松本まりか「過去が報われた」モトーラ世理奈「年齢は関係ない」「雨に叫べば」の現場で生まれた友情と仕事への愛情

特集・インタビュー
2021年12月18日

松本まりか&モトーラ世理奈『雨に叫べば』インタビュー

「ミッドナイトスワン」「全裸監督」の内田英治監督が、80年代の映画製作現場の裏側を描いた「雨に叫べば」がAmazonプライムビデオにて独占配信中。男尊女卑とパワハラの匂いが残る時代、映画現場で働く監督と撮影助手を演じた松本まりかさんとモトーラ世理奈さん。2人のトークは撮影中のエピソードから、次第に相思相愛話に発展して…。

 

◆80年代の映画撮影現場で働く女性の役ですが、現場スタッフの皆さんから参考になることはありましたか?

松本:内田英治監督が脚本を書いているので、私が演じた林花子という監督は、内田さんの実体験が多く反映されているんだろうなと思いました。内田さんはあまり気持ちを顔に出さない方なので、“撮影中、こんなことを思っていたんだ”とか。あと、監督が「カット!」って言うと、現場にいる人はみんな監督のほうを向くんですね。

モトーラ:みんなの目線が監督に集まりますよね。

松本:「どうなの? どっちなの?」ってみんなが思う中、「OK」か「もう1回お願いします」と言うんだけど、花子を演じてみて「もう1回お願いします」って言うのは、こんなに胃がキリキリするんだなと(笑)。

モトーラ:自分の作品を作っているけど、みんなの気持ちも背負っていますからね。でもだからこそ、気持ちを強く持っていないといけない。監督はそういう部分でも戦っているんだなって感じました。

松本まりか&モトーラ世理奈『雨に叫べば』インタビュー

◆モトーラさんは撮影助手役でしたが、どんな役作りをされましたか?

モトーラ:フィルムで映画を撮っているという設定だったので、撮影前に東映の撮影所でカメラマンの方からフィルムカメラの使い方などを教えていただきました。私自身はフィルムカメラにロマンを感じるけど、フィルム1ロールで10数分しか撮れないって聞いて、当時の撮影は大変だったんだろうなと思いましたね。

松本:それ以上は撮れないの?

モトーラ:撮れないらしいです。だからカメラを回している間のテープの重みを感じてました。

松本まりか&モトーラ世理奈『雨に叫べば』インタビュー

◆お2人は普段、撮影現場には出演者として参加しているわけですが、製作側を演じるのはどんな感覚でしたか?

松本:スタッフさんや俳優さんたちを客観的に見るのがすごく面白かったです。個性的な俳優ばかりで、マネージャーとのやり取りなんかも、だいぶデフォルメして描かれていて。普段自分たちのやっていることが、とてもユーモラスに見えました。怒号が飛ぶし、パワハラもあるしと、ひどいことがたくさん描かれていて。コンプライアンスギリギリの現場(笑)。

◆ホント、すごい現場でしたよね。

松本:でもなんか愛おしいんですよね。映画という虚構の世界で、私が演じる花子は意味不明なテイクを何回も重ねるし(笑)。「湯気が見えないから」っていう、他人には分からない謎のこだわりで全員を動かす。でも私たちって、そういうものを作ってるんだなと思うと、何だか楽しくて。美術さん、照明さん、音声さんのやっていることを全て目の前に出されて、スタッフさんに対して、そして自分が普段やっている仕事に対しても、もっと愛情を持てるようになった気がします。

松本まりか&モトーラ世理奈『雨に叫べば』インタビュー

◆現実と映画の世界が混同するような感覚はありませんでした?

モトーラ:私は、ちょっとありました。(出番を)待っている時に椅子に座っていると、“私、撮影助手だから座ってたらダメなんじゃないか”って思ったり(笑)。でもずっと現場にいたくて、自分の出番がないシーンでもスタジオの端っこで撮影を見ているのが楽しくて。こういう瞬間が好きだなって思いました。

◆「カット!」「OK!」の声を聞いて、「どっち!?」ってなったりはしませんでした?

松本:映画の中では、その声は私が掛けるので(笑)。私じゃない時は本番だって分かるんですよ。世理奈ちゃんはどうだった?

モトーラ:大勢で撮影するシーンでは、私は何回か分からなくなりました。「え、あれ…どっち?」って(笑)。

松本:そうなんだ(笑)。

松本まりか&モトーラ世理奈『雨に叫べば』インタビュー

◆今回、お互い共演してみていかがでしたか?

松本:あるドラマで制服を着て歩いている世理奈ちゃんを見て、息を飲むような存在感と、誰もマネできないような唯一無二感があるなと思っていたんです。そしたら今回、世理奈ちゃんが出演することを知って、“何ていう素晴らしいキャスティングなの!“と思いました。実際にお会いしてみても、本当に素敵な方で。ただそこにいるだけで素敵だし、ピュアで美しくて…。

モトーラ:(照笑)。

◆となると、撮影中も楽しかった?

松本:劇中では唯一心を通わせていく2人なので、一緒に撮影していてとても楽しかったです。2人でドーナツの穴をのぞくシーンもあって、世理奈ちゃんだったから、キュートなシーンになったんじゃないかな。

モトーラ:実は、まりかさんと2人のシーンはもっとたくさん撮ったんですよね。私はお会いする前、すごく緊張していたんですが、2人のシーンを撮っていくうちに、だんだん距離が縮まっていった気がしました。まりかさんが私に話しかけてきてくれたことも、すごくうれしかったです。

松本:そうそう。そこで縮まっていったんだよね。

モトーラ:そこからのドーナツのシーンだったんです。その過程で2人が繋がったからこそ、スタジオを見下ろしながらