『スペースバグ』中尾浩之監督インタビュー「毎週楽しみに夢中になって見てほしい」

特集・インタビュー
2018年06月28日

小さな虫たちの冒険を描く3DCGアニメ『スペースバグ』がTOKYO MXにて7月8日(日)よりスタート。本作は、生物実験のために宇宙に連れてこられた虫たちが、人間が放棄してしまった宇宙ステーションを脱出し地球を目指して数々の困難に立ち向かい旅するノンストップアドベンチャーだ。このオリジナルアニメを作り上げた中尾浩之監督にインタビュー。子供も大人も楽しめるこの夏必見のアニメの見どころ、制作秘話などを語ってもらった。

中尾浩之監督インタビュー◆中尾監督はこれまで『タイムスクープハンター』シリーズや『卒業バカメンタリー』といったフェイクドキュメンタリーなどの実写作品を作られてきました。今回の『スペースバグ』は3DCGアニメになります。本作を作ることになったいきさつを教えてください。

僕の中ではアニメとか実写とか区別はあまり考えていなくて、ストーリーを伝えるのにどの表現が一番合っているのかというのを一番に考えています。今回は虫がキャラクターで宇宙を旅する話をどう表現するかと考えたら、実写ではちょっと難しいかなと思っていて、アニメでしかも今回はCGを使える、特に3DCGだと自分らしい表現ができると思いました。『タイムスクープハンター』などはドキュメンタリータッチで作っていますけど、あれはドキュメンタリーの手法を借りて表現していましたが、もともと僕は(アルフレッド・)ヒッチコック監督だとか黒澤明監督とか(スティーブン・)スピルバーグ監督のように綿密にカット割りして、しっかり作っていくというのが好きなんです。今回は原点回帰というか、いつもの僕のスタイルと変わらない感じで取り組めました。

◆アニメを制作するにあたり苦労したところはありましたか?

3DCGだと撮影方法というか演出の考え方が実写と同じ考え方なんですよね。セットデザインを考えて、カメラをどこに置いて、レンズをどういったものを使うのかとか、ライティングをどうするか、カメラワークもズームインなのかトラックインなのかなど実写と同じように指示できるからいいなと思ったんです。映像文法が分かっていればできることだと思うんですよね。今世界的にもブラッド・バード監督は「Mr.インクレディブル」を作った後に「ミッション:インポッシブル/ゴーストプロトコル」を作って、また今度アニメ作品を作るとか、そのあたりはボーダーレスにいろんなことをやっているのかなと思います。もともとの映像文法が分かっていれば、CGでも問題ない。逆に実写の映像文法が分かってないとCGの映像は作れないんじゃないかなと思いますね。

◆主人公のキャラクターはどのようにして決まったのでしょうか?

中尾浩之監督インタビュー最初に「宇宙」「虫」という2つがキーワード的に決まりました。そこからストーリーを作り始めたのですが、いろいろと調べていったら宇宙で生物実験として昔からいろいろな生き物が宇宙に連れていかれていた。もし人間がいなくなって虫だけが宇宙に取り残されたらどうなるんだろうと思ったところが物語の出発点になりました。

◆ネムリユスリカといった虫たちが登場しますが、監督は虫に詳しかったんですか?

いやそんなに詳しくないですね。小学生のころにクワガタとかカブトムシも好きでしたけど…『スペースバグ』にはクワガタもカブトムシも出ていないんですよ(笑)。『タイムスクープハンター』でも名もなき人たちを主人公に扱っていたんですけど、王道のものより日が当たらないものをドラマの中心に置きたくなるんですよね。今回もネムリユスリカとか、マイナーな虫が中心になっているんですけど、これまであまり主人公になりえなかったキャラクターを中心に据えたりするのが好きなんですよね。

◆マイナーな虫たちの特徴も描かれているので勉強になりますね。

小さくてもすごい能力が備わっていたり、珍しい虫がどんどん出てくるので楽しみにしてください。こういう話にしたいなと思って調べていくと、こんな不思議な虫がいるんだというのが分かって。それをストーリーに組み込んでいくという形でストーリーが出来上がっていきますね。今後もストーリーが進むにつれていろんなキャラクターが出てきます。

