが、当時はTwitterもfacebookもまだ日本のどこにもない時代でしたからね。俳優業をやっている人がSNSで情報発信するようになったのは、もう本当に最近…それも最近、急激に誰もがやるのが当たり前のようになっている。今の時代、メディアなり媒体がすごく増えて、そういう中で役者の仕事をして生き残っていくのも大変だし、そういう不安を抱えた中で、気持ちが転びそうになる。そんな時に、この熱護大五郎という人の生きざまを見ると、自分がいままで大切にしてきたことを曲げちゃいけないんだということに気づかせてもらえた気がします。まぁ、熱護さんみたいには、なかなかできるものではないですけど(笑)。

◆「俳優がバラエティに出ること」については、熱護さんが第1話で真っ先に全否定していました。

僕はフジテレビの『スカッとジャパン』とか、めっちゃお世話になりましたからね(笑)。ま、時代や世代によっていろんな手段や方法はありますし、僕は否定も肯定もしませんし、良い悪いではないと思っています。

『テイオーの長い休日』©東海テレビ

◆最後に、視聴者の皆さんに「寿彰」の視点から、見どころやメッセージなどを。

5話から6話にかけては、このドラマシリーズの中でも“第2章”として位置づけられている、大きな転換点となっています。今まで1話や2話、3話、4話をご覧いただいている中で、視聴者の皆さんが謎に思っていたところが、いくつか解き明かされる回でもあります。登場人物のそれぞれが自分なりの正義とか哲学のようなものを持って生きていて、それがゆえに互いに衝突したりすることも起きている。そこで人は、どうやってその衝突に決着をつけていくのか…。そういうところを見ていただけると、業界の中だけのことでなく、もっと普遍的な何かに気が付いていただけるかもしれません。

あと、寿が熱護大五郎さんと真正面から向き合って話をするシーンが出てくるんですけど、そこでのせりふが僕はすごく心に刺さってしまいまして…。見ていただければすぐに分かっていただけると思いますが、とてもいいシーンになっています。

実は、僕は今年50歳になるのですが。そんな人生の一つの区切りを迎えるタイミングで、こんな感じ入る言葉がたくさんある作品に参加させていただけたのは、もう、ほんとにいいご縁だったなと思っています。

第6話(7月8日(土)放送)あらすじ

匠(今井悠貴)が去り、所属が熱護(船越英一郎)だけになったオリプロ。そんな中、ゆかり(戸田菜穂)は匠と人気俳優・伊集院(白石隼也)のW主演映画に、熱護を売り込んでいた。匠のバーター仕事など断るだろう熱護を何とか説得しようとするゆかりだったが、なぜか熱護は二つ返事で出演を了承。ゆかりの“絶対に降ろさせない”戦いが始まる!
翌日から寿(前川泰之)の陰湿な嫌がらせが始まる。いつ熱護が爆発するかとヒヤヒヤするゆかりだったが、なぜかおとなしい熱護で…。むしろ、同じトレランスの伊集院が寿への不満を爆発させてしまうことに。そんな中、寿が突然更迭されて…。「寿という男の謎は解けた」全ての行動にはちゃんと理由がある。登場人物の見え方がちょっとだけ変わる伏線回収ミステリー! 果たして、ゆかりと寿の因縁に決着はつくのか!?

番組情報

『テイオーの長い休日』
東海テレビ/フジテレビ系
毎週土曜 午後11時40分~深夜0時35分
※『FNS27時間テレビ』のため7月22日(土)は休止

出演:船越英一郎、戸田菜穂、今井悠貴、宮下結衣、石原颯也、平野絢規/白石隼也、久保田磨希、前川泰之、木場勝己
企画:市野直親(東海テレビ)
脚本:入江信吾、川﨑いづみ、諸橋隼人
音楽:仲西匡(カレント)
主題歌:「素顔」上野大樹(cutting edge)
OPテーマ:「Bumpy」Beverly(avex trax)
ナレーション:大和田伸也
演出:吉川鮎太(ホリプロ)、白川士
企画:市野直親(東海テレビ)
プロデューサー:松本圭右(東海テレビ)、井上竜太(ホリプロ)
制作協力:キャンター
制作:東海テレビ、ホリプロ

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