「僕にとって集大成になる作品」柳下大インタビュー 舞台「オーファンズ」に主演

特集・インタビュー
2015年12月29日

2016年2月に上演される舞台「オーファンズ」に主演する柳下大(やなぎした・とも)さんにインタビュー。演出家・宮田慶子さんに直談判し、作品選びからかかわったという柳下さんが、“集大成”と語る本作への熱い想いを語ってくれた。

人間の気持ちとか情とかに触れていく作品

――「オーファンズ」とはどんな作品なのか、教えてください

「オーファンズ」って日本語にすると“孤児”という意味で、孤児たちの物語です。
僕と平埜(生成)君が孤児の兄弟で、2人で暮らしている。
平埜君が演じる弟のフィリップは家にいて、僕が演じる兄のトリートは強盗、窃盗、恐喝をして、それで食べている。そんな兄弟が高橋(和也)さん演じるハロルドに出会います。
トリートは最初は金目当てで、いつもやっているような感じでハロルドを誘拐するわけです。
だけどハロルドのほうが何枚も上手で、ハロルドと接することでフィリップも変わってきて、トリートもそれによって変わってくるという、人間の気持ちとか情とか、そういうものに触れていく作品ですね。

――柳下さん自ら演出家の宮田慶子さんに演出のお願いをしたそうですね。

「真田十勇士」という作品で宮田さんに演出していただいて、そこからすごく仲良くさせていただいているんです。宮田さんの作品を見に行ったり、僕が出演する作品を宮田さんが見に来てくださったりしていて。僕が思っていることか考えていることとかを全部見透かされちゃうんですよ。だからすごく僕は信頼感を持っていて。
ダメモトで、ぜひ僕主役で演出してくださいませんかってお願いしたときに、「いいよ」って。それで「せっかくやるんだったら、今までになかった大を引き出して演出したい」と言っていただいて。
まずそれで宮田さん演出で僕主演という企画が決まった感じでした。
それから、じゃあ僕が次のステップに進める作品っていうのはどういう作品なんだろうっていうふうに選んでいったかたちですね。

――このタイミングで宮田さんにお願いしたのはどんな理由が?

「真田十勇士」のあとに「熱海殺人事件」という舞台に出演したんです。宮田さんがそれを見に来てくださって、「とてもワクワクしました」「もっと大の魅力を引き出してみたい」というような内容の感想メールをいただいたんです。
宮田さんにほめていただくことってあまりないので、それがすごくうれしくて。
それで、そのあとの作品の相談をしながら、「僕主役で演出してください」ってお願いしたら、「いいよ~」みたいな感じだったんです(笑)。
「え?マジですか?」「いいよ。スケジュール次第だけど」みたいな感じで。「事務所に言ってもいいですか?」って言ったら「全然いいよ」と。それから事務所のスタッフに相談したら、びっくりしていて。「本当に?冗談じゃないの?」みたいな。そういうところから決まっていった感じですね。

――これまで役者として順風満帆だった柳下さんですが、今年、宮田さん演出の「真田十勇士・再演」の上演中にけがをされました。

僕、自分でも初めて気づいたんですけど、けがのせいにはしたくないって思いながら、すごいネガティブな自分がいたなって今は思うんです。そのときは芝居から離れたかったですね、すごく。何か…逃げたかったのかな。今思うと。

――そこからどうやって抜け出したんですか?

けがが治っていくのと比例して、気持ちもすごく前向きになりましたし、やりたいっていう方向になっていきましたね。
ネガティブなことばかり考えてたんですが、そこから抜け出して前向きになったころに、そのときの自分も、今までの自分も客観視できて。
この仕事から離れる時間ができて、いい意味で今までずーっと張ってた線が一回緩んだ感じで。気持ち的にもいろいろスッキリしましたし、生まれ変わった感じです。

けがをしたときから、それを後悔したことはないんです。もちろん、ふざけてやったわけでもないし。一生懸命やってもっとよくしようと思いすぎたときにもこういうことは起きるんだなっていうのは、今回勉強になった。
本当に舞台って決して1人でやっているわけじゃなくて。カンパニーっていうのができている座組みだと、こんなにみんなが助けてくれるんだって、スタッフ・キャストの力もすごく感じましたし。
そのときに宮田さんには今まで以上にだめ出しをしていただいたんです。僕が演じた猿飛佐助って、動けたから目立っていた部分もあった。それが、けがをして動けなくなった分、徳川家康と真田幸村と猿飛佐助っていう軸の中で、もっと大は芝居をしっかりしなきゃいけないし、新しい佐助を作らなきゃいけないっていうことで、今まで出されなかった細かいだめ出しを宮田さんがすごくしてくださったんです。それもすごくうれしかったですし、1つひとつ乗り越えなきゃっていうのもありましたね。
けが自体は不幸でしたけど、僕にとっては全部プラスのことばっかりでした。

せりふを聞くっていうよりは、感じてもらいたい

――今回の「オーファンズ」は、これまでに出演された作品と比べて、D-BOYS STAGE 10th「淋しいマグネット」に近いような、登場人物の少ない会話劇となりますね。

