松下洸平インタビュー「大輝を本当にこの世界のどこかにいる人間として感じてほしかったんです」『最愛』

特集・インタビュー
2021年12月02日

『最愛』松下洸平インタビュー

殺人事件の重要参考人となった女性実業家・真田梨央(吉高由里子)と、彼女を追う刑事で梨央の最愛の人でもある宮崎大輝(松下洸平)、そして梨央を支える弁護士・加瀬賢一郎(井浦新)の3人を中心に描かれるサスペンスラブストーリー『最愛』(TBS系 毎週(金)後10・00~)。第7話(11月26日放送)で生活安全課に異動になった大輝は、次第に梨央との距離も縮まっていく。そんな警察という立場と梨央とのはざまで揺れる大輝を演じている松下洸平さんに、役柄や第8話の見どころについて語ってもらいました。

 

◆ここまで大輝を演じてきての心境を教えてください。

ネットニュースなどを拝見していると、自分が想像していた以上に、大輝だけでなく『最愛』というドラマ自体を愛していらっしゃる方が多いと分かってうれしいです。第1話から大輝を演じてきて、役柄というのは人と関わっていくことで広がっていくんだなと、身に染みて感じています。

◆どのように役が広がったのでしょうか?

梨央や捜査一課にいる桑田(佐久間由衣)、山尾さん(津田健次郎)など、いろいろな方と一緒に芝居をすることで、台本を読んでいるだけでは分からない、自分だけでは想像できない大輝の性格や細かい設定が見えてきたんです。あらためて“芝居は1人ではできないんだな”“誰かと一緒に作っていくもの”だと、痛感しましたね。

『最愛』松下洸平インタビュー

◆以前、オファーの時に塚原あゆ子監督、新井順子プロデューサーから「今までにない松下洸平が見たい」と言われたとおっしゃっていましたが、実際に演じられてみていかがですか?

クランクインの前に、塚原さんと新井プロデューサーが「今まで優しくて、柔らかい。ちょっと不器用だけど真っすぐな好青年を演じてきて、わりとそういうイメージが強かったと思うので、それとは違う部分を見せたい」とおっしゃっていて。大輝は、僕が普段言わないような言葉遣いとかもするので、とても楽しく演じています。ただ結局、役に人となりが出ちゃうと思うんですよね。どれだけ頑張って演じたとしても僕がやる以上は、僕らしさがどこかに出てきてしまう。でも僕が無理をしてしまうと、その人間に見えなくなるような気もするので、そこは無理には消さずに。その中で自分がこれまで演じてこなかった部分は、塚原さんたちに引き出していただくっていうやり方で大輝を演じているので、それが皆さんの心に少しでも届いていたのであればうれしいですね。

◆松下さんから見た大輝はどのような人物ですか?

僕が思っている以上に、すごく不器用な人ですね。恋愛に関しては不器用かつ恥ずかしがりやですし、もうちょっと行く時は行かないと、と思うんですけどね(笑)。そういう瞬間モジモジしてしまうところは、かわいらしいなと思います。

『最愛』松下洸平インタビュー

◆演じられてきた中で、一番感情が高ぶったと思うシーンは?

第4話の、生田誠という容疑者が朝宮優であることを大輝が認識した、高速バスを追いかけているシーン。大輝が「生田誠は朝宮優です」と山尾に報告するシーンは、やっぱりきつかったですね。

◆それは大輝と一体化していたから?

そうですね。もうこれ以上は隠しておけない、自分も黙っているわけにはいかないと、本当にいろんな画が浮かんだんです。白川で同じ時間を過ごした当時の優の声や笑った顔が、あの一瞬でフラッシュバックして。その気持ちを抑えて報告しなければならなかったのがすごく辛かった。その後も、刑事の立場として優を東京に移送しなければいけなかったのは、演じながら非常に苦しかったというか。俳優としては、俳優冥利に尽きる素晴らしいシーンを頂けたなと思います。

『最愛』松下洸平インタビュー

◆これまで、走るシーンが何度もあったと思います。その中で印象に残っているシーンはありますか?

