『事情を知らない転校生がグイグイくる。』石上静香・小原好美インタビュー「監督、小原さんを選んでくれてありがとう」

特集・インタビュー
2023年04月04日
石上静香・小原好美

月刊「ガンガンJOKER」で連載中の漫画『事情を知らない転校生がグイグイくる。』が、TVアニメ化。2023年4月9日(日)22時よりTOKYO MXほかにて順次放送がスタートする。本作はクラスメイトから「死神」と呼ばれからかわれている西村(茜)さんに、事情を知らない転校生・高田(太陽)くんが周りを気にせずグイグイ思いを伝える様子を描いたハートフルストーリー。Twitterを中心に話題となり、原作漫画は累計PV数2億を突破している。

そんな本作の中心人物である高田くんと西村さんを演じるのは、声優の石上静香さんと小原好美さん。ふたりはアフレコについて、口をそろえて「感情の微妙なラインを調整するのが難しかった」と言葉にする。TV LIFE webでは、石上さんと小原さんに、作品の魅力や、演じるうえで大切にしたことを中心にお話をお聞きしました。


◆原作を読んだときの感想を教えてください。

小原:まず絵のタッチを見て、優しいお話なんだろうなと思いました。一方で実際に読んでみたところ、いわゆるほのぼの系の作品とはちょっと違うのかなという印象も受けて。というのも、ヒロインの西村さんが周りからちょっとからかわれていて、一人でいるんです。でも、それを暗く描き過ぎてはいなくて。そんな状況下でも転校生がグイグイきてくれるんですよ。読み進めていると誰も嫌な気持ちにならない、温かいお話だと感じました。

石上:私はオーディションを受ける前から本作のことを知っていたんです。原作者の川村 拓先生がTwitterに載せているのを見つけて試しに読んでみたら、すごく面白くて。すぐに電子書籍を購入しました。オーディションの話が来たときも「やっぱりアニメ化するよね」と、驚きはなかったです。本作の魅力は、まず高田くんが思っていた以上に西村さんへグイグイいくところ(笑)。それがかわいらしいんです。西村さんの置かれている環境が、高田くんの登場によってどんどん変わっていくというストーリーにもグッときました。とてもすてきな作品です。

◆続けて、演じるキャラクターの印象についてもお聞かせください。

小原:目がギョロっとしていて、みんなから少し距離を置かれている西村さん。そんな環境も相まって、ちょっと暗い子なのかなと思っていたのですが、案外、本人は平然としている部分もあって。決して暗すぎる性格ではないと感じました。表現するうえでは、そのバランスが難しくもありましたね。実は私、西村さん役ではなく、別のキャラクターでオーディションを受けていたんです。事務所の方から「受けた役はダメだったんですけど、実はヒロインに決まりました」と電話で連絡を受けたときは、すごくビックリしました。

石上:なかなか聞かない話だね。

小原:しかもお相手は石上さんと聞いて、うれしさから「はいーーっ!?」という変な声が出ました(笑)。とはいえ、そんな流れで決まった役だったので、実際にアフレコしてみないとお芝居の塩梅がよく分からないというのが、正直な気持ちでした。その後、最初のアフレコ時に監督から「あまり暗く作りすぎなくて大丈夫です。等身大の純粋な女の子で」というお話があったんです。なので、暗さの塩梅などはあまり考え過ぎず演じました。

石上:高田くんは、きっと多くの人が「すごく元気」と感じる子だと思います。だからこそ、声質やどういう演技をするかという方向性が、個人的には見えやすいキャラクターでした。私はオーディションを高田くん1本で受けたんです。自分で言うのもあれですが、高田くんの声帯は私にピッタリだと原作を読みながら感じていました(笑)。それだけに、この役を取りたいという強い気持ちもあって、オーディションに向けていろいろと考えたんです。結果、驚くほどグイグイやってみました。

小原:そんなに?(笑)

石上:うん。やりすぎじゃないか、というくらい。テープオーディションでは、たくさんの役者さんが高田くんのグイグイを演じます。そのなかで飛び抜けたグイグイを出すかどうかが、合否を大きく左右すると思ったんですよね。手を繋いでいるレベルじゃなくて、もう体ごと持っていくくらいのグイグイ度。あっ、もちろんアニメでは抑えていますよ。

小原:えっ、あれで!?

