杉野希妃「しばらく赤やピンクのリップがつけられなくなってしまって…」 映画「愛のまなざしを」公開記念カウントダウン特集 第3弾

特集・インタビュー
2021年11月11日

杉野希妃「愛のまなざしを」インタビュー

◆綾子を演じる上で、意識したことはありますか?

監督はリアリティーを全く求めていなくて、そもそも「日常会話的なせりふはすごく嫌いだ」とおっしゃっていて。近年の日本映画で流行っているような、会話の間もいらないと。現場に入る前、監督は俳優に自由に自然な芝居をさせるのではなく、振りを付けるように俳優を動かすというお話を聞いて。リハでも実際に監督がそうされていたので、監督の話を全部聞いて、自分の中の固定観念や自分が考える綾子像のようなものは手放したほうがいいと思いました。そのほうが監督の世界観が生きるのではないかと。だから現場では、監督のお話だけを聞いてましたね。

◆監督の演出は、コンテンポラリーダンスの振付みたいなイメージなのかなと思いました。

そうですね、現場では自分がアクターというより、パフォーマーだという感覚がすごくありました。監督は自分の振付でどんな化学反応が生まれるか、その場で見て調整しているんだと思います。監督は変わった動きが好きなんですよ。“これはしないよね、でも映画ならありえるかもしれない”っていうギリギリのラインを狙って動きをつけていくんです。例えば、役者に自由にやらせたらソファを飛び越える動きなんて、絶対にしないわけですよ(笑)。一歩間違えたらギャグになりかねない。そのギリギリのラインを狙っていらっしゃるのかなと思いました(笑)。

◆仲村トオルさん演じる貴志と綾子の関係は共依存ですよね。2人の関係性についても皆さんで話し合われたのでしょうか。

「もう離れたほうが…」って思いますよね(笑)。2人の関係についても、珠実さんといろいろ話しました。一見すると綾子はファム・ファタールなんじゃないかと思われる方がいますが、珠実さんは「それは絶対に嫌だ」とおっしゃっていて。映画でファム・ファタールを見たい方も多いと思います。でも今回の物語において「単純に男を惑わす、記号的なキャラクターに思われたくない」と。私が病名で人を縛りつけたくないと思ったのと同じように、珠実さんもファム・ファタールという呼称で人を決めつけたくない気持ちがあったんだと思うんです。だからファム・ファタールの話ではなく、共依存の話だと強くおっしゃっていましたね。

  1. 1
  2. 2
  3. 3