「全員が小ライスになっても飯行こう」トンツカタン・森本晋太郎のネクストブレイク紀行【第55回】

特集・インタビュー
トンツカタン・森本晋太郎のネクストブレイク紀行
2025年06月11日

お笑いトリオ・トンツカタンの森本晋太郎さんがTV LIFEで連載中のコラム「トンツカタン・森本晋太郎のネクストブレイク紀行」。「今年売れる」と言われ続ける中での出来事や本音が綴られた“飛躍を夢見る芸人の備忘録”をwebでも公開します。今回は、後輩の快気祝いをした話。(TVLIFE 2025年5月28日発売号より転載)


全員が小ライスになっても飯行こう

一期下の後輩にバイオニというコンビの松元という男がいるのだが、先月に体調を崩して一週間入院していたらしい。彼は昨今の若手芸人に珍しくSNSの類を一切やっていないため、その事実を知る者はかなり少ない。僕もその事実をライブの楽屋で本人から聞き、「ぜひ快気祝いをしてほしい」とリクエストされたので彼含む後輩3人と一緒に先日ご飯を食べてきた。

店で集まって早々に二期下の後輩であるかわえなつきから「ところで今日はなんの集まりなんですか?」と聞かれ、「体調を崩してた松元の快気祝いだよ」と答えると「え!?松元さん体調崩してたんですか!?」と驚愕していた。基本的に松元の情報は口伝でしか得られないので妙なプレミア感がある。

しかし思えばこうして後輩を何人か誘ってご飯に行くのは久しぶりだった。決して後輩付き合いを疎かにしていたわけではないのだが、やはりどうしても「本当は行きたくなかったらどうしよう…」と自意識が発動してしまう。無理して気を遣われるくらいだったらという思いが、後輩たちとの距離を遠ざけてしまっている。ただ、今回のように「快気祝いをしてほしい」という大義名分があれば誘いやすくなることがわかった。なので、語弊を極限まで恐れずに言うと、後輩たちにはどんどん体調を崩してもらえると僕としては助かる。もっと恐れろよ、語弊。

とはいえ、やはりこのような機会に精一杯の先輩らしさを見せたい。駆け出しのころは「2000円までしか払わないけど飯行かない?」という情けない宣言をして後輩を誘っていたが、それも今は昔。一銭も出させずに美味しいものをお腹いっぱい食べてもらうのが僕の務めだろう。

そんなことを思いながらジンギスカン屋さんを予約して、「たらふく食べていいよ」と言ったところ、全員が中ライスなどの控えめな注文をし始めた。遠慮しているのかと不安になって確認をしたところ、ある事実を完全に見落としていた。

みんな歳を取っていたのだ。

松元とかわえは後輩とはいえ歳は上で現在38歳。頼みの綱である最年少のピン芸人、酒井くんも33歳になっていた。もう、あのころの胃袋じゃないんだ。

結果的に「最近の身体の不調」をしっとりとしたトーンで話し、無理をしない範囲で羊肉を嗜んだ。どんなにAI技術が発達しても、「ジンギスカンを食べている若手芸人」というお題で絶対に描けない光景だったと思う。

ある程度は覚悟していたお会計も、目がくラムほどの金額だった。安い方に。


森本晋太郎
●もりもと・しんたろう…1990年1月9日生まれ、東京都出身。お笑いトリオ「トンツカタン」のツッコミ担当。プロダクション人力舎のお笑い養成所・スクールJCA21期を経て、現在はテレビやラジオで活躍中。趣味でもあるツッコミに特化したYouTubeチャンネル「タイマン森本」も好評。初の書籍「ツッコミのお作法」(KADOKAWA刊)も好評販売中!

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