井上芳雄インタビュー「想像つかないことをやるのが好き」『劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』に出演

特集・インタビュー
2017年02月17日

ミュージカルを中心に活躍している井上芳雄さんが、『劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』に謎の青年剣士・エイジ役の声優出演。次世代オンラインゲーム「ソードアート・オンライン」を舞台に繰り広げられる主人公・キリトの活躍を描いた『ソードアート・オンライン』シリーズ。劇場版では、原作者・川原 礫が書き下ろしたシナリオを軸とし、次世代ウェアラブル・マルチデバイス《オーグマー》専用のRPGゲーム《オーディナル・スケール》の世界が描かれる。本作の印象やミュージカルと声優の芝居の仕方の違い、アフレコ時のエピソードなどをお伺いしました。

『劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』

◆オファーがあったときの率直な感想を教えてください。

びっくりしました。世界的にヒットしてる作品と聞いていたので、お話を頂いたときは「ドッキリかな?」って思いました(笑)。3年前ぐらいに一度声優のお仕事をさせていただいてるんですが、あまりご縁がなかった世界なので。僕自身、知らない世界に飛び込むのは嫌いじゃないですし、大変だと思うんですけど想像がつかないことをやるのが好きなので、どういうふうに(声を)録るのかなとすごく楽しみでした。

◆『ソードアート・オンライン』は、次世代オンラインゲームが舞台となっています。作品の印象はいかがでしたか?

発想がすごいなと思いました。あまりアニメを見ないですし、ゲームもやらないので疎いんですけど、決して自分たちとかけ離れた世界の話じゃなくて、現実的な話なんだと思いました。AR(拡張現実)やVR(仮想現実)はすごく身近なところにあり、日々アップデートされて、いろんなことができるようになっているんですよね。でも、その中で行われていることは基本的に人間対人間の、“誰が好き”とか“誰が嫌い”だとか、“愛してる”、“愛してない”っていう話だと思うんです。なので、安心感というか「どんなに技術が発達したとしても人の行動は変わらないんだな」と感じました。あと、あまりにも専門用語とかが多くて、台本を読んだときに分からない単語がいっぱいあったんです。その単語が造語なのか、このゲームでは一般的な用語なのかすらも分からなかったんですが、他の声優さんが声を当てるのを聞きながら理解していきました。

◆演じられるエイジは、主人公・キリトたちの前に突如現れる謎の剣士ですが、エイジはどんな人物ですか?

エイジは主人公たちと対峙する役なんですが、エイジ自身は思いが純粋なんです。見た目もカッコいいですし、戦っている姿もカッコいいなと思いました。アフレコする前に監督とお話しした際に「余裕を持った話し方をしてほしい」と言われました。でも後半では、舞台でもこんな声は出したことないなというぐらい、感情をあらわにした大きめの声を出しました。舞台だったら、声に体の動きがプラスされるし、映像だとそこまで大きい声を出したりしないので演じていて面白かったです。経験したことないシーンでした。

◆声優としてのお芝居の仕方は、やはりミュージカルや映像では全然違うものなんでしょうか?

そうですね。ミュージカルでもそうなんですけど、“ミュージカルっぽい歌い方”とか“お芝居の仕方”っていうイメージがあるんです。それと同じで“アニメ声優っぽい声の入れ方”もあると思うんです。でも、イメージが先行しすぎちゃうと「現実的にそんな言い方しない」ということも出てくるはずで、そういう意味で監督は、「普通の俳優さんや舞台をやっている方が入ることによって、少し違う風が吹いたらうれしい」とおっしゃったんだと思います。僕は、声優さんと同じような話し方や技術的に同じことはできないかもしれないけど、それ以外で僕にしかできないこともあると思っています。ただ、気持ちを込めるという意味では役者として同じだと思います。

◆違うジャンルでのお仕事をする上で大事にしていることや意識していることはありますか?

どんなジャンルのお仕事をするにしても、自分の役割や自分がいる意味を忘れないようにしています。僕は、新しいお話を頂いたときはできるだけその世界に飛び込んでみようと考えていて、よく「何を目指してるの?」と言われることもありますが、ただ自分にプラスになるものがあるかもしれないと思っているだけなんです。例えば、声優さんってきれいな方が多いんだなっていう発見でもいいし(笑)。中には、ミュージカルをやりながら声優のお仕事をしている方もいますしね。以前、坂本真綾さんと2人芝居で共演したことがあって、実はその時は真綾さんがどんなお仕事をしてらっしゃるかよく分かっていなかったんです。声優界での真綾さんの人気はすごいっていうのは知っていたんですが…。アニメ以外にも洋画の吹き替えもしていて、アニメと吹き替えの両方をやる人はあまりいないという話を聞いて「アニメも洋画の吹き替えもお芝居もやる坂本真綾さんはすごい方なんだ!」って。そういった共演者の方のすごさを分かるのもいいなって思いました。

◆3年前のアフレコと今回のアフレコでの違いはありますか?

