『階段下のゴッホ』演出・プロデューサーからの手紙 第8回:宛名のない手紙

特集・インタビュー
2022年11月11日
(C)「階段下のゴッホ」製作委員会

TBSの深夜ドラマ枠「ドラマストリーム」で9月20日から放送開始した『階段下のゴッホ』(TBSほか 毎週火曜 深夜0時58分〜1時28分)。本作は、自分らしく生きるために邁進し、強くたくましく夢にも仕事にも向き合い進んでいく主人公・鏑木都の姿を通して、生きやすいようで生きにくい令和の時代を闊歩する女性たちにエールを送るヒューマンラブストーリーだ。
大手化粧品メーカーに勤める“高収入バリキャリ女子”で、ある絵画に出会ったことで一念発起し、画家になるという夢をかなえるべく東京藝術大学を目指す主人公・鏑木都をSUMIRE、都が美術予備校で出会う6浪中のミステリアスな青年・平真太郎を神尾楓珠が演じる。
そんな本作でプロデュース兼全話の演出を担当する小牧 桜さん(TBSテレビ)による連載を、TV LIFE webで公開中。本作に込めた想いから撮影の裏側まで、演出・プロデューサーという立場ならではの視点でお届けしてきた連載も、今回でついに最終回を迎えます…!

第8回:宛名のない手紙

拝啓、皆様。

「絵は言葉のない手紙、いつか誰かに届くように。」

●photo/山元良仁 (C)「階段下のゴッホ」製作委員会

その言葉と共に脚本が完成し、大きな深呼吸をした夜から随分と時間が経ちました。今でも物作りってなんだろう、と疑問に思うことがあります。ターゲットとか、万人に受けるものとか、キャッチーさ。考えなくちゃならないことはごまんとあるのですが、じゃあ誰に向けて作っているのかと聞かれたら、過去に戦っていた誰かであり、今まさに踏ん張っている誰かであり、いつか未来で悩む誰かであり。毎日を必死に生きている、どこかにいる誰かのためにドラマを作っています。時代性とかそういったものが重要視される世界で、ドラマは日常に寄り添う普遍的なものでありたい。

●photo/山元良仁 (C)「階段下のゴッホ」製作委員会

都と真太郎の絵の具の投げ合いは、会話せずとも気持ちを伝え合うということをなんとか表現できないかと、編集の松尾さんと話し合って辿り着いた解答でした。理屈じゃなくて、言語じゃなくて、訴えかけるように。怒っているかと思いきや急に泣けてきて、恥ずかしくなってきて、…そういうやりきれないような、人間の生の気持ちのゆらぎをどう見せるか。言葉と行動や感情は裏腹。でも次第に心の中が、思わずあふれてくる。普段は穏やかな撮影ですが、この時ばかりはかなりの緊張感を持って臨みました。2人もそれに応えて下さった、印象深い撮影です。

絵を描く道を歩む、都や真太郎、光也、予備校のみんなを通して描きたかったのは、人はそれでも生きていく、ということです。挫折や失敗、喜び、苦しみ。そのような悲しい出来事でさえも人生においてはまた、1つの筆跡として残ります。一見自分とはまったく違う世界にいるように思える人との関わりですら、自分を描く色になる。
自分の生きざまそのものが、誰かに宛てた手紙のように、いつかどこかで誰かに届くかもしれない。“光也”という手紙は意外な形で都のもとに渡り、結果、真太郎に届いた。最終話は全ての人の背中を押すような、登場人物みんなが微笑むことのできるようなハッピーエンディングでありたいと思っていました。

(C)「階段下のゴッホ」製作委員会

だからこそSUMIREさんがまっすぐな瞳で都の積み重ねてきた想いを語ってくれた時、神尾さんが全てはこのためだったんだなと思えるような優しい微笑みで最後の絵を描いてくれた時、倉さんが許しというよりも家族に向ける兄の眼差しで笑ってくれた時、あぁこのドラマはちゃんと描こうとしたものにまっすぐ向かって長い道を歩けているのだ、と胸に迫る思いがありました。誰一人欠けても成り立たないラストがそこにはありました。

(C)「階段下のゴッホ」製作委員会

実は真太郎の青いコートは、最後の海のシーンでより深い色の青いものに変わっています。光也の青もすべては真太郎の中にある。彼のことを認めてくれる都や予備校の仲間たちがいる。この先はいろんな壁にまた出会ったとしても、きっと自分らしい青で、自分の道を描いていってくれることだと思っています。編集しながら、頑張れ! 真太郎笑え! とその場にいたみんなでしゃべっていた時、あぁ愛される人になってくれてありがとうとうれしくなったことが懐かしいです。都のおかげだな。

このコラムも最後となりますが、皆さんにとって『階段下のゴッホ』が、好きを続ける自分に胸を張って歩いていけるよう、そして背中を押してくれるようなドラマとしてあり続けられたらと思っています。どうか皆さんが、皆さんにとってのゴッホに出会えますよう。
それではまたどこかで。

最後はやっぱり、心の中で握手を。

PROFILE

小牧 桜
こまき・さくら…1989年4月14日生まれ。東京都出身。
TBSテレビ コンテンツ制作局ドラマ制作部。
『ルーズヴェルト・ゲーム』、『99.9〜刑事専門弁護士〜』、『凪のお暇』などの演出部を経験し、2020年『この恋あたためますか』でGP帯監督デビュー。以降は『リコカツ』、『持続可能な恋ですか?〜父と娘の結婚行進曲〜』などのドラマの演出を担当。
9月20日より毎週火曜深夜0時58分からTBS系にて放送中のドラマストリーム『階段下のゴッホ』(出演:SUMIRE・神尾楓珠ほか)で、初プロデュース兼全話演出を担当。

番組情報

ドラマストリーム『階段下のゴッホ』
TBSほか ※一部地域を除く
2022年9月20日(火)スタート
毎週火曜 深夜0時58分〜1時28分

公式サイト:https://www.tbs.co.jp/kaidanshita_no_gogh_tbs/
公式Twitter:@drama_streamtbs
公式Instagram:tbs_drama_stream
公式TikTok:@drama_stream_tbs

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