すごく楽しみです。この作品は、せりふじゃないと思ってるんです。本当に3人の空気感だったり、関係性だったりとか、気持ちの揺れとか、そういうものを感じさせるタイプの作品だと思うんです。せりふがないところが一番大事になる作品として、そのあたりを特に丁寧に演じたいです。
「淋しいマグネット」の最後のほうもそういうシーンで、僕はすごく楽しかったんです。いつも新鮮でいることができて。
そのときは思ったままやっていたので、立ち位置とかも全然違ったし、こっちに向かってしゃべっているときもあれば、下を向いて話しかけているときもあって。それによって相手の反応が変わってきたりとか、役者としてはそういうのを2時間まるまる楽しめる作品なのかなと思います。せりふを聞くっていうよりは、感じてもらいたいんですよね。

――激しい動きなどで見せられない分、演じる難しさはありませんか?

あると思います。だからこそ、徹底的に自分の役っていうのを理解しなきゃいけないし、その状況っていうのを自分の中にしみこませなきゃいけない。そうしないとフラットな状態でできないので。
自分がフィリップのこと、ハロルドのことをどう思ってるのかという軸をちゃんと作っておかないと、ただせりふをしゃべってるだけになっちゃう。せりふとせりふとの間とか、せりふの聞き方とかを大事にしたいです。

――人の気持ちが変わっていく繊細さをせりふだけでなく、演技で表現するということですね

そこが一番人の気持ちに触れる部分だったり、共感できる部分だと思うんです。人が1人加わったことによって、人間関係が全然変わっていっちゃうっていうのは、今の社会でもたくさんあると思うんですよね。

――今の段階で演出家の宮田さんからは何かお話はありましたか?

いや、ないですね。怖いです(笑)。本読みとか怖いです。たぶん「全然できてないよ」とか言われるはずです。

――舞台は上演が決定してから稽古が始まるまで少し期間が空きますが、その時間はどんなふうに過ごされるんですか?

100まで持っていきます。

――稽古に入る前の時点で?

自分ができることは全部やっておく。稽古で100にするんではなくて、自分ができることは事前に全部やっておいて、そこから削ってもらったり、足してもらったりしないと宮田さんに演出してもらう意味がなくなっちゃうから。
自分が理解した、自分の「オーファンズ」、自分のトリートというのを全部作った上で、まずそれを提示するというか。自分の100%はこれです、と。それで、そこからそっちは違う、ここはこう、これは合ってる、それはこうしたほうがいいよっていうのが演出していただくことだと僕は思っています。

――なるほど。出演する役者さんそれぞれがそれを持ち寄ってくるんですね。高橋さん、平埜さんがどういうものを持ってくるんだろうっていうのは楽しみですよね。

わくわくしますよね。だから稽古場も楽しくしたいなって思っています。

「オーファンズ」は僕にとって集大成になる作品

――この秋に俳優集団D-BOYSの舞台Dステ17th「夕陽伝」が上演されましたが、仲間の芝居を見ることは刺激になりますか?

刺激を受けるというか、普通の舞台より厳しく見ちゃいます。すごく偉そうになりますけど、自分の感覚的にはもっといけるだろうとか、すごいシビアに見ちゃう部分はありますね。もっと上にいってほしいっていう願望もあるから。
その分、「オーファンズ」という作品は、D-BOYSのみんなにも「すごい!」って思わせたいです。

――今回の舞台は柳下さんが宮田さんに演出をお願いしたところからスタートしたわけですが、自分発信で舞台を作る怖さはないですか?責任の重さというか。

怖くないです。楽しみで仕方がないんです。いけない部分でもあるのかもしれないけど(笑)、全然怖がってないですね。
何といっても宮田さんの演出なんで、僕は絶対面白くなるって思っているから。

――デビューして10年目。振り返っていかがですか?

子供だったなと思います。視野が狭かったなと思いますし。そのときにはチャンスに気づいてなかったんだなとか、いろいろ反省するところもありますけど、一番の良かったのは本当に人との出会いですね。人との出会いとかつながりとか。
あと、最近では「演劇ぶっく」のランキングで、演劇が好きで僕の出演作を見に来てくれる方が増えたんだなって実感できたのがうれしかったですね。
「演劇ぶっく」の俳優ランキングが10位に入ったときは「真田十勇士」という作品のおかげだと思ったんですけど、その次の年にも1つ順位を上げてランクインできたんです。
あれは演劇ファンの投票なので、それを見たときは演劇を好きで見ている方たちの中で、僕のお芝居を好きで見てくれる方が増えているんだなって思えて、それはすごくうれしかったです。
10年近くやってきた集大成として、そういう結果が1つもらえたというのは積み重ねなきゃできなかったことかなと思います。