◆ミッジたちが旅する先にはさまざまな問題が起こっていて、それは現実社会を反映しているような、子供だけではなく大人も見ても楽しめる話ですね。

入り口は子供用というかファミリー向けのアニメなんですけど、大人が見ても耐えうるようなアニメを作ろうって思っています。あまり子供だけにとか考えていません。僕らが昔見ていたドラマとかアニメってかなり大人の内容の話だったと思うんです。でもそのころの僕らは内容が全部分かっていなくても背伸びをして見ていた。ストーリーラインをしっかり作って、その中にこびずに普遍的なテーマを入れていくというのをいつも心がけています。

◆そのバランスはとても難しそうです。

当たり前のように存在している身の回りの出来事が俯瞰で見るとおかしいだろうなっていうことがあったりします。それをストーリーに組み込みました。宇宙に連れてこられた虫や生き物たちの視点で見た時、それまで気づかなかったことが見えたりします。そんなテーマをバランスよく構成するのは確かに難しいです。あまり深刻になりすぎてもいけない。このテーマを入れたいとか風刺したいとかいう発想でストーリーを書いているわけではなくて、面白いストーリーを書いていく過程で、結果的に今の社会を風刺していたり重なるところが生まれていくるというのが理想の脚本です。

◆アニメでは宇宙のシーンの壮大さもとても印象的です。

中尾浩之監督インタビュー宇宙という空間を使うには3DCGはもってこいかもしれません。アクションでは空間の奥行きをふんだんに使えますし、カメラワークにおいて僕はわりと縦移動が好きで使うんですが、3DCGだとダイナミックに表現できます。

◆『スペースバグ』は日本語版のほか、英語吹き替え版も同時に作られています。今後『スペースバグ』はどう展開していくのでしょうか?

今回で終わりにしたくない気持ちです。彼らの冒険物語をずっと続けていきたいなと思っています。理想としてはこれから世界中のみんなに愛着を持ってもらえてどんどん続きが作れたらいいですね。シーズン2とか冒険はまだまだ続いていってほしいです。昔のドラマとかアニメって毎週放送を楽しみにしていましたよね。『スペースバグ』も毎週放送を楽しみにしてもらうような、あのころのワクワクするようなテレビ体験みたいなものを味わってほしいと思っています。ストーリーや演出はもちろん、音楽やキャラクターなど細部までこだわって作っているし、純粋に面白いアニメを見てほしいという気持ちのスタッフが集まって作っているオリジナル作品ですので、毎週楽しみに夢中になって見てほしいです。

 

■PROFILE

中尾浩之

●なかお・ひろゆき…1968年2月8日生まれ。東京都出身。映画監督、脚本家、演出家。主な作品に『タイムスクープハンター』シリーズ、『卒業バカメンタリー』など。

 

■番組情報

『スペースバグ』オリジナルTVアニメーション
『スペースバグ』
TOKYO MX
7月8日スタート
毎週(日)前10・30~11・00

<配信情報>
「dアニメストア」7月8日(日)より配信開始
「dTV」7月8日(日)より配信開始
「FOD」7月8日(日)より配信開始
「あにてれ」7月8日(日)より配信開始
「J:COMオンデマンド」「ビデオパス」7月9日(月)より配信開始
「バンダイチャンネル」7月9日(月)より配信開始
「U-NEXT」7月9日(月)正午より配信開始
「アニメ放題」7月9日(月)正午より配信開始
※配信開始日は変更となる可能性があります。

スペシャルサイト:http://www.spacebug-special.com/
Twitter:https://twitter.com/spacebug_jp

<staff&cast>
監督・脚本:中尾浩之
監督:YOON Yoo-Byung
キャラクターデザイン:グリヒル

声:小川夏実、丸山智行、佐野康之、藤原貴弘、落合弘治、田中英樹、ブリドカット セーラ 恵美、堀越富三郎

<STORY>
遥か未来。人類は太陽系の外側まで宇宙を開拓。だがコンピュータが暴走し、人間は宇宙ステーションを捨てて地球へ帰還する。取り残されたミッジ、ハカセ、マルボは天敵ゲロッパたちに追われながらも地球に帰ろうと決心する。

©W.BABA&TMS
 
●photo/中村圭吾