近藤頌利インタビュー「どんなジャンルでもお芝居をやる軸は一緒。ちょっと幅が違うだけ」

特集・インタビュー
2021年09月17日

近藤頌利インタビュー

劇団Patchのメンバーとして舞台を中心に、テレビ、ラジオ、イベント出演など幅広く活躍中の近藤頌利さん。現在出演中の舞台「はい!丸尾不動産です。~本日、家で再会します~」の劇場で、公開舞台稽古直後にお話を伺いました。さまざまなジャンルの作品に挑む中で感じたことや役者としてのポリシー、さらに9月24日(金)に発売される初の写真集「軌跡」の撮影裏話も。

◆芸人の兵動大樹さん、落語家の桂吉弥さんがW主演を務める「はい!丸尾不動産です。」は関西で人気の舞台で、今作がシリーズ3作目です。公開舞台稽古を終えての手応えはいかがですか?(取材は9月初旬。大阪公演は終了。姫路公演は10月3日)

今回は会話劇ではありますが、コントに近い部分もあって。誇張されたキャラクターも多く、普通の人半分、ちょっと変わった人半分。そこに温度差が出すぎると飛び道具のような人間だらけになるので、あくまで人と人の話にしたいなという思いがあります。もっと振り切ったコメディだと突発的にバカなことをやって笑わせるというスタイルもあると思うんですけど、今作ではその登場人物が真剣にバカなことやっているさまを笑ってもらえたらいいなと思っています。

◆演者自身がギャグをするのではなく、登場人物がその物語の中で生きている中で、ということでしょうか。

はい。以前とある演出家さんに「変なことを突然するのはびっくり箱だから。それは演劇としては違う」と言われたことがあって。あくまで、行動の流れの中で変なことをしちゃう。そこがちゃんとつながってないと嫌なんですよね。突拍子もなく変なことをしたら面白いかもしれないですけど、それはウケを狙いにいった結果なので。演劇としてやるなら、そういうのはあまり好きじゃないんです。ちゃんと流れていきたいですね。

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◆近藤さんが演じる、スナックのマスター・林田さん(桂吉弥)の息子と“名乗る”人物は、どちらかというと普通の人ですか?

いや、僕の役は普通じゃない方ですね(笑)。後半は普通の人間ですけど、前半は変です。あそこまでテンパる人間も少ないと思います(笑)。普通にテンパっても小さいので、舞台仕様で大きくテンパる部分はあるんですけど、兵動さんも吉弥さんもニュートラルなお芝居をされている中、僕1人がやりすぎると浮いちゃうので、そのあんばいが難しいです。エンターテインメント色が強い作品ならもっとやってもいいのかもしれないですけど、今回は日常を描いた作品なので。芝居感というか、お2人と同じ軸に生きている人間でありたいと思っています。変な格好もしますけど(笑)、普通に会話できる時は普通に会話しようと心掛けています。

◆9月12、15日には朗読劇「あの空を。」に出演し、11月には「ワールドトリガー the Stage」への出演が控えています。ストレートプレー、朗読劇、2.5次元演劇、演じ方の違いはありますか?

僕、それがないんですよ。役者仲間の中には違うって言う人もいるんですけど、僕は一緒だと思っています。どんなジャンルでも、お芝居をやる軸は一緒だなって。2.5次元の場合は縛りもあるので「元のキャラクターを逸脱しないように演じよう」というのはありますけど、ストレートプレーであっても、そのキャラクター性…例えば性格であったりというものはあるので、そこを逸脱しちゃいけないっていうのは同じですよね。やることは一緒だけど、ちょっと幅が違うだけ。風貌は全然違いますけどね。

◆お芝居を膨らませる幅、ということですか?

そうですね。2.5次元の場合、その幅は少ないと思います。2.5次元のキャラクターには原作という“正解”があるので、それを踏まえた上で、その人間がどんなふうに生きているのかな、ということを考えます。原作に書かれていることだけをすると、ただのモノマネみたいになっちゃうので。そこのつなぎを自分で埋めていかないといけない。正解がある分、難しいですね。

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◆2.5次元演劇ならではの楽しさや工夫はありますか?

例えば原作の漫画で、せりふは書かれてないけど、背景としてしゃべっているというような描写をキャッチして、演じたりします。ほかにも関係位置、例えば先輩後輩だったらこういうふうにするだろうな、というようなことを意識して演じるのは楽しいですね。原作ファンのお客さんも気づいていなかったことを演劇で表現できたらいいなと思っています。ドラマや映画ならそんなことはしなくていいと思うんですけど、演劇はずっと舞台に出ていますし。誰かが何かを話していたら、その裏で絶対に何か動きがある。そこが演劇の楽しいところです。舞台に出ている限り、せりふがなくても見られ続けているわけですから。

◆多方面で活躍する中、精神的に大変なことはありますか?

僕、役を引きずることもないんです。例えばですけど、周りの仲間がたくさん死んでしまう芝居で舞台上でものすごく落ちた後でも、舞台袖に戻って「はい、終わりました」ってなったら、すぐにケロッとして弁当を食べられるんです(笑)。心が疲れたっていう疲労感はありますけど、裏でもその空気のままというのはないです。逆に、役を引っぱる人はすごいなと思います。心も役のままでずっといる人、その役を演じる時だけしかそれをしない人、演技論でもいろいろあるじゃないですか。昔は役を引きずる方がいいとされていたと思うんですけど、最近は人それぞれですよね。実は僕、自分の素と役、プライベートと仕事がこんなに分離していていいのかなと思った時期もあったんですけど、最近は“まぁこれでいいのかな”って。引っぱりすぎたら、大変ですよね。

◆原作漫画がある作品の場合、まずは読み込むことから始めるんですか?

