『最愛』最終回、新井順子Pインタビュー「物語のその先を想像してほしい」

特集・インタビュー
2021年12月17日

『最愛』新井順子プロデューサーインタビュー

いよいよ本日、12月17日(金)に最終回を迎える『最愛』(TBS系 毎週(金)後10・00~10・54)。12月10日放送の第9話で、渡辺昭殺し当日、梓(薬師丸ひろ子)にはアリバイがないことが判明。追い打ちをかけるように、真田ウェルネスの寄付金詐欺疑惑と、しおり(田中みな実)の不審死に関する週刊誌のスクープ記事が出てしまう。梨央(吉高由里子)に何も告げずに梓が会見を開き、警察に出頭するところで終わった。ついに、全ての真実が明らかになる最終回を目前に、プロデューサーの新井順子さんから“ジリキュン”シーンの裏話や、SNSでの考察、そして最終回の見どころを語ってくれました。

『最愛』新井順子プロデューサーインタビュー

◆吉高さん演じる梨央と松下洸平さん演じる大輝の“ジリキュン”シーンが話題になっています。こだわったところはどこでしょうか?

とにかく切ないロミオ&ジュリエット感、立場が2人を引き裂くことは意識しました。大輝を捜査一課から生活安全課に異動させることは最初から決めていたので、第6話まで2人の関係性をいかに切なく、そして禁断感が出るようにしました。そして、第7話で2人が近づき、大輝がプロポーズみたいなことをしましたが、第9話でまた元に戻っちゃうと。

◆吉高さんと松下さんに梨央と大輝の関係性について、切ない以外でお願いしたことは?

第6話の梨央の腕を引き留めて抱き寄せたシーンは、私が大輝を実演しましたね(笑)。そういう細かい動きはお願いしてやってもらいましたね。

『最愛』新井順子プロデューサーインタビュー

◆第7話には、梨央と大輝が見つめ合ってキスしそう…というシーンもありました。

実は、キスしてもらおうと思って、「キスさせて」と脚本家さんにプロットを書いてもらったんですが、読んでみたら何か違うなとなって、キスしない方向に書き換えてもらったんです。でも、ただ見つめ合って終わるのも違うよねとなって、15年前のような雰囲気に戻って笑おうみたいな吹き出す演出に。だけど、15年前よりは2人の関係性は進んでいるかな。当時言えなかった梨央への思いをようやく言えたと思ったら。そしたら、梨央に「今やない」って言われたっていう(笑)。

◆以前のインタビューで、吉高さんと松下さんに「新たな一面を引き出したい」とオファーされたとおっしゃっていましたが、実際に見えてきたお2人の新たな一面はありますか?

吉高さんのサスペンス力というか、役のスイッチが入るのは見ていて面白いですね。そこがやっぱりすごいなと。松下さんは、好青年で文学少年という感じがあったんですけど、そこはかなりイメージが変わったかな。私の中では足が速い人みたいな印象があります。そして、2人のカップル感がいいですよね。2人とも左利きという共通点があったり、実際に仲も良いですし。そこはちゃんと2人で梨央と大輝の空気感を作られているんだなと思います。

『最愛』新井順子プロデューサーインタビュー

◆優を演じている高橋文哉さんも話題となっていますが、起用理由は何だったんでしょうか?

たまたまお会いする機会があって、その時に売れそうなにおいがしたんです(笑)。その後、『夢中さ、君に。』に出演されているのを見て、なかなか珍しい変わった役をやっているなと。「優はかなり難しい役だからどうしよう」となっていた時、演出の塚原(あゆ子)監督に相談したら「芝居はこれからだけど、(優を)やれる気がする」と話して、彼に決めました。どことなく吉高さんと似ていたり、透明感もありますよね。

◆実際に演じられている高橋さんを見て、どんな印象ですか?

現場では何度も演技指導をされて、いろいろと悩まれていたようですが、吉高さんや松下さんの演技を受けて、とても成長しているなと思います。

◆そんな高橋さんの魅力は?

この子のためなら頑張れるっていう梨央の気持ちになれるところ。それから、梨央がぎゅっとしたり頭をポンポンする時、その行動が恋愛っぽくならず、本当に弟だなっていうバランスがいいですね。

『最愛』新井順子プロデューサーインタビュー

◆本作の反響は、新井さんにはどのように届いていますか?

