松本まりか、悩める“レス妻”のリアルを体現「これまでに見たことのないドラマになっていると思います」

特集・インタビュー
2021年10月02日

松本まりかさんが主演する連ドラ『それでも愛を誓いますか?』が、テレビ朝日とABCテレビでスタートする(テレビ朝日=10月2日スタート、毎週(土)深夜2時30分/ABCテレビ=10月3日スタート、毎週(日)午後1125分)。原作は、電子コミックサイト「めちゃコミック」で1500万ダウンロードを突破した萩原ケイクさんによる同名漫画。結婚8年目、夫との仲は円満だが、“女性として求められない”。セックスレスで子供がいない30代の主人公・純須純の葛藤を、松本さんがリアルに体現している。純と同年代である松本さんは本作についてどう感じたのか、たっぷりお伺いしました。

◆本作へのオファーはいつごろだったのでしょうか?

最初にお話を頂いたのは、一年以上前だったのですが、その時はタイミングが合わず、今の時期になりました。でも今思えば、撮影が一年前だったら、きっとこういう演技にはならなかったと思います。激動の一年を経て、今、その経験を全て出して、この作品、この役と向き合えている。そういう意味では、延期した1年は私にとって必要な時間だったのではないかと思います。

◆満を持しての撮影現場はいかがですか?

すっごく楽しいです! 初日から監督や共演者の皆さんと深くコミュニケーションを取れています。例えば、一度リハーサルをしてみて、“このせりふ、ちょっと違和感があるな”とか、“今の芝居の流れだと、こういうふうにしゃべってみたいんだけどな…”とか思った時に、皆さんと話し合う時間が楽しくて。1人で台本を読んでいただけでは気づけなかった、本当の答えのようなものにたどり着ける。それが宝物を発見したみたいで、うれしくなるんです。皆さんと「答えはこれだね!」って喜びも分かち合えて、そういう時間が多く持てるぜいたくな現場でした。

◆純という役柄については、どう捉えていらっしゃいますか?

彼女には結婚8年目になる夫・武頼(池内博之)がいるんです。2人はとても愛し合っていて、周りからも幸せな夫婦だと思われている。でも、実は武頼とは5年間もセックスレスで。2人の間に欠けているのはそこだけ。でも、その唯一足りないもののせいで、純は夫から女性としてもう見てもらえないのでは…という悲しさを感じ始めていて。子供がいないことにも不安を抱えているのですが、それは彼女が心から子供を望んでいるからなのか、それとも世間からの見られ方を気にしているからなのか、自分自身でもどんどん分からなくなってきている。そうした感情の揺らぎや、もやもやとした思いは、多くの方に共感していただけるのではないかと思います。

◆萩原ケイクさんによる原作コミックも、「とてもリアルだ」という同年代の女性からの共感の声が多いそうで。

ドラマ内のせりふや演出も、リアリティーが追求されています。一般的にドラマのセオリーと言われるような、デフォルメが全て排除されているんです。言ってしまえば、“ドラマの武器”を全部削ぎ落としていって、本物の感情や嘘のないやりとりだけが残っている。だから、きっとこれまでに見たことのないドラマになっていると思います。

◆台本を最後まで拝読しましたが、登場人物全員がフラットに描かれているのが印象的でした。

そこも、この作品の特徴だと思います。悪人を作らないんです。純も、武頼という愛する夫がいながら、働きに出た会社で出会う年下の同僚・真山篤郎(藤原季節)君に少し気持ちを持っていかれてしまう瞬間がある。それに対して断罪も肯定もせず、“人間なんだから、ほんの一瞬ぐらいは心が動くことってあるよね”と優しく表現してくれていて。それがすごく救いにもなっているんです。一番大切なのは、人のいろんな感情に対して明確な善悪の区別を付けるのではなく、その場その場で生まれた気持ちを優しく、温かく、丁寧に見守ってあげることなんじゃないかと。だから私も、“これはいい”“これはダメと”決めつけるようなドラマにならないように意識して演じています。

◆武頼と共に、今お話に出た真山、同じく同僚で純の良き相談相手になっていく三好果歩(松岡依都美)もキーパーソンとなっています。

真山君はかわいいんです。いつもマスクをしていて、顔をなかなか見せてくれないんですけど(笑)。武頼とは対照的でコミュケーションが苦手っぽいところもあるんですけど、自分の考えをしっかりと持っていて、それを隠すことなく真っすぐに純に伝えてくる。彼の正直すぎるほどの姿勢にはハッとさせられることが多いです。人を見た目だけで判断してはいけないなと思わせられます。三好さんは、本っっっ当にすてきな女性です! 一緒にいると、三好さんという“エスカレーター”に乗せてもらえると言いますか。それによって純はすごく気持ちが楽になるし、素直になれるんです。もちろん、武頼だっていつも純のことを思ってくれているし、それは純も分かっている。純は主にこの3人と関わっていくわけですが、相手によって自分の心持ちが変わるし、得るものも違う。そこも面白いところだなと思います。