――“出会い”というお話がありましたが、今回出演される高橋さん、平埜さんとは初めての共演となりますね。

ハロルドは違う雰囲気の方をイメージしてたんです。でも、パンフレット撮影のときに高橋さんにお会いして、ちょっとしかお話できなかったんですけど、一見「ちょっと怖そう」っていう雰囲気と、話した時のすごい親しみがあるという感じが「あ、ハロルドじゃん」って思ったんです。だからどういうふうに演じられるのかすごいワクワクします。
平埜君は個人的にすごく好きです。持っている独特の雰囲気が何か真っすぐで、それが役にぴったりなのかなって思います。

――何年か前だったら柳下さんがフィリップ役にぴったりだったかもと思いました。

そうかもしれないですね。スタッフさんにも「フィリップだったら今までの大のイメージだよ」って言われたんです。でも、この「オーファンズ」でトリートをやるっていうことに意味があるっていうのは、自分でも思います。

――フィリップの真っすぐさに対して、トリートは屈折している役柄ですね。

かなり屈折してますね。本当に心が弱くてさびしがり屋なんだと思います。そんな彼が変わっていく姿をどう見せるかも楽しみです。
「オーファンズ」は僕にとって集大成になる作品だと思っています。いろんなことを経験して、これを乗り越えられなかったらだめだなって。けっこう覚悟している作品です。やっぱり復帰作っていうのもあるし、これからまたスタートを切りたいと思っています。

――“集大成”とおっしゃる「オーファンズ」をどんな舞台にしたいですか?

感じ方は人によって違うと思うんですが、3人それぞれが見る方一人ひとりに当てはまる感情を持っていると思うんです。本当は自分が触れたくないし、隠したい感情。それを、せりふを聞いて物語が面白い面白くないじゃなくて、3人の気持ちが動いているところとか、表情とか空気感とかから感じてもらえたらいいなと思っています。
決して悲しいだけじゃなくて、あったかかったりとかちょっと幸せな気分だったりとか、どこかの感情に触れてもらえたらいいですね。
観に来てくださいじゃなくて、感じに来てほしいです。

 

PROFILE

柳下大
やなぎした・とも…1988年6月3日生まれ。神奈川県出身。
ドラマ、舞台、映画と幅広く活躍。「真田十勇士」(13,15)で演出を受けた宮田慶子氏に直談判して実現した舞台「オーファンズ」には、作品選びから参加している。


作品情報

舞台「オーファンズ」

脚本:ライル・ケスラー
翻訳:谷賢一
演出:宮田慶子
出演:柳下大 平埜生成 高橋和也

■東京公演
2016年2月10日(水)~2月21日(日)
東京芸術劇場 シアターウエスト

S席:6800円(全席指定・税込)/高校生以下4000円(全席指定・税込・数量限定)
※未就学児入場不可

■兵庫公演
2016年2月27日(土)~2月28日(日)
新神戸オリエンタル劇場

S席:6800円(全席指定・税込)/A席:5800円(全席指定・税込)
※未就学児入場不可

公式サイト(http://orphans.westage.jp/

□チケット
各プレイガイドにて好評発売中
東京公演
【チケットぴあ】
0570-02-9999[Pコード:447-225]

http://pia.jp/t/ (パソコン・携帯)

セブンイレブン、サークルK・サンクス、チケットぴあ店舗

【ローソンチケット】
0570-084-003[Lコード:35500]
0570-000-407[オペレーター対応]

http://l-tike.com/ (パソコン・携帯)

ローソン、ミニストップ店内Loppi

【e+(イープラス)】
http://eplus.jp/ (パソコン・携帯)

ファミリーマート店内Famiポート

【東京芸術劇場ボックスオフィス】
0570-010-296(休館日を除き10:00~19:00)

http://www.geigeki.jp/t/(パソコン)
http://www.geigeki.jp/i/t/(携帯)

兵庫公演
各プレイガイドにて好評発売中
【チケットぴあ】
0570-02-9560[発売日特電…11月28日(土)10:00-18:00]
0570-02-9999[Pコード:447-178]

http://pia.jp/t/ (パソコン・携帯)

セブンイレブン、サークルK・サンクス、チケットぴあ店舗

【ローソンチケット】
0570-084-005[Lコード:54911]
0570-000-407[オペレーター対応]

http://l-tike.com/ (パソコン・携帯)

ローソン、ミニストップ店内Loppi

【CNプレイガイド】
0570-08-9999

http://cncn.jp/k-o/

【e+(イープラス)】
http://eplus.jp/ (パソコン・携帯)

ファミリーマート店内Famiポート

【新神戸オリエンタル劇場チケットセンター】
078-291-9999(電話 10:00~18:00/窓口 11:00~18:00)

◆販売注意事項:0570で始まる電話番号は、一部の携帯電話・PHSからはご利用になれません。
 音声自動応答での受付番号はダイヤル回線からのご利用はできません。
 プッシュ回線またはトーン信号の出る電話機からおかけください。

◆チケットに関するお問合せ:
[東京]サンライズプロモーション東京
TEL:0570-00-3337(全日10:00~18:00)

[兵庫]キョードーインフォメーション
TEL:0570-200-888(全日10:00~18:00)

◆公演に関するお問い合わせ:
ワタナベエンターテインメント
TEL:03-5410-1885(平日11:00~18:00)