前回は、1人でブースに入って録っていたんですが、今回は1人で録るシーンもありましたが、ほぼ他の皆さんと一緒にアフレコしました。1人のほうが落ち着いてはできるとは思うんですけど、お芝居なので掛け合いという意味では、皆さんとやったほうがいいなって思いました。

◆ご一緒された声優さんからアドバイスなどはありましたか?

皆さん優しくて、いろいろと教えてもらいました。アフレコするときって、台本に何秒ごろ言うせりふか分かるように、自分のせりふのところに秒数を書いて、下調べした上で挑んでるんです。一応、僕もその知識はあったんですけど、監督に「秒数を書いてきたほうがいいですかね」って相談したら「いや、大丈夫ですよ」って言われたので、そのまま録音に入ったら全然大丈夫じゃありませんでした!(笑)。それで、周りの方が僕の分までメモってくださって、“何秒ぐらいです”や“そろそろです”とか“今です!”って教えてくださいました。アフレコする上で慣れないのは、せりふの秒数が分かったとしても、その秒数までに気持ちをどう準備したらいいのか分からないんです。舞台と真逆なんですよね、舞台では「(自分の)気持ちができるまでせりふを言うな」って言われるんです。どれだけでも間をとっていいから、“愛してる”なら“愛してる”の気持ちになってからせりふを言っていいという教えがあったので、アフレコでは数秒しかないのに僕の心はどうしたらいいんだ!って(笑)。そこに合わせられる自分の技術が全然なかったので、皆さんはどうやってるのかな~って思いながら見てました。

◆舞台をやっていたからこそ、声優としてやりやすかった部分はありましたか?

感情を激高させる場面はやりやすかったですね。シェイクスピアのお芝居だと叫ぶところも多いし、舞台上ではワーキャー言っているので。単純に声が大きかったり、のどが比較的強かったりするので大丈夫でした。

◆今後、また声優としてお仕事をするとしたらどのような役をやってみたいですか?

普段できない役ができるので、悪役や屈折している人の役は演じてみたいです。あと、声の印象はあるとしても見た目は関係ないので、自分の見た目とかけ離れた役もしてみたいですね。人に限らず、動物でも乗り物とかでもいいなって思います。また声優として挑戦できる機会があるとうれしいです。

◆最後に映画の見どころを教えてください。

仮想現実じゃなくて、もしかしたら未来的にそうなるかもしれないような世界観の物語でも、話の中心は人間臭いストーリーになっているので、そのギャップが魅力だと思います。もちろん、ずっとこの作品のファンの方にも楽しんでもらえるものになっていますし、例えば僕が出演しているのを知って見てみようかというぐらいの作品のことを全然知らなかい方たちにも見てほしいなって思います。アニメというだけで「うーん…」ってなる人もいるかもしれないですけど、「見てよかった、面白かった」って思える作品なので、ぜひたくさんの方に見て触れていただきたいです。

 

■PROFILE

●いのうえ・よしお…1979年7月6日生まれ。福岡県出身。
大学在学中の2000年にミュージカル「エリザベート」の皇太子ルドルフ役でデビュー。以降、舞台を中心に活躍している。また、CD制作、コンサート、ディナーショー等の音楽活動にも意欲的に臨むいっぽうで、近年ではテレビ・映画等の映像へも活動の幅を広げている。現在、2017年NHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』に小野玄蕃役で出演中。また、5月にミュージカル「グレート・ギャツビー」、9月に舞台『謎の変奏曲』、11月に舞台「ダディ・ロング・レッグズ~足ながおじさんより~」の出演が控えている。

 

■映画情報

『劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』『劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』
2017年2月18日(土)より全国ロードショー

川原礫の小説(「電撃文庫」刊)を原作とした、謎の次世代オンラインゲーム《ソードアート・オンライン》を舞台に繰り広げられる主人公・キリトの活躍を描いた作品。2009年に原作小説第1巻発売以来高い人気を誇り、2度のテレビアニメ化やゲーム化、コミカライズ、グッズ製作など幅広くメディアミックス展開されており、今作の劇場版は川原礫の完全書き下ろしとなる。

公式サイト:http://sao-movie.net/
公式Twitter:https://twitter.com/sao_anime

配給:アニプレックス
上映時間:119分

©2016 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス刊/SAO MOVIE Project

 
●text/宮西由加