やっぱり第1話の駅伝のシーンですね。坂道をくだって、次の仲間にたすきを渡すシーンは、15回くらい走りました。もちろん苦しかったんですけど、その苦しみも全部役作りに生かせるので。その時、走っていないと落ち着かないぐらい走る行為が染みついてしまって、その後の次の現場へ歩いて移動するのがすごく心地悪くなりました(苦笑)。大輝がその後、10年の間で警察官採用試験を受けて、警察学校通って、捜査一課まで上り詰めるまで、相当な苦労があったはずなので、大輝のその苦労をちょっとでも僕自身も味わえたことは、いい経験でした。

『最愛』松下洸平インタビュー

◆第5話でも、大輝へ隠れて電話をする梨央を見つけて追いかけるシーンがありましたね。

あのシーンは、18本くらいのレールでいろんな角度から撮影したので、5~6回は走ったのかな。そのシーンで「勝手に決めんな」っていうせりふがあったんですが、そのせりふ、20回くらい言ったんです。実は僕、次の日にレコーディングがあったんですが、そのおかげだったのか、レコーディングですごく声が出たんですよ。なので、今後もレコーディング前は発声に取り入れようかな、なんて(笑)。

◆宇多田ヒカルさんが歌う主題歌「君に夢中」の歌詞が、大輝の気持ちを代弁しているようにも思うのですが。

今回、主題歌の存在がすごく大きくて。僕らも撮影しながら、「どこで曲がかかるかな」「今のところで絶対イントロかかるよね」ってみんなで想像しながら撮っています。今回の『最愛』と宇多田さんの「君に夢中」は、絶対に1セット。曲が配信されて、僕も車の中でずっと聴いているんですけど、歌詞を見ていると大輝だけでなく、梨央や加瀬、メインで出ている人物、みんなに当てはまるフレーズだなって。あらためて主題歌が宇多田さんで良かったですし、この歌に僕自身も何度も助けられました。いろんな刺激を「君に夢中」がくれているような気がします。

◆どんな時に助けられたのでしょうか?

台本を読んでいる時だったり、移動中などですね。僕、俳優業だけではなく、音楽もやらせてもらっていて、脳みそがうまく切り替えられないことがあるんです。そういう時に「君に夢中に」を聴くだけで、一気に体中が『最愛』モードになるというか、大輝モードになる。めちゃくちゃ浸透しているんだなと実感しますね。

◆高橋文哉さんや佐久間由衣さんが、松下さんのことを笑わせてくれるムードメーカー的存在と言われていたのですが、いつもそういう立ち回りなんでしょうか?

何も考えていなかったです(笑)。笑わしてるんじゃなくて、笑われているんだと思います。僕はそのつもりがないので(笑)。

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◆自然とムードメーカーになっているということですね(笑)。では、クランクイン前と比べて、一番距離が縮まった方はいらっしゃいますか?

(井浦)新さんとは初めましてだったんですが、尊敬する先輩の1人でなので、最初は緊張していたんです。どういう方なのかお話を伺いたかったので、僕のほうから率先して話しかけたんです。今ではことあるごとに連絡をくださったり、Instagramでコメントのやり取りもしていて。とても楽しく遊んでくれるので、新さんは大好きです。

◆この作品は松下さんにとって、どんな作品でしょうか?

僕は、一度『MIU404』ゲスト出演させていただいた時に、塚原さんと新井さんの組を経験させていただいて。この組の素晴らしさと過酷さを知りました。俳優にとってかけがえのない経験をさせてくれるということも感じていたので今回、連続ドラマで3か月間、この組と一緒にできるというのは、自分にとって確実に大きな一歩になると思いましたし、それと同時に “絶対に結果を出さなければいけない”という、これまでの役よりも自分にかけたプレッシャーは大きかったです。それぐらい覚悟して臨まないとできない現場だし、逆にその覚悟を持って芝居をすれば、視聴者の皆さんは必ず楽しんで見てくれるっていう確信もあったんです。なので、オファーを頂いた時はうれしかったのと同時に、その覚悟を持って自分にどこまでできるのか。見ている人に大輝を、本当にこの世界のどこかにいる人間として感じてほしかったんですよね。

『最愛』松下洸平インタビュー

◆大輝を、実在する人物として演じていたんですね。

ドラマの中の世界は、ドラマの中でしか生きていないけれど、どこかにいるような錯覚さえおぼえてしまうっていう、そのリアリティを持ってお届けすることがとても大事だし、それが毎週、「来週は大輝がどうなるんだろう」「あの2人はどうなるんだろう」って思わせる、ドラマを見る上で一番の楽しい部分だと思うんです。自分たちのことのようにドキドキしながら見たり、そのリアリティをどこまで出せるかのチャレンジでした。それこそ、においとかまで伝わったらいいなと。捜査一課の刑事だったので、走り回っていて思っている以上に大輝のいつも着ているコートやスーツは臭いと思うんですよ。その汗臭さまで見ている人に伝わったらいいなって(笑)。

◆ “大ちゃん沼”という言葉がネットで盛り上がりを見せていますが、どんな思いでいらっしゃいますか?

