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ギャルマト・ボグダン インタビュー「アニメもプロレスも“夢を売る仕事”」アニメ「タイガーマスクW」プロデューサー

ギャルマト・ボグダン インタビュー「アニメもプロレスも“夢を売る仕事”」アニメ「タイガーマスクW」プロデューサー

1969年に放送された国民的アニメ「タイガーマスク」のその後を描いた「タイガーマスクW」。プロレスシーンの迫力はもちろん、新日本プロレスの実在のレスラーの登場でも話題の本作でプロデューサーを務めるギャルマト・ボグダンさんにお話を伺いました。

ギャルマト・ボグダン インタビュー

◆ボグダンさんはいま「タイガーマスクW」のプロデューサーをされていますが、具体的にはどんなことをされるのですか?

企画の立ち上げからスタッフを決めて、演出もしますし、シナリオも作って…まあひと言にまとめると、このアニメの社長みたいなものです。

◆大プロジェクトですから、まさにそのとおりですよね。企画は順調に進みましたか?

大変だったのは、プロレスファンとアニメファンのどちらも裏切ってはいけないということでした。プロレスをきちんと見せなければいけないというのを最初から決めていて、技とか組み方とか動きとかの表現もすごく苦労しています。
とは言っても、アニメとしてきちんとアニメファンには届かなければいけないというところがあるので、そこは苦労したというか、いまだに苦労していますね。

◆以前、アニメにも登場するオカダ・カズチカさんと、オカダさんの声を担当している声優の森田成一さんにお話を伺ったんですが(記事はこちら)、森田さんが「あのジャーマンスープレックスのかかとがすごい」と非常にマニアックな視点でご覧になっていました。プロレスファンからの評価も高いですが、スタッフはプロレスファンで固めたんですか?

アニメーターたちもプロレスが好きでよく見に行っています。
最初からプロレスが好きなスタッフを探していたし、この企画が動きだしたときに、参加したいって名乗り出てくれた人もたくさんいました。普通はこちらから探すんですけどね。珍しいケースなんですけど、「描かせてください」って。
エンディングは、馬越(嘉彦)さんという有名なアニメーターさんが担当してくれました。彼はいま、アニメ「僕のヒーローアカデミア」のキャラクターデザイン・総作画監督を担当されているアニメーターさんなんですけど、そちらをやっているので「タイガーマスクW」はできないんだけど、せめてエンディングだけでもやらせてくださいって名乗り出てくれたんです(笑)。

◆ミスターXの声を初代「タイガーマスク」のときと同じ柴田秀勝さんが担当されているのも、ファンにはたまらないポイントです。

最初にいくつかこだわりがあったんです。
1つはオープニング曲(「行けタイガーマスク」)を使いたいということ。
やっぱり昔のアニメファンにはこの曲が響くと思いまして。
当時のエンディング曲は使えなかったので、BGMとして使っています。
それと、ミスターXがいないと「タイガーマスク」が成り立たないということで、柴田さんにお声掛けしたところ、喜んで引き受けてくださいました。

ナオトのコーチをしている高岡拳太郎も元々出ていた初代タイガーマスクの仲間で、そのあたりも昔と今をリンクさせています。

◆主人公の名前も初代の伊達直人を感じさせる“ナオト”ですしね。

そう。名前はギリギリまでどうしようかと考えた末に、カタカナで“ナオト”にしました。

◆劇画タッチの雰囲気を感じさせるところも初代へのリスペクトを感じます。

初代のような名作までたどりつけるか分からないですが、少しでも近づくためにリスペクトを忘れずにやっています。初代「タイガーマスク」の演出をしていた勝間田(具治)さんという方に来ていただいて、一話だけ担当してもらったりもしました。

◆「W」の新たな魅力として実在のレスラーの登場があります。プロレスシーンはもちろんですが、声もご本人が担当している真壁刀義さんの“スイーツ回”などは、現実ともリンクしていて楽しかったですね。

真壁さんは演技もうまいんです。すごくやりやすかったですね。

◆本間朋晃さんのあの特徴のある声はてっきりご本人かと思ったら、高塚正也さんが声を当てていて、再現度がすごかったです。

レスラーの声をどうしようっていう議論は最初にあったんですが、巡業が多いこともあって本人にはお願いできないんですよね。
それにアクションが多いのでアドリブも必要。やっぱりアドリブは慣れていない人が入れるのは大変というのもあります。真壁さんだけは特別ですね(笑)。

◆レスラーの方の描写は自由にできるんですか?