お話を頂いた時点でまず原作を読みます。作品を知るきっかけにもなるので、できるだけ全巻読みます。出演が決まってからは時間があれば何度か読んだり、漫画原作の2.5次元作品なら稽古場に絶対原作が置いてあるので、空き時間に読んで膨らませていきます。

◆アニメ化されている作品の場合、演じるキャラクターの声やしゃべり方は意識しますか?

アニメの声に近づけた方がいいというお客さんもいると思うんですけど、アニメは漫画の原作を映像化したものなので参考にはしますが、全部マネするというのはちょっとやりづらい部分はありますよね。声優さんのマネをするというより、僕らも原作を元にちゃんとイチから作っていきたいなと思います。それも現場によって違いはありますが。できるだけマネしてっていう現場もあるし、全然マネしなくていいっていう現場もあって。そこは現場に合わせます。

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◆「ワールドトリガー the Stage」は人気漫画の初舞台化ということで、SNSでも話題ですよね。

配役決定など、新たな発表があるたびに毎回トレンドになってますよね。僕が太刀川慶役を演じるという発表が出た時もトレンド入りしていたみたいで。ありがたいですね。

◆原作は、異世界からの侵略者“近界民(ネイバー)”と界境防衛機関“ボーダー”との戦いを描いたSFアクション漫画。近藤さんは、ボーダー本部所属A級1位太刀川隊隊長・太刀川慶を演じられます。どんなところにキャラクターの魅力を感じますか?

取りあえず強い! ランキングはポイント制なんですけど、1人だけズバ抜けて強い。でも普段は抜けたところがあって、そのギャップが面白いですよね。戦闘時と私生活のギャップを演じ分けたら、演劇としても面白いなと思っています。“ワールドトリガー”という同じ武器で戦うんですけど、その役だけの技みたいなものもあるので、動きでも違いを見せられたらいいなと思っています。今作はパフォーマンスが多い作品で、戦闘シーンもパフォーマンスで見せる部分が出てくると思うので、ダンスをしている知り合いに連絡して、戦闘スタイルの表現法を相談したりしています。それが採用されるかどうかは分かりませんが、現場では自分の意志は持っておきたいですし、演出の中屋敷(法仁)さんはそれぞれの意見を尊重してくれる方なので。

◆では今作は、演技を“膨らませる余地”がある作品になりそうですね。

戦闘シーンをどのように表現するかは未定なんですけど、舞台ならではの良さを出せたらいいなと思っています。以前、「ハイキュー!!」というバレーボールをテーマにした作品で、単にバレーボールをするだけではなく、パフォーマンスで見せるという経験をしました。そこで自分自身の表現の幅が広がったと思うので、今作でもまた違う表現を見つけたいと思います。今回は殺陣のように敵を斬りまくるという作品ではなく、チーム戦なんですよね。戦闘時の人数も少なくて、4対4、3対3とか。1人だけ強くてもダメで、3人が力を合わせて戦う。僕、そこがこの話の好きなところなんですよ。演劇では表現しやすい要素ですし、深みも出てくるんじゃないかと。そういう部分をしっかり表現したいと思うんですけど、何と言っても1回目なので、まずはみんな手探りです。

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◆そして、9月24日には1st写真集「軌跡」が発売になります。

僕の過去から未来にかけての道筋が見えたらいいなと思って作りました。僕のゆかりの場所を巡らせてもらいました。芸能界に足を踏み入れた、初めてオーディションを受けたのが高校生だったので、母校を出発点にして。大阪城にも行きましたし、オーディションの時に稽古していたカンテレ横の扇町公園でも撮影しました。道筋の「軌跡」という意味ですけど、今、僕がここにいるのは奇跡だなとも思うので、「奇跡」とも捉えたいということで、「軌跡」というタイトルに自分で決めました。

◆近藤さんの軌跡をたどる写真集、ナチュラルな表情が見られそうですね。

「“飾ってない僕”が見られます」みたいな宣伝文句なんですが、僕的にはめっちゃ飾りました(笑)。もちろん飾ってない写真もあると思うんですけど、飾った写真もいっぱいあります。それから、結構脱がされました(笑)。最終日、4か所ぐらい回ったんですけど、全部脱いでます(笑)。「じゃあ、それ脱いでいこうか」ってカメラマンさんに言われて。ナチュラルからセクシーまでいろんな僕が見られます、ということで、お願いします!

◆それでは最後に、近藤さんが今“飢えているもの”は何ですか?

ベタな答えですけど会食ですね。もういつ以来行ってないだろう? 昔は大人数で行動するのが好きで、人混みも好きだったのに、今はめっちゃ苦手。少人数の会食がいいですね。いざコロナ禍になって、「実は思ってるより友達少ない?」って状態になってます(笑)。

PROFILE

●こんどう・しょうり…1994年4月12日生まれ。大阪府出身。B型。「はい!丸尾不動産です。~本日、家で再会します~」(10/3(日)兵庫・アクリエひめじ中ホール)、「ワールドトリガー the Stage」(11/19(金)~11/28(日)東京・品川プリンスホテル ステラボール、12/2(木)~5(日)大阪・サンケイホールブリーゼ)に出演。9/24(金)に1st写真集「軌跡」を発売。

●photo/松井ヒロシ text/青柳直子 styling/TOCO hair&make/花岡恵 衣装協力/PALETTE art alive

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