業界内視聴率が良いですね。普段は1、2話くらいで感想が途絶えるんですが、いまだに放送が終わった瞬間に制作陣だけでなく、役者さんからも感想が届きますし。それぐらい、視聴者さんだけでなく業界内の反響も大きいです。

◆SNSではさまざまな考察もされています。

全部は見られていないんですが、たまに。考察動画を見ていて、「それは深読みしすぎ!」という部分もあって。そんな時は、誤解を解くようにしましたね。例えば、達夫さん(光石研)がずっと“自殺だ”、“殺された”と言われていたので、ダイジェストの中に「くも膜下出血」というせりふを入れて、そこに何もありませんよと、こちらから発信したりして。

◆特に印象的だったコメントは?

「梨央を幸せにしてください」というコメントが多いですね。先日、「1話冒頭のあの日のシーンの撮影があります」ってツイートしたら、実際は服の模様なんだけど、「全身血だらけだ」ってコメントがきていました(笑)。

◆本作をやってきて、うれしい誤算はありましたか?

SNSのフォロワーさんがこんなに人が増えるとは思わなかったです。気が付けばInstagramは30万人、Twitterも15万人のフォロワーがいて、TVerのお気に入り登録者も95万人。これはうれしい誤算でしたね。(※上記人数は取材時)

◆SNSで支持された一番の理由は何だと思われますか?

サスペンス感が強い本編とは裏腹に、SNSではじゃれていたりする素の表情を出しているんですけど、そのギャップがいいんですかね。サスペンスって、「今週、こういうことがあります」って書けないんですよ。だから、現場の様子だったり、スタッフの紹介をしたり。温かみのある空気感が写真に出ていたらいいなと。

◆新井さんのチームは、毎回チーム感が強いイメージありますが、それは意識されているんですか?

今回は、サスペンスだとは思えない現場です(笑)。すごくシリアスなシーンを撮っているのに、NGを出すと「やってまったー」みたいな感じで。私と塚原さんがノリツッコミし合ったり、チーム全員が明るいのはもちろん、吉高さんが現場を明るくしてくれるので、それがいい空気感になっていると思います。

『最愛』新井順子プロデューサーインタビュー

◆新井さんの作品は、人生の連鎖を描かくものが多いと思います。本作でも、ミステリーの中にも“最愛”なものをどう守っていくかというヒューマンドラマの部分を強く感じるのですが、特に意識されていることなどありますでしょうか?

登場人物の感情に筋を通すということでしょうか。第1話で言っていることと、第5話で言っていることが違うと別人格になってしまうし、演じる役者さんも視聴者の方も違和感を感じてしまう。シーンの都合で、都合の良い台詞を言わないように、その話だけしか成立しないことはやらないように心がけています。今回の『最愛』は、15年前とつながっているので、15年前の流れが現在にもつながるようにしました。

◆『最愛』というタイトルは、どのタイミングで決まったのでしょう?

企画書の段階では、違うタイトルだったんです。脚本家さんといろいろ話していくうちに、このタイトルじゃないなと思い始めて。登場人物がいろいろな行動をとったり、怪しい秘密を抱えていて、“何でそんなことするんだろう”と思った時に、みんなが愛すべきもののために動いているなと感じて、“最愛”がピッタリだなって。そうしたら、ハッシュタグが引っかからないかもしれない…っていう問題もありましたけど(苦笑)。だけど、そこからは“最愛”以外に思いつかなかったですね。登場人物全員にかかるタイトルだったし。第1話冒頭のナレーションって、“最愛”について語っていたり。

◆ラストも最初から決まっていた?

企画書の段階では、犯人はこの人、としか書いていなくて。どう展開するかっていうところまでは書いていなかったので、第9話ぐらいからどう終わるか、見せるか、難しかったですね。

『最愛』新井順子プロデューサーインタビュー

◆最後に、最終回に向けたメッセージをお願いします。

2年ぐらいこの作品をやっているので、やっと最終回まで来たなという感じ。これまでの伏線を全部回収するのが大変でしたが(笑)、逆に、放送した後どういう反応がくるかなと思っていて。それぞれの最愛は何だったのか。挑戦的な最終回になると思います。視聴者の皆さんがどう感じ取られるか、物語のその先を想像してほしいです。

PROFILE

新井順子
●あらい・じゅんこ…2001年にTBSスパークルに入社。2008年からプロデューサーとして活動。これまで手掛けた作品は『Nのために』『アンナチュラル』『わたし、定時で帰ります。』『MIU404』『着飾る恋には理由があって』など。

番組情報

金曜ドラマ『最愛』
TBS系
2021年12月17日(金)後10・00~10・54

©TBS