新日本プロレスさんにシナリオは確認してもらっていますが、ほとんどチェックはないですね。
ただ、たとえばバスの中で選手の座る位置や、敵対しているチームは2台のバスに分けるとか、そういうことはしっかり確認しますね。

ギャルマト・ボグダン インタビュー

◆なるほど~。リアルですね。ファンは細かいところまで見ていますもんね。ところで、少し話をかえて、ボグダンさんの経歴について伺います。ボクダンさんはルーマニア出身と伺いましたが、どういった経緯で日本のアニメに携わることになったのか、簡単にプロフィールを教えていただけますか。

ルーマニアには21歳までいて、そのあとハンガリーに行きました。そのころ学生運動に巻き込まれていて、ハンガリーに亡命することになって。それから日本にきました。

◆ルーマニア革命の時期ですね。チャウシェスク政権が打倒されたことは日本でも大きく報道されていました。

それに巻き込まれて、父の故郷・ハンガリーに逃げたんです(笑)。

◆最初にアニメに触れたのは?

子供のころ、日本のアニメが大量にルーマニアに入ってきたんです。向こうは吹き替えはほとんどなく字幕で。幼稚園生くらいで字が読めないころだったので、母がアニメの字幕を読んでくれたのが小さいころの思い出の1つなんです。

◆小さいころから日本のアニメをご覧になっていたんですね。

記憶にあるのは「カリメロ」です。「カリメロ」が大好きで、自分にとって英雄でした(笑)。

◆ルーマニアで作られたアニメというのもあったんですか?

ありました。ルーマニアとかポーランドとか、東欧のアニメもあったし、人形劇みたいなストップモーションアニメ的なものがありました。あの~…なんでしたっけ…モグラの…

◆「もぐらのクルテク」ですね!

そうそう!スコップ持ってて(笑)。それは小さいころ見てました。そういうものの中に日本のアニメがあって。ティーンエイジャーくらいのころには「サイボーグ009」で盛り上がっていましたね。

◆日本に来たきっかけは?

当時の文部省の留学生の試験に受かったんです。もともと日本のアニメや映画が大好きだったので、日本のことをもっと勉強したいと思ったんです。それで千葉大学に留学して、大学院まで6年いました。

◆留学されたときは日本語は?

ゼロです(笑)。ゼロで来て、一年日本語学校に通いました。

◆大学院を出たあとは?

最初はアニメ制作会社に入りました。それからちょっと寄り道したんですけど(笑)、子供のころ私の大英雄だった三船敏郎さんの三船プロダクションに入って、そのあと東映アニメーションに入りました。

◆学生の頃から現在まで、ボグダンさんは日本での生活がかなり長いですが、そうすると、アニメの細かい描写だったり、日本人の感覚的なところも分かりすぎている部分はありますか?

そういう部分もありますね。実家に帰ると毎回カルチャーショックを受けてます(笑)。

◆逆に!?

逆に。もう完全に日本に慣れているので、母のつくった(ルーマニア)料理がしょっぱかったり(笑)。

◆あははは!そうなるともう日本を外から見るというのは難しいところがあるかもしれませんが、「タイガーマスクW」を海外に持っていくみたいな構想はありますか?

この作品は持っていけるとは思います。プロレス文化がある国、ない国という点は考慮しないといけないんですけどね。

◆なるほど。たしかにそうですね。プロレスがある国は熱狂的ですよね。

だいたいアニメの人気がある国だとプロレスも盛んですね。
プロレス人気が高くなっているとき、アニメも調子がいいとか、不思議なリンクがあるみたいなんですよね。両方とも“夢を売る仕事”という点で共通しているからかもしれませんね。

◆「タイガーマスクW」の今後の展開は?

今後は、コミカルな話で寄り道しつつも、ナオトもタクマも仇であるイエローデビルを追い続けます。あと、当然タクマと父親の再会とかいろいろな展開、そして彼らを取り巻く女性たちの戦いもあります。そして…ナオトとタクマ、2人だけの戦いではなくなっていきます。
今回のテーマは“大人が楽しめるタイガーマスク”なので、いろんな伏線も張ってあって、見どころがいっぱいあると思います。
ナオトとタクマのこれからの戦いの行方を楽しみにしていてください。

 

■PROFILE

ギャルマト・ボグダン…1968年12月30日生まれ。ルーマニア・ブカレスト出身。
子供のころから日本のアニメに親しみ、1992年に留学生として来日。千葉大学で日本文化などを学ぶ。
アニメ制作会社、芸能プロダクションなどに勤務したのち、東映アニメーションに入社。『タイガーマスクW』ではプロデューサーを務める。

 

■作品情報

「タイガーマスクW」東映アニメーション創立60周年記念作品
『タイガーマスクW』
テレビ朝日
毎週土曜 深夜2・30放送

<スタッフ>
シリーズディレクター:小村敏明
シリーズ構成:千葉克彦
キャラクターデザイン:香川久
アクション作画監督:羽山淳一

<キャスト>
八代拓、梅原裕一郎、三森すずこ、森田成一、鈴村健一 ほか

主題歌/「行けタイガーマスク」湘南乃風
エンディング曲/「KING OF THE WILD」湘南乃風

公式サイト:http://www.toei-anim.co.jp/tv/tigermask_w/

©梶原一騎・辻なおき/講談社・テレビ朝日・東映アニメーション

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