井浦新インタビュー「加瀬に関しては芝居してないです。ドキュメンタリーです(笑)」『最愛』

特集・インタビュー
2021年12月09日

『最愛』井浦新インタビュー

◆では、吉高さんについてはいかがでしょうか?

これも、本当は人様には言いたくないんですけど…(笑)。今回新井さんも、現場にいるさまざまなスタッフも、吉高さんのことを「天才だ!」って言うんですよね。僕はどちらかというと彼女はそんな簡単に“天才”ってひと言で括れるタイプじゃないと思うんです。彼女は不器用だと思ってますし、不器用だからこそ努力を惜しまない。でも、その積んできた努力やキャリアを生かしたとしても、根が不器用ですから。そんな簡単に何でもかんでもうまくやってのけられるタイプじゃない。ただ、彼女は力では芝居しなくて。その場に流れてる空気感、彼女自身の体の中のリズムというものを最大限に自然に生かすことにすごく長けた人なんだと。お芝居が自然に見えるのは、自然なお芝居をしてるんじゃなくて、どんな時でも肩の力を抜いているから。そして、役と本人を同化させることができるタイプの女優さんだと思うんです。それって誰でもできることでもないですし、天才だからできるわけでもないと僕は思ってます。彼女が19歳で、僕もまだ31歳か32歳ぐらいで、まだ人間としてとても未熟な時期に会っていて。そんな未熟者同士だった2人が、10数年経って共演して。実際そういう会話はしてないですけど、お互い“まだまだだね”というのが感じ取れてしまったりするのが気恥ずかしかったです。でもそういう気恥ずかしさとか、出会ってから10数年経ってる背景を、梨央と加瀬にも当てはめられて。だから彼女のことを自然に見つめていられるし、芝居のスイッチを入れた状態でも向き合っていられる。僕にとって吉高さんは稀有な存在だなって思います。今回、梨央と加瀬というそれぞれの役柄や関係性をどこまで作り上げていけるかなっていうのは、やっぱり楽しみでしたし。芝居上のみで作っていくことは正直簡単ですけど、そういうお互いの関係性や背景や気恥ずかしさっていうものを織り交ぜながら役を作れるっていうのは、なかなかできないことでもあるので。そういう中で作っていく相手としては本当にありがたいなと思ってますね。吉高さんにそんな“ありがたいな”なんて思ったことなかったのに(笑)、今回自分の中でもビックリするくらい、彼女に対しての尊敬の念っていうものが大きく膨れ上がりましたし。本当に久しぶりにご一緒することによって、彼女が吉高由里子として背負ってきたものを感じました。それが僕の中で、彼女への敬意として広がっていきましたね。…というのを、終わってからサッと言って帰ろうかなと思ってたんですけど、皆さんに言ってしまいました(笑)。

◆最後に、第9話、第10話を楽しみにしている、視聴者の方へメッセージを!

8話の最後に、加瀬に犯人フラグが立ってしまったんですけど(笑)。といってもまだ9話、10話とありますから。そう簡単に犯人フラグを立たせてたまるかと思っています(笑)。同時に梓社長も怪しくなってきてますし、大輝の幼なじみの藤井(岡山天音)も、まぁいい面構えで(笑)。自ら犯人に立候補していってるような雰囲気を醸し出してますし。でも、僕の中では正直“大ちゃん犯人説”はちょっとあるんじゃないかなっていうのも、まだ皆さんに忘れないでほしいと思っていて。ああいう不器用でみんなにキュンとされてるやつが、実は一番悪いやつなんじゃないかっていうふうにちょっと思ってるところもあるんです。まだ2話あるので、犯人捜しを楽しんでいただきたいなと思います。あとやっぱりこの『最愛』の一番の醍醐味は、犯人捜しを凌駕してくるそれぞれのヒューマンドラマだと思います。全ての人たちが大切に抱えている“最愛”のぶつかり合いっていうのが、一番の魅力でもあるので。8話まで積み重ねてきたそれぞれの“最愛”の大きさが、今後もどういうふうにぶつかり合って、交ざり合っていくのか。どんどん開いていったり、閉じていく人もいるかもしれないですし。その人間ドラマは、残りの2話にかけてまだまだここからさらに加速していくと思うので、犯人捜し以上にその人物たちの“最愛”の物語を楽しんでいただけるのではないかと思います。

PROFILE

『最愛』井浦新インタビュー

井浦新
●いうら・あらた…1974年9月15日生まれ。東京都出身。A型。最近の主な出演作は『にじいろカルテ』『あのときキスしておけば』、映画「神在月のこども」「恋する寄生虫」など。映画「ニワトリ☆フェニックス」(2022年春予定)、「こちらあみ子」(2022年予定)の公開が控える。

番組情報

金曜ドラマ『最愛』
TBS系
毎週金曜 後10・00~10・54

『最愛』井浦新インタビュー

<第9話(12月10日放送)あらすじ>
昭(酒向芳)の遺体と一緒に池から発見されたウェルネスホームのペンは、梓(薬師丸ひろ子)が会社設立の記念品として作った特注品だった。持っているのは梨央(吉高由里子)、加瀬(井浦新)、後藤(及川光博)、政信(奥野瑛太)、梓の5人。警察はその中の誰かが、事件の時に落とした可能性があるとにらんでいた。
同じころ、富山県警の藤井(岡山天音)が、捜査一課からはずれた大輝(松下洸平)を訪ねて来る。いつものように軽口をたたくが、帰り際、藤井が何かを言いかけてやめたことが大輝はひっかかる。
そんな中、政信が社長を務める真田ビジネスサービスの30周年記念パーティーの翌日、真田ウェルネスの寄付金詐欺疑惑と、しおり(田中みな実)の不審死に関する週刊誌のスクープ記事が出て…。

©TBS

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