

“ちょっとだけエスパー”となった文太(大泉洋)の姿を描く話題作『ちょっとだけエスパー』(テレビ朝日系 毎週(火)後9・00)の連載。ラストは大泉さん、文太のかりそめの妻・四季役の宮﨑あおいさん、脚本の野木亜紀子さんが登場!(2025年11月26日発売号より転載。6話までのネタバレを含みます)
◆文太のキャラや能力は、どのように作っていったのでしょうか?
野木:ご存じのとおり、大泉さんは硬軟織り交ぜて笑いとシリアスを柔軟に行き来できる方ですが、私の中ではそれだけでなくエレジーというか、哀愁を背負うのが似合う印象があって。だから文太はそういう役にしました。一見、三の線だけど、実はちょっとだけかっこいいみたいな。
宮﨑:高畑(淳子)さんも同じようなことをおっしゃっていましたね。
大泉:「ずっとかっこいい」とは誰も言ってくれないんです。「“たまに”かっこいいですよね」って。
野木:その“たまに”の瞬間を見たくなるんです。人間の心理として。
大泉:そうですよね。やっぱり、たまにくらいがいいですよね。ディーン(・フジオカ)とか岡田将生とかはずっとかっこいいですもんね!
野木:そんなにライバル心を燃やさないでくださいよ(笑)。
宮﨑:現場でも大泉さんはちょっとだけかっこいい瞬間があるんです。
大泉:何でちょっとだけなんですか。
宮﨑:撮影直前まで周りとわーっと話している時は大泉さんの顔なのですが、せりふを交わす時はぶんちゃん(文太)の顔になる。その瞬間に普段と違う魅力がふわーっと香ってきて、かっこいいんです。
大泉:そりゃあ主役なんだから、かっこよくないと困るでしょ!
野木:文太の能力はなかなか決まらなかったんです。貴島(彩理プロデューサー)さんと他の人のバカバカしい能力から考えて(笑)、じゃあ文太はどうするとなった時に“相手に触れると心の声が聞こえる”という、一人だけ内面的な能力にすれば物語を転がしやすくなるのではないかというのもあってそうしました。
大泉:確かに、物語においては非常に効果的ですよね。ただ、私からするとこんなに恐ろしい能力はありません。人間は大なり小なりうそをついて生きているでしょうから、それが全部聞こえたら大変。私なら人に触れないように鉄の手袋をはめるとかして、どうにか能力を封印します。
◆四季はどのように?
野木:宮﨑さんにオファーして、引き受けていただけた! と聞いたときは本当にびっくりしました。せっかく出ていただけるなら、これまでの宮﨑さんにはあまりない役にしようと。ヒロイン的な立ち位置ですが、はっちゃけたというか、弱々しくならないようにしました。2話の「あいあいさー」とか、これ言っていただけるのかなと思いながら(笑)。
大泉:ご本人、ノリノリでしたよ。
宮﨑:ノリノリでした(笑)。
野木:非常にいいシーンでした。
大泉:4話の最後で四季ちゃんが誕生日ケーキをフッと吹き消そうとしたら文太が吹っ飛ぶというのを思いついた瞬間、やっぱり笑いました?
野木:そうですね。私、結構天才かもしれないなって(笑)。
大泉:ははははは。本当、天才です!
野木:四季のその能力は、企画時に“フッと吹き飛ばすのかわいくない?”とノリで決めたところもあって(笑)。
宮﨑:実際に演じると無敵になったような気分になれました。いい方にも悪い方にも使えるので、勘違いしそうだなと怖くもなります。でも、他の人と同じように四季さんの能力も過去にひもづいていて。そこが分かると何てことだとゾゾッとしました。


◆特に印象的なシーンは?
