中村勘九郎&中村七之助インタビュー「今回は勉強や予習なしで楽しめる演目ばかり。いろんな歌舞伎の世界を楽しんでください」「赤坂大歌舞伎」

特集・インタビュー
2021年11月11日

中村勘九郎&中村七之助「赤坂大歌舞伎」インタビュー

◆そして今回は「越後獅子」(えちごじし)と「宵赤坂俄廓景色」(よいのあかさかにわかのさとげしき)も上演されます。「越後獅子」は勘九郎さんのご長男である勘太郎さんが赤坂大歌舞伎初登場となります。

勘九郎:父(勘三郎)はコクーン歌舞伎や平成中村座、それにこの赤坂大歌舞伎といろんな舞台を私たちに残してくれました。その空間を息子にも体験してほしいなと思ったんです。子供心にどこまで覚えているかは分かりませんが、舞台に立った記憶や劇場で感じた空気が、その後の人生にあるかないかでは大きく違ってくると思いますから。それに、「越後獅子」は舞踊ですが、10歳で1人で踊るなんてなかなか出来ないことですし、体力的にも大変な舞台ですので、本当にいい経験になるのではと思っております。

◆勘九郎さん自身は、初めて踊った時のことは覚えていらっしゃいますか?

勘九郎:もちろんです。9歳だったんじゃないかな。八月納涼大歌舞伎で踊らせていただきました。歌舞伎座という広い舞台でしたが、とても楽しかったのを覚えています。

◆そして、もうひと作品が「宵赤坂俄廓景色」(よいのあかさかにわかのさとげしき)。タイトルに赤坂の言葉が入っていますね。

七之助:「俄獅子」という踊りがございまして、それをベースにした作品になります。また、(TBS)赤坂ACTシアターがまもなく一区切りで改修に入るということもありますので、これまでの恩返しも兼ねて、赤坂の街とこの劇場に華やかな踊りをお届けしたいと思っております。兄の次男の中村長三郎も出ますので、みんなで勢揃いをして、大団円で終わりたいですね。

勘九郎:この赤坂の地で開催される「山王祭」は日本三大祭の1つですし、赤坂芸者衆の皆さんには私たちが赤坂大歌舞伎をやるたびに、本当によくしていただきました。ですので、最後に芸者が登場するこの演目は、まさしく赤坂大歌舞伎を象徴する踊りになるのではないかと思っております。

◆最後に、読者の中には歌舞伎に格式の高さを感じてなかなか劇場に足を運べない読者もいらっしゃるかと思います。そうした方々に向けて赤坂大歌舞伎の楽しみ方などについても教えていただけますか。

七之助:赤坂大歌舞伎では、いつも歌舞伎座とほぼ同じ演出のものをお見せしています。でも、2013年に兄と演った『怪談乳房榎』もそうですが、不思議なことにお客様の反応が全然違うんですね。これが面白くて、赤坂はとっても盛り上がる。もしかすると、赤坂は街の雰囲気からもらう賑やかな印象のまま芝居を見られるので、そうした変化の違いが観る方の心に生まれるのかもしれません。

勘九郎:それはあるかもしれないね。本当に演出は変えていないんですよ。それは父の遺志でもあって。赤坂大歌舞伎でも、平成中村座でも、父は「お客さんの拍手などに惑わされて、分かりやすい演出に変えるようなことは絶対にしてはいけない」と言い続けてきました。私たちもそれを肝に銘じてやっているのですが、それなのに見てくださる方々からは、「(TBS)赤坂ACTシアターだから、分かりやすい演出やせりふにしてくださったんですね」と言われるんです。

七之助:そうした感想は本当に多いですね。

勘九郎:それが我々役者にとっても、ものすごく面白い経験で。もちろん今回の演目も、内容、せりふ、振付を変えることなくお届けしますので、ぜひ気軽に観られるこの機会に生の歌舞伎の世界を感じていただければと思います。

七之助:特に今回の演目は、どれ1つとして予習をしてくる必要はありませんからね(笑)。何も勉強せず、ただ席に座っていただければ楽しめるものばかりなので、初めてご覧になる方にはすごくオススメです。

PROFILE

中村勘九郎&中村七之助「赤坂大歌舞伎」インタビュー

中村勘九郎
●なかむら・かんくろう…10月31日生まれ。東京都出身。1986年に「盛綱陣屋」小三郎役で初御目見得。翌年に「門出二人桃太郎」兄の桃太郎役で二代目中村勘太郎を名乗り初舞台。2012年、父・十八代目中村勘三郎の前名である中村勘九郎を六代目として襲名。歌舞伎以外にも、舞台「おくりびと」「真田十勇士」や、映画「清須会議」「銀魂」、NHK 大河 ドラマ『新選組!』『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』などに出演。

中村勘九郎&中村七之助「赤坂大歌舞伎」インタビュー

中村七之助
●なかむら・しちのすけ…5月18日生まれ。東京都出身。1986年、「檻」祭りの子勘吉役で初御目見得、87年「門出二人桃太郎」弟の桃太郎役で二代目中村七之助を名乗り初舞台。女方としての近年の活躍は目覚ましく、歌舞伎界を担う女方の1人。歌舞伎以外にも映画「ラストサムライ」「真夜中の弥次さん喜多さん」、舞台「ETERNAL CHIKAMATSU」などに出演。

作品情報

「赤坂大歌舞伎」

TBS開局70周年記念「赤坂大歌舞伎」
2021年11月11日(木)~11月26日(金) 東京・TBS赤坂ACTシアター

(STAFF&CAST)
一、
「廓噺山名屋浦里」
出演:中村勘九郎、中村七之助、中村虎之介、中村鶴松、片岡亀蔵、中村扇雀
原作:くまざわあかね
脚本:小佐田定雄
演出:今井豊茂
美術:中嶋正留

二、
「越後獅子」長唄囃子連中
出演:中村勘太郎
『宵赤坂俄廓景色』長唄囃子連中
出演:中村勘九郎、中村七之助 、中村虎之介、中村長三郎、中村鶴松、片岡亀蔵、中村扇雀

(STORY)
時は江戸時代。とある地方藩の江戸留守居役である酒井宗十郎は堅物として知られ、まわりからやや煙たがられていた。ある時、次の寄合で「江戸の妻」(馴染みの女)を自慢し合おうという話題で盛り上がり、宗十郎はそれを自分に恥をかかせるためのものだと悟る。そこで彼は、かつて偶然遭遇した吉原一と名高い遊女・浦里に会わせてもらおうと、店に頼み込む。器量も金もない宗十郎は店の主人から相手にされなかったのだが、その話をふすまの奥で聞いていた浦里がある行動に出るのだった…。

公式サイト:https://www.tbs.co.jp/act/event/ookabuki2021

 

text/倉田モトキ

  1. 1
  2. 2