生田斗真、16mmフィルムでの撮影に「“ああ、映画撮ってるな”と」映画「渇水」ティーチイン

映画
2023年05月25日
「渇水」左から)髙橋正弥監督、門脇麦、生田斗真、白石和彌(企画プロデュース)

映画「渇水」(6月2日(金)全国公開)の公開直前ティーチインイベントが5月24日(水)に開催され、生田斗真、門脇麦、髙橋正弥監督、企画プロデュースを務めた白石和彌が登壇した。

原作は1990年、第70回文學界新人賞受賞、第103回芥川賞候補となり注目を浴びた河林満による「渇水」。“生の哀しみ”を鮮烈に描いた名篇が、多くの重厚な作品を世に贈り出し続ける映画監督・白石和彌の初プロデュースにより刊行から30年の時を経て映画化。監督は、根岸吉太郎、高橋伴明、相米慎二、市川準、森田芳光、阪本順治、宮藤官九郎らそうそうたる監督作品で助監督としてキャリアを重ねた、髙橋正弥が担当する。

主演を務めるのは生田斗真。水道料金を滞納する家庭の水を日々止めて回る業務に就く水道局員の主人公・岩切俊作が心の渇きにもがきながらも、“生の希望”を取り戻していくという難しい役どころを体現した。さらに門脇麦、磯村勇斗、尾野真千子らが脇を固め、人と人の関係が希薄になってしまった現代社会に真の絆とは何かを問いかけ、見る者を生への希望で照らし出す。

「渇水」

このたび、公開直前ティーチインイベントが開催され、生田、門脇、髙橋、白石が登壇。まず、生田が「本日はお忙しい中、映画『渇水』をご覧いただき本当にありがとうございます。撮影中はずっと雨が降っており、先日の完成披露試写会も大雨だったので、僕はこの映画のキャンペーンは雨男キャラでいこうと心に決めていたのですが、今日ものすごく晴れてしまいまして…キャラが崩壊しました。どう宣伝していいのか分からないので皆さんの力をお借りしたいと思います(笑)。よろしくお願いいたします」とあいさつ。

門脇も「こんなにたくさんの方に今日来ていただけてとてもうれしいです。この映画を撮ったのが2年前なんですけれども、いよいよ公開間近ということで、私自身もとてもうれしく思います。今日はよろしくお願いいたします」と続いた。

さっそく、本作出演の経緯を問われた生田は「この映画はかれこれ10年以上前にスタートして、日本映画界にとんでもなく面白い脚本があるんだと噂になっていたようです。その脚本が時間をかけて自分の元に回ってきました。もちろん中身の素晴らしさもあるんですけれども、たくさんの人たちの映画に対する思いや作品に対する愛情がふんだんに詰め込まれた、ただならぬオーラを放っている脚本だったことを覚えています。僕はもうこの作品に参加しないときっと後悔するだろうなと思って、即座に参加させてもらうことを決めました」と語る。

門脇も「まず台本を読ませていただいて“なんていい本なんだろう”と思いました。そして今回プロデューサーとして参加されている白石さんとは何度かご一緒していて、“門脇さんで”と言ってくださっているというのを聞いて、断る理由はありませんでした」と。

「渇水」

そんな話を受け、白石は「僕も3、4年前ぐらいに脚本を読む機会があったんですけど、やっぱり素晴らしくて。髙橋さんとお会いしたことはなかったのですが、会いたいですとお話をして、一緒に飲んだんです。そのときの髙橋さんに人惚れして、僕が入ることで一歩前に進むのであれば何でもいいからやらせてくださいと伝えて参加することになりました」と明かした。

髙橋は「社会的なテーマも含んだ原作だったので、これをぜひ映画にして皆さんにお届けしたいというところから始まりました。白石監督と生田さんが映画の制作に参加してくれるということが決まり、その次に門脇さんの快諾も頂いて、“これはもういい絶対映画になるんだな”と自分の中で力になって、それで制作を始めさせていただきました」と振り返った。

本作で主人公・岩切を演じるに当たり心掛けていたことを問われると、生田は「岩切は自分のせいで大切な家族と離れて暮らすことになってしまうんですよね。そのことをきっかけに、彼の人生がどこかストップして思考も止まってしまったような気がしています。今自分がどこにいるのか、何をしているのか、何のために働いてるのか、どうして人の家の水を止めなきゃいけないのか。いろんな感情にふたをして、痛みを感じないように。そういう男の悲しい目というか、独特のオーラというものがにじみ出てくるといいなと思いながら演じました」と。

一方、門脇は「私はシーン数がそんなに多いわけではなくてポイントポイントで出てくるし、難しい役だったのでとにかく普通に、地に足がついている実在感があるようにということと、私とはすごく遠い存在の登場人物に感じたので、そう見えないようにと考えていました。あとは、彼女にも理由があるわけで絶対にただの悪い人ではないので、0.1秒だけでもいいから娘たちを見守る瞳に悲しみのようなものがにじめばいいなと思いながら演じました」と語った。

「渇水」

16mmフィルムを使った撮影も特色の一つとなっている本作。生田は「1ロール8分しか撮影できないので、リミットが来るとフィルムチェンジの時間があるんですよ。その時間は “ああ、映画撮ってるな” という感じがしますし、待っている間に撮影部とか照明部とかとコミュニケーションを取れるのが僕はたまらなく好きで。今、フィルム映画を映画館で見る機会が少なくなってきているとも思うので、多くの方々にフィルムでしか刻めない味や香りみたいなものを体験してほしいなと思います」と伝えた。

門脇も「自分がずっと見てきて大好きだった60、70年代の俳優さんや監督もこうやって撮っていてフィルムチェンジという時間を経験していたんだと思うとすごくうれしくて。あとはスタッフさんも皆さんちょっとテンションが上がるので、こちらもうれしくなります」、白石監督は「光に映る水や太陽の光、滝、公園のシーンなどはやっぱりフィルムで撮ってよかったなと思いますし、粒子が荒れていてざらついていたりとか、よく見ると粒が見えたりするんですけど、そういった性質が今回の映画の中では非常に有効的だったと思います」と明かした。

最後に、門脇は「今年口コミでじわじわ広がる映画絶対ナンバーワンですよね。派手な内容じゃないのでインタビューのときも言葉選びが難しくて、何と答えたらいいんだろうなというのが一番難しかった作品でした。でもだからこそ、皆さんお1人お1人の口コミとかで本当の良さが伝わっていく映画だと思うので、これからぜひよろしくお願いいたします」と。

生田も「この映画には、何となく心をえぐられるようなシーンもたくさんあると思うんですけれども、見る前と見た後では、きっとどこか世界が少しだけ変わって見えるのかなと思っております。フィルム映画の素晴らしさもそうですし、長年かけてようやく完成したこの映画をたくさんの方に見ていただきたいと思っております」とメッセージを送った。

「渇水」

作品情報

「渇水」
2023年6月2日(金)全国公開

出演:生田斗真
門脇麦、磯村勇斗
山﨑七海、柚穂/宮藤官九郎/宮世琉弥、吉澤健、池田成志
篠原篤、柴田理恵、森下能幸、田中要次、大鶴義丹
尾野真千子

原作:河林満「渇水」(角川文庫刊)
監督:髙橋正弥
脚本:及川章太郎
音楽:向井秀徳
企画プロデュース:白石和彌
主題歌:向井秀徳「渇水」

製作:「渇水」製作委員会
製作プロダクション:レスパスビジョン
制作協力:レスパスフィルム
配給:KADOKAWA

©「渇水」製作委員会