大泉:今となっては、四季ちゃんにドキドキしていた最初のころが懐かしくて。徐々に四季ちゃんが記憶を取り戻してきて、その過去を知ってからの文太がとにかく切ない。四季ちゃんから文太との思い出が語られるたびに、本当は俺ではなくて昔の夫との楽しい思い出なんだよねと思わされる。その会話が印象的です。
宮﨑:私的に大きかったのは、四季さんが兆(岡田)に会いに行って2人で話した6話のシーン。“人を愛してはいけない”というルールに対して四季さんが「アイドルだって今時言いませんよ」と言うと、兆が苦笑する。テストの時、岡田さんのその顔を見たら泣くシーンではないのに涙がボロボロ出てきました。でも岡田さんに、3話で文太も同じことを言っていたというその苦みもちょっと含ませてほしいと演出が入って。岡田さんがそうしたら私、全然涙が出てこなかったんです。心の動きが全く変わって。ちょっとしたことでこんなにも伝わってくるものが違うのだなという、お芝居の面白さをすごく感じたシーンでした。
野木:そこまで相手のお芝居を受け取れるのがすごいですね。そのシーンは、ドラマのなかで兆と四季が初めて対面するという大事なシーンだったので。台本では入りからそれを意識してほしいという気持ちを込めて、さりげなく含みを持たせたりもしました。
大泉:野木さんの脚本はいつも巧みで気持ちよく、切なくしてくれるので、こんなシーンをやらせてくれてありがとうございます! と感謝しかありません。「素晴らしいシーンです」と連絡もしました。その都度全部送るとうっとうしいかなと、我慢していくつかだけにしましたけど。
宮﨑:脚本を読んでいるだけで自然と心が動くので、自分から何かをする必要がなくて。脚本の力を借りれば、全てが進んでいくんですよね。
◆情報解禁時に野木さんが「小さな一匹の蜂は、未来を変えることができるのか?」とコメントされていました。そこにはどんな思いが?
野木:もちろん、私なりの思いがありますが、今ここでこうですと説明してしまうより、この作品を見て感じていただけたらうれしいです。
大泉:でも、未来を変えると言うとすごく壮大な話のようですが、そのための最初のアクションはやっぱり小さな一匹の蜂から起こすしかないですよね。いきなり大きなことなんてできませんから。小さなことから始めて変えていくというのは、そのとおりなのではないかと思います。
宮﨑:そうですね。小さなことの積み重ねでしか変わりませんもんね。
大泉:そういう意味でも、宮﨑さんというのはすごい人で。撮影が続いて現場もみんな大変で、周りが疲れれば疲れるほど、この方は元気になるんです。自分の元気でみんなを元気にできればと思うんでしょうね。
宮﨑:元気の押し売りです(笑)。
大泉:いやいや。そのおかげでこっちも元気をもらえる。そうやって周りを変える力が素晴らしいです。
野木:いいチームですね。
PROFILE
大泉 洋
●おおいずみ・よう…1973年4月3日生まれ。北海道出身。B型。近作は、映画「かくかくしかじか」「室町無頼」など。ドラマから映画化された「映画ラストマン -FIRST LOVE-」が12/24(水)公開。
宮﨑あおい
●みやざき・あおい…1985年11月30日生まれ。東京都出身。O型。ドラマ『ユーミンストーリーズ』『眩~北斎の娘~』、映画「秒速5センチメートル」「怒り」などに出演。来年のNHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』が控えている。
野木亜紀子
●のぎ・あきこ…脚本家。主な執筆作品に、ドラマ『アンナチュラル』『獣になれない私たち』『MIU404』『フェンス』『海に眠るダイヤモンド』『スロウトレイン』、映画「ラストマイル」などがある。
作品情報
ちょっとだけエスパー
テレビ朝日系 毎週(火)後9・00~9・54
脚本:野木亜紀子
監督:村尾嘉昭、山内大典
出演:大泉洋、宮﨑あおい、ディーン・フジオカ、宇野祥平/北村匠海/高畑淳子、岡田将生
●photo/中村 功 text/海老原誠二 hair&make/白石義人(大泉)、髙橋てんちょう彩(宮﨑) styling/九(Yolken)(大泉)、藤井牧子(宮﨑)











