井浦新「“あのころ”の気持ちを持ち続けていたい」 娘役・志田彩良とは「心で感じることを大切に演じていった」 映画「かそけきサンカヨウ」

特集・インタビュー
2021年10月22日

井浦新「かそけきサンカヨウ」インタビュー

◆陽は同じ美術部で幼なじみの陸に淡い恋心を抱いていますが、2人のみずみずしくももどかしい関係性から、大人の井浦さんはどんなことを感じましたか?

自分はずっと大人になりたくないと思いながら育って…と言いながらも大人の世界、大人同士のやりとりの中で揉まれていますが(笑)、今でも気持ちのどこかでは、自分にとっては陽と陸のような「あのころ」とあまり変わっていない部分がすごくあるなって感じています。それでも変わった部分はあって、それを成長だとするなら、いろんな経験を積み重ねてできるようになったこともあるし、新しい考え方ができるようにもなった。だから2人をうらやむ気持ちはありながら、“この感覚は大人になってもずっと持っていないといけないよな” “持っていられたらどんなにすてきだろう”と思いながら、2人を見ていました。

井浦新「かそけきサンカヨウ」インタビュー

◆作中に「一番古い記憶」という言葉が出てきますが、井浦さんの俳優になってからの一番古い思い出はなんですか?

デビュー作の映画「ワンダフルライフ」のオーディションです。是枝裕和監督ほか10人くらいが座っていて、どの方が是枝監督かも分かりませんでした。僕は俳優志望だったわけでもないのに、是枝監督が会いたいと言っているから会おうと言われて、何の気なしに行ってみたらオーディションで。僕に質問した方は皆さん助監督で、是枝監督は何も言わず、会話している僕をずっと見ていたらしいんです。あとから「ああ、一番端っこで静かにしていた人、いた!」って思って(笑)。それが僕の始まりの場でした。それこそ「ワンダフルライフ」の中には、僕が自分の一番古い記憶を語るシーンもあるので、そこはこの作品と重なって面白いなと思いましたね。

PROFILE

井浦新「かそけきサンカヨウ」インタビュー

井浦新
●いうら・あらた…1974年9月15日生まれ、東京都出身。99年、是枝裕和監督の「ワンダフルライフ」で俳優デビュー、初主演も果たす。主な出演映画は「11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち」、「朝が来る」など。今年は出演したドラマ『あのときキスしておけば』が話題に。

作品情報

井浦新「かそけきサンカヨウ」インタビュー
©2020 映画「かそけきサンカヨウ」製作委員会

「かそけきサンカヨウ」
全国公開中

(STAFF&CAST)
原作:窪美澄『水やりはいつも深夜だけど』(角川文庫刊)所収「かそけきサンカヨウ」
監督:今泉力哉
出演:志田彩良/井浦新 鈴鹿央士、中井友望、鎌田らい樹、遠藤雄斗、石川恋、鈴木咲、古屋隆太、芹澤興人、海沼未羽、鷺坂陽菜、和宥、辻凪子、佐藤凛月、菊池亜希子/梅沢昌代、西田尚美/石田ひかり ほか
主題歌:崎山蒼志「幽けき」(Sony Music Labels)
脚本:澤井香織、今泉力哉
音楽:ゲイリー芦屋
配給:イオンエンターテイメント

(STORY)
幼いころに母・左千代(石田ひかり)が家を出て以来、父と2人で暮らしてきた高校生の陽(志田彩良)。ある日、父・直(井浦新)から結婚したい女性がいることを告げられる。ほどなくして再婚相手の美子(菊池亜希子)と、その娘で4歳のひなたと4人家族の新しい暮らしが始まる。その暮らしに戸惑いを感じる陽は、その、気持ちを幼なじみの陸(鈴鹿央士)に打ち明ける。陽は実の母への想いを募らせ、ある日、陸と一緒に画家である佐千代の個展に行くことにするが…。

 

公式サイト:https://kasokeki-movie.com

公式Twitter:@kasokeki_movie

©2020 映画「かそけきサンカヨウ」製作委員会

 

photo/映美 text/佐久間裕子

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