石上:抑えてるよ!……テープオーディションのときよりかは(笑)。

石上静香・小原好美

◆グイグイ度合いにも注目ですね! では、お互いが演じるキャラクターの魅力についてはいかがですか?

小原:うーん……。

石上:高田くんが魅力だらけだから、悩んじゃうんだよね!?

小原:まぁ(笑)。まずね、演じる人の声と高田くんがピッタリ過ぎるんですよ。石上さんとは別作品で共演したこともあって、すごく安心感がありました。石上さんが演じる高田くんって、小学生のかわいい男の子でありながらも、ちょっと男らしさを感じるときがあるんです。そういう姿に最初は「おっ!?」って身構えてしまいましたが、だんだんと「またこの子言うとるわ。グイグイ来よるわ」となっていって(笑)。これは演じるキャストの仲が良いから、より思えたことかもしれないです。掛け合いがすごく楽しかったですね。アットホーム感が、作品のプラスにもなっていればいいな。

石上:漫画を読むとき、このキャラクターはどんな声質かなとイメージすることが多いんです。でも、西村さんはイメージが定着しなくって。かわいい声もあるし、低い声のパターンもあるし、その中間って場合もありえる。いろいろな可能性があると思ったんです。だから、余計に誰が演じるのか気になっていたのですが、小原さんと聞いたとき「ああ、全てを兼ね持っている声質の人がきた」と、一瞬で腑に落ちました。小原さんなら高くてかわいい声でも演じられるし、内気な弱さやナチュラルなお芝居もできる。監督、小原さんを選んでくれてありがとう。

小原:(笑)。

石上:ほんとうに、心のなかで拍手していたから(笑)。先ほど本人も言っていましたが、最初のアフレコ時に、小原さんはどう演じればいいのか迷っているように見えました。ただ、彼女が声を発声した瞬間、「あぁ、これが西村さんだな」と改めて納得したんです。それくらい、しっくりきましたね。

石上静香・小原好美

元気85%が正解のときもあれば、72%が正解のときもあった

◆その他、アフレコで印象に残っていることはありますか?

石上:「これ、西村さんを口説いているのでは?」みたいなせりふがあったときに、私がオスみを出すと「それは違う」って監督から言われました。高田くんって、西村さんとはあくまで友達で、女の子としてはあまり見ていないんです。その調整が難しかったので、アフレコのテスト段階では、“どれくらいオスみを出しても許されるのかチャレンジ”をしていました。「絶対にNGが出ると思うけど、オスみを出してみるね」と言って、全力でテストに臨んでいましたね。監督と戦っていました(笑)。

小原:「石上さん、制作陣のみなさんにもグイグイいくやん」って思っていました(笑)。

石上:どこまでOKなのか、探りながら演じていました(笑)。

小原:でも、この作品ってテンション感や言葉の感情度合いが、ほんとうに難しい作品なんです。

石上:高田くんは100%元気、西村さんは100%暗い、という芝居じゃないんですよ。会話の流れによって、元気85%が正解のときもあれば、72%のときもある。その微妙なラインが難しいという話をふたりでよくしていました。

小原:話数によってはジーンとくる話や、高田くんがすごくドキドキさせてくる話もあるんです。そういうとき、パーセンテージを考えずに演じちゃうと、微妙なズレが出ちゃうんですよ。繊細に言葉へ落とし込んでいかないと、ちゃんと高田くんと西村さんの掛け合いにならないというか。帰り道にふたりでよく反省会をしていました。

石上:お互いに「あれで間違ってなかったと思うよ!」と、励まし合っていたよね。

◆おふたりが思う、本作の推しポイントは?

