『受付のジョー』中茎強監督が語る“俳優・神宮寺勇太”の魅力と素顔「求められていることを察知する能力がすごい」

特集・インタビュー
2022年06月22日

これまでありそうでなかった「受付」の世界にスポットを当て、若きサラリーマン・城(神宮寺勇太)が“究極のホスピタリティ”を身に付け成長する姿を描くドラマ『受付のジョー』(日本テレビ系)。演出を担当した中茎強監督に、撮影現場の裏話やクライマックスの見どころを聞きました。

◆中茎監督からご覧になって、神宮寺さんの芝居への向き合い方というのはどのように感じましたか

このシンドラ枠で僕が神宮寺君とドラマを作るのは2回目なんですけど、前回の『部活、好きじゃなきゃダメですか?』(2018年)からすごく成長しているなと。多分、舞台やグループ活動などいろいろなことを経験してきたからだと思うのですが、非常に大人になったなと思いました。「よろしくお願いします!」という真っすぐなあいさつから始まったのがまず好印象でしたし、台本もきちんと読み込んできていて、現場で台本を開いている姿は見なかったです。

◆4年前と比べると、今回は単独主演で座長というのも大きいですよね。

そこの気負いもあったと思います。今回は受付の世界が舞台ということで、キャストの皆さんには本読みと同時にマナー講習みたいなものを受けてもらったんです。それを本番前ぐらいにやっていたときの神宮寺君は非常に緊張していて。それはせりふを覚えられないみたいなことじゃなくて、城というキャラクターをどう演じていこうかというのをすごく考えていましたね。あと直前まで舞台をやっていたからか、お芝居自体もちょっと強めというか、オーバーな感じになっている気がしたので、本人とはそういう話もさせてもらいました。それで初日を迎えたんですけど、結局緊張は拭えなくて芝居でもいろいろ後悔したみたいで。1日目の撮影が終わったときに「いや~ダメでした」って苦笑いしていたのが印象的でした(笑)。

◆相当プレッシャーを感じていたんでしょうね。そこからどう立て直したんですか?

初日と2日目が受付のシーンだったんですけど、2日目には城というキャラクターをつかんでいた感じがします。そこで本人と「城って、ただただ真っすぐで、嫌みがなくて、一生懸命頑張る男なんだよね」という話をして。それ以降は、思い切り演じ始めましたね。そういうグラデーションを通して役を作っていった感じがします。

◆神宮寺さんの芝居に関して、特にすごいなと感じた部分はどんなところですか?

やっぱり求められていることをちゃんと察知する能力がすごいなと思いました。受付の仕事をしているときの城、大好きな春口(松井愛莉)といるときの城、自宅でのんびりしているときの城…と、うまく演じ分けてくれましたし。ファンや制作スタッフに何を求められているかをちゃんと考えている人だなと。迷ったときには素直に相談してきますし。僕的にはリラックスして現場に入ってくれればいいなという思いがあったので、あえてバカ話をして演じやすい空気を作って、日々撮影していましたね。

◆撮影以外の部分で垣間見えた、神宮寺さんの素顔というと?

主役だからとかではなく、いじられキャラというか、みんなから好かれる愛くるしさを持っているなと思いました。何かちょっと冗談を言っても「マジすか!」って反応してくれますし、一生懸命やればやるほどハズす…みたいなおっちょこちょいさもあって(笑)。あとは僕たちスタッフだけではなく、受付嬢のみんなとも自ら積極的にコミュニケーションを取っていました。

◆受付嬢チームの女性陣の結束力はどうでしたか?

結束力は高くて、佐知山さん(西原亜希)を中心に仲良くなっていった感じがします。受付のセットがある現場が結構寒かったので、「寒~い!」ばかり言っていました(笑)。あと僕的に、とにかく受付嬢のみんなをエレガントできれいに撮影しようというのがあって。実際に映像を見て、本人たちが「すご~い!」って喜んでくれていたのも印象的でした(笑)。メイクも衣装もそうなんですけど、受付シーンのターコイズブルーの壁に合わせてピンクにしてみたり、いろいろ工夫しています。