◆理想としては、純は三好さんといる時のまま武頼とも向き合えればいいんですけどね…。

本当にそうなんです。三好さんといる時が一番自分に素直になっていますからね。でも、それができないのが、男女や夫婦の関係なのかなとも思います。とはいえ、本当に苦しいですよね。誰よりも愛している人と一番歯車が合わないって。

◆男性にもこの作品は刺さりそうですね。

ぜひ、男性にもご覧になっていただきたいです。第1話の冒頭のシーンで、武頼が夜遅く仕事から帰ってきた時、起きて待っていた純がソファーを1人分空けて座り直すんです。でも、それを武頼にスルーされてしまう。台本でそのシーンを読んだ時、“武頼、気づいてあげて!”って(笑)。“隣に座ってほしいなぁと思っていた気持ちをスルーされたら結構傷付くよ?”って思ったんです(笑)。

◆なるほど。男には耳が痛いです(苦笑)。

もちろん、彼にしてみれば、わざとではなく、ただ目に入らなかっただけかもしれない。でも、そうだったにせよ、“座ってくれなかった”という事実だけが残ってしまう。全ての恋愛にすごく勉強になるドラマだと思います(笑)。

◆もし武頼が純の行動に気づき、短い時間でも隣に座って他愛もない会話ができていたら、2人がセックスレスだったとしても、欠けた心の思いは満たされるかもしれないですね。

そうなんです。やっぱり愛する人との距離を遠ざけるものって、心のすれ違いの大きさで。逆に言えば、ちょっとした気遣いでも関係は豊かになる。このドラマが描いているのもまさにそこなんです。先ほどもお話ししたように、ドラマっぽいせりふや演出を省いていった結果、何げない会話がとてもドラマチックに感じられる。そこにはリアルさしかないんです。もちろん、劇的なせりふや演出がある恋愛ドラマはすてきですし、私も大好きです。でも現実に戻った時、王子様のような男性なんていないことに誰もが気づかされる。もしかしたら、そこには平凡な日常しかないかもしれない。それでも、目の前にいる人を思いやり、ちゃんと向き合うことで、自分の人生がドラマ以上にドラマチックなものになるかもしれない。そういう可能性を教えてくれるドラマだと思います。

◆日常の半径5メートルの中に喜びも楽しさも悲しさも、人生のいろんなものが詰まっている。それをどう捉え、どう向き合っていくかは自分次第だとこのドラマは教えてくれているようにも感じました。

そう、結局は自分次第なんです。現実と向き合い、うれしいことや苦しいことを経験しながら、その大切さに気づき、“人生って、だから面白いんだよ”と思える。私自身、この作品に出演できていることが本当に幸せで。撮影をしながら“芝居をやっていてよかった”って毎日感じています。とってもすてきな作品ですので、ぜひ多くの方に見ていただきたいです。

PROFILE

松本まりか
●まつもと・まりか…1984912日生まれ。東京都出身。ドラマ『ホリデイラブ』で演じた“あざとかわいい”魔性の妻役が大きな話題に。以降、ドラマ『竜の道 二つの顔の復讐者』『妖怪シェアハウス』『先生を消す方程式。』『教場Ⅱ』『最高のオバハン 中島ハルコ』などに出演し、存在感を発揮している。主演を務めるParaviオリジナルドラマ『東京、愛だの、恋だの』が配信中。

番組情報

『それでも愛を誓いますか?』
テレビ朝日 2021102日スタート 毎週() 深2・30300
ABCテレビ 2021103日スタート 毎週() 後11251155

(STAFF&CAST)
原作:萩原ケイク
脚本:兵藤るり、鈴木史子、川原杏奈
監督:広瀬奈々子 森本晶一 橋本英樹 渡邉裕也
出演:松本まりか ほか

(STORY)
結婚を機に仕事を辞め、専業主婦として生活を送っていた純須純(松本)。結婚8年目で今も仲の良い夫婦だが、セックスレス5年目で子供なし。働きざかりの夫・武頼(池内博之)は真面目で仕事熱心だが、「子供が欲しい」と伝えてもかわすばかりで、口論にすらならない。友人たちの出産の話題には素直に喜べず、だからといって夫婦の悩みを打ち明けることもできない。思い描いていたものとは違う夫婦生活にいら立ちを感じていた純は、鬱々とした生活を変えるために再就職を決意。契約社員として働き始める。

8年ぶりの会社生活に戸惑いつつも、徐々に仕事に慣れていく純。家では武頼とすれ違い、どこか満たされない純は、10歳年下の若手社員・真山(藤原季節)の素直さに癒やされていく。その一方で、武頼の元に同窓会の案内が届く。そこで再会したのは、高校時代の元カノ・沙織(酒井若菜)だった。

思い合っているのに満たされない夫婦がそれぞれに悩み、揺れていく中で、仲が良かったはずの夫婦関係にもやがて変化が訪れる。

photo/田中和子(CAPS) text/倉田モトキ hairmake/林由香里 styling/柾木愛乃 衣装協力/FUMIE TANAKADO-LE co ltd.)、RIEKA INOUE GNU、ダイアナ(ダイアナ銀座本店)