石上:まず小学生が主人公ということもあり、すごくピュアな物語であること。見たら心が浄化されると思います。あと、漫画から注目していたのが、西村さんの照れ顔です。大人しい子の照れた姿をこんなにも見られる作品は、なかなかないですよ。本作において、照れ顔はこの子のためにあると言っても過言ではないぐらいです。そこも推しポイントですね。

小原:後半になってやっと照れるみたいな感じではなくて、序盤からガンガン照れるので、ぜひ注目してください。あと、この作品はほっこりする内容ではありますが、どこか人間味も感じられるんですよね。大人になるまでの期間で、どこか孤独感と向き合う時期ってなかったですか? 物理的なことではなく、精神的な成長とともにちょっと周りとズレが生じてきて、心の中で一人を感じる瞬間が。西村さんの「周りはこう言っているけれど、私は私だから平気」という描写を見ていると、どこかで自分が経験してきた孤独と重なる部分があるんですよね。個人的にはそういう心の繊細な部分の描き方や共感ができる点も、この作品のポイントだと感じています。

石上静香・小原好美

(こんなお話も!)おふたりが読者の方々に推したいエンタメは?

石上:最近はYouTubeでゲーム実況や麻雀の動画をよく見ています。

小原:そうなんだ!

石上:麻雀のゲームをやっているので、「どうやったら役が付くのか」などについて、動画を見ながら勉強しています。最近は麻雀対局をしている動画も見ますね。「私だったら索子(ソウズ)を捨てるのに、そこで筒子(ピンズ)を捨てるんだ」など、打ち方の違いを見るのがすごく面白くて。遊び程度でしかやっていませんが、もっと上手くなりたいなと思っています!

小原:私は、坂元裕二さんの描くドラマがすごく好きで。『それでも、生きてゆく』や『最高の離婚』など、よく見ていました。坂元さんが描く作品って、カメラの長回しが多い印象があるんです。長せりふも多いのですが、そのなかに物語の鍵となるような言葉が入っているんですよ。

石上:なるほど。

小原:1回目は1視聴者として見ますが、2回、3回、4回と見るなかで、「それで、ここにこのせりふを持ってきたんだ」と感じるようになって。そういう発見も楽しいですし、勉強にもなります。あとは、2000年代前半のドラマも好きですね。動画配信サービスに登録して過去作をよく見ています。技術が上がったいまのドラマもすてきですが、少し前の時代ならではの撮り方、画角や色合いを見るのが好きなんですよね。

◆アニメとはまた違った作り方や撮り方ですもんね。

小原:確かに。アニメ関係の仕事をしているからこそ、ちょっと違うものを見たいという気持ちはあるかも。何だかアニメだけを見ていると、芝居が偏ってしまう気がして。違うエンタメを取り入れるのも大切なことだと、個人的には思っています。デフォルメされたアニメならではのお芝居もあれば、せりふではなく会話がより求められる作品もある。そういうのに対応できる役者でありたいですね。だから、これからもいろいろな作品を見ていきたいです。

石上静香・小原好美

PROFILE

石上静香
●いしがみ・しずか…9月14日生まれ。東京都出身。主な出演作は『魔法陣グルグル』ニケ役、『ダンベル何キロ持てる?』上原彩也香役、『この素晴らしい世界に爆焔を!』ねりまき役など。

小原好美
●こはら・このみ…6月28日生まれ。神奈川県出身。主な出演作は『魔法陣グルグル』ククリ役、『カッコウの許嫁』海野幸役、『無職転生 〜異世界行ったら本気だす〜』ロキシー・ミグルディア役など。

石上静香・小原好美

●text&photo/M.TOKU

番組情報

『事情を知らない転校生がグイグイくる。』
TOKYO MX:2023年4月9日(日)より毎週日曜 午後10時~
読売テレビ:2023年4月10日(月)より毎週月曜 深夜1時59分~
テレビ愛知:2023年4月10日(月)より毎週月曜 深夜2時5分~
BSフジ:2023年4月11日(火)より毎週火曜 深夜0時~
アニマックス:2023年4月15日(土)より毎週土曜 午後11時~

『事情を知らない転校生がグイグイくる。』公式サイト:https://guiguikuru.com/
『事情を知らない転校生がグイグイくる。』公式Twitter:https://twitter.com/guiguikuru_pr

©川村 拓/SQUARE ENIX・事情を知らない製作委員会がグイグイくる。