緒方恵美「多くの人を楽しませたいし、力になりたい。そうした《エールロック》の精神を、いつも、いつでも」

特集・インタビュー
2021年06月03日

◆「再生(仮)」というタイトルもインパクトがありますね。

これは編集者さんが提案してくれたものでした。意味は2つあり、1つは2010年に「再生-rebuild-」というタイトルの楽曲を発表したこと。この曲は音楽活動を再開するにあたって制作したものであり、これからは皆さんを応援する《エールロック》だけを作り続けていこうと心に決めた、ターニングポイントにもなった曲でもあるんです。また、私はこれまでの人生でずっとトライ&エラーを繰り返してきました。何かに挑戦し、失敗して、壊れてしまったものを違う形でもう一度積み上げて、また失敗して。そうしたリビルド(再生)を何度も重ねてきたわけです。ただ、タイトルで「再生」と言い切ってしまうと、何だか完成した人のようにも感じられてしまう気がして。それで、まだまだ途中であるという意味を込めて“(仮)”を付けました。とは言えこのタイトルにしたおかげで、いろんな方から、「結局、正式タイトルは何なんですか?」と聞かれたり、「注文する時に伝えづらい」と言われたりしてしまい、そこは申し訳なかったなと思っています(笑)。

◆今《エールロック》という言葉が出ましたが、この本も“読むエールロック”という印象を受けました。

ありがとうございます。歌に限らず、自分の全ての仕事に対して《エールロック》の精神を込めていきたいと思っています。誰かの背中を押すといった偉そうなものではないのですが、お客さんを楽しませたいし、力になれるものを作りたい。その思いは常に持ち続けていますね。

◆そうした考えはいつごろからお持ちなのでしょう?

この仕事をするようになって、早いうちからあったような気がします。でも子供のころは当然ながら、自分本位。他人のことなんて全然、でした(笑)。多くの方がそうだと思うのですが、まずは自分が楽しいからとか、モテたいからといったいろんな理由がそれぞれにあって、夢に向かって突き進んでいきますよね。それも自分はやれる!という根拠のない自信を持って。まさに自分はその典型でした(笑)。でも必ずその後これではダメだという洗礼を受け、そこからなぜできないんだろう?と考える長い旅が始まる。やがて人間はもともと1人では生きられないし、いろんな方と手を取り合って助け合って生きていかなきゃいけないということに気づく。自分が生きるために、人のためになれる自分になることが大事だと。それはどの仕事でも同じで…例えば農家の方や、それを運んでくれる方がいるから、私たちは食べ物を手にすることができる。支えてもらう感謝を持ちつつ、自分も誰かのために生きる。私の場合はエンターテイナーですので、“お客様のために”…もちろん、だからといってお客様におもねるのではなく、自分が提供できる中で、お客様の力になれるものを届けたい。それがいつしか、私の中の軸になっていったんです。

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