ありがたいですね(照)。どんなかたちであれ、視聴者の皆さんが役に没頭するというのは、俳優にとってうれしいことなので、そういった意味では熱中して見てもらえていることは、単純にうれしいです。

◆覚悟を持って臨まれた中での反響は、喜びもひとしおなのでは。

やらせていただいてうれしかったですし、本当に感謝しかないですね。ただ、すごく難しいのは、宮崎大輝っていう人間を愛してもらえたけれど、じゃあ自分はどうなんだっていうところも出てきて。大輝を演じた僕自身にも何か彼に負けない魅力がなければ、続かないし、だからこそ大輝から学ぶことは多かったと思います。それを僕自身が裏切らないように、でも時にはそのイメージをいい意味で裏切れるように、僕自身を面白がってもらえたらいいですね。

『最愛』松下洸平インタビュー

◆最後に、第8話に向けて見どころを教えてください。

劇中でも言っていますが、捜査一課から外されたことに対してのショックはもちろんありますが、自分でしたことですし、分かってやったことなので、自分で自分のケツを拭いたっていうことで言うと、大輝はそんなに後悔していないと思います。逆に第8話で大輝が第2の人生じゃないですけど、これから先、自分とどう向き合っていくのか、あと梨央とどう向き合っていくのか。生活安全課で働いていますが、それまでのものを捨てた代わりに得たものもあると思うんです。例えば、梨央との人生をゆっくりと考える時間とか。だから、1人の人間として、彼がしっかりと生きていけるか試されるのが、第8話かなと思います。

PROFILE

『最愛』松下洸平インタビュー

松下洸平
●まつした・こうへい…1987年3月6日生まれ。東京都出身。2008年に「洸平」名義でCDデビュー。翌年、ミュージカル『GLORY DAYS』で初舞台を踏み、俳優として活動の幅を広げる。2019年NHK連続テレビ小説『スカーレット』で人気を博し、話題作に多数出演。現在、バラエティ番組『ぐるぐるナインティナイン』(日本テレビ系)にレギュラーで出演中。2021年8月25日には松下洸平としてメジャーデビューし、12月22日にはミニアルバム「あなた」を発売予定。現在、ドラマ『最愛』(TBS系)に出演中。

番組情報

金曜ドラマ『最愛』
TBS系
毎週金曜 後10・00~10・54

『最愛』松下洸平インタビュー

<第8話(12月3日放送)あらすじ>
しおり(田中みな実)の遺体が発見された――。現場の状況から雑居ビルからの転落と考えられたが、昭(酒向芳)殺害事件の参考人となっていたタイミングだったこともあり山尾(津田健次郎)は事件性を疑う。
出社した梨央(吉高由里子)は、秘書の児島(宮下かな子)からしおりと後藤(及川光博)が老人ホームの寄付金不正流用の疑いでもめていたようだと聞かされる。しかし、その後藤とは加瀬(井浦新)も前日から連絡が取れず、行方を掴めずにいた。
しおりが亡くなる前日、彼女と会っていたことで警察から事情聴取を受けることになった梨央。そんな彼女を、捜査本部を外されて所轄の生活安全課に異動になっていた大輝(松下洸平)が訪ねてきた。大輝の母が送ってくれたという故郷の酒を飲む2人の間には穏やかな時間が流れ、とある約束を交わす。
一方、しおりの周辺を捜査していた桑田(佐久間由衣)は、上司の山尾から、事件に関するネタを大輝からうまく聞き出すようはっぱをかけられてしまう。気が進まない中大輝のもとを訪ねる桑田は、かつての相棒に捜査の協力を懇願する。
そんな中、加瀬は梓(薬師丸ひろ子)と今後の策を練っていた。梓から後藤が向かうと思われる場所を聞いた加瀬は、早速梨央と向かうことに…。

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