◆確かにドラマを見ていると、全体的に色使いがきれいな印象を受けます。

やっぱり普通に撮ってしまうと、何げないオフィスになってしまいがちなんですよね。今回のドラマの舞台である「凛燈舎」というオフィスをどう表現しようかと考えたときに、色ってポイントになるなと思ったんです。それはただ単純に色をカラフルにしようという話ではなくて。城という1人の人間が、受付の世界に飛び込んでいくというのを表現したかったんです。つまり受付嬢たちが例えば制服の色にちなんでピンクだとしたら、そこに飛び込んだ城もピンクになっていって。はたまた受付嬢たちも、城の影響を受けて違う色に染まっていくというか。やがてそれらが一色になってみんなで力を合わせて頑張っていく…みたいなところを1つのテーマとして掲げて描いていこうと。凛燈舎に関しては老舗の広告代理店のイメージがあるので、何となく古きよき部分は残そうと思って。それでも、オフィスは少しカラフルにしてみようかということになりました。あとは、ポップでにぎやかにすることで、ドラマを見ている方が“この仕事、楽しそうだな”という印象も持ってもらえたらいいなと思いました。

◆そういう部分でスタッフさんの遊び心も詰まっているんですね。ほかに、セットをよく見るとこんなものがあります…的なものってあったりしますか?

やっぱり城の部屋に、King & PrinceのCDが置いてあることですかね。宣伝動画の企画の流れで置いたんですけど、最初に予告の動画が公開になった時点でファンの方が気づいてさすがだなと思いました(笑)。あとは、受付のみんなのデスク周りでしょうか。いろいろなものが置いてあるんですけど、熊ちゃん(美山加恋)の熊本城のブロックや大好きな干し芋があったりして。チラッとしか映らないですけど、そういうところも注目するとより楽しんでいただけると思います。

◆視聴者の間で話題になっている、縫いぐるみのちくわも気になります。

実は市販されている犬の人形を美術さんが染めたものなんですけど、ああいうのを見つけてくるスタッフはすごいなと感心します。ただ後から染めているので、よく見ると少しずつ色あせてきているんですよ(笑)。ちくわを置こうと思ったのは、会社の城とは違うかわいらしさを見せようと思ったからなんですけど。現場ではカットをかけずに放っておくことがあって、神宮寺君はアドリブでずっとちくわに話しかけています(笑)。

◆そうなんですね(笑)。演出面で監督が苦労された部分はどんなところですか?

やっぱり受付のシーンですかね。実際のプロの受付スタッフさんは本当にいろいろな作法を身に付けていらっしゃるんですけど、それをドラマでイチからやっていくとすごく長い尺を使うことになってしまうんですね。なので実際にはそこまで細かく演じることはないのですが、キャストの皆さんには一通り作法を勉強していただきました。それをやることによって“受付という仕事はこういうものなんだ”という顔になっていくので。あとは、常ににぎわっている受付にどう見せるか。カメラを切り返したとき、奥の方にお客さんがたくさん歩いているようにして、ずっと動いているような雰囲気を作るのに苦労しましたね。でもそこはキャスト、スタッフとコミュニケーションを円滑に取りながら乗り越えることができました。

◆ドラマはいよいよ最終回を迎えます。視聴者の皆さんに向けて、ぜひこういうところを見てほしいというポイントを教えてください。

ポイントは2つだと思います。1つは、最初はなくそうとしていた受付の大切さを知った城が、どんな決断をしていくのか。それによって受付嬢のみんなもどういう気持ちになっていくのかということ。そこは城の視点だけで見ていただいても面白いと思いますが、後半で受付嬢それぞれの目線で物語を描いてきたことによって、彼女たちの目線で見ても楽しめると思います。“人と人というのは交流することで成長するんだ”というこのドラマのメッセージもより受け止められると思うので。もう1つは、城、春口、仁子(田辺桃子)の三角関係ですね。春口や仁子が、城に対してどんなことを話すのか。それを受けて城はどんな行動を取るのか。これも、いろいろな人と関わることで人生は変化していくんだという話になっているので楽しみにしていただけたら。何よりこのドラマを見て、翌朝出勤したときに自分の会社の受付の人たちに「おはようございます」ってあいさつしてみようかなとか。それぐらいの気持ちになっていただけるだけで、僕としてはうれしいです。

PROFILE

中茎強
●なかくき・つよし…06年、日テレアックスオン入社。ディレクター。最近の担当作品に『君と世界が終わる日に』『HiGH&LOW』映画、TVシリーズ、『サムライカアサン』『あなたの番です』など。「木下工務店」のCMや湘南乃風「雪月花」のMVの監督を務めた経歴も持つ。最新作は、7月7日(木)スタートの『オクトー~感情捜査官 心野朱梨~』(読売テレビ・日本テレビ系)。

番組情報

『受付のジョー』
日本テレビほか
最終回 2022年6月27日(月)深夜0時59分~
Hulu、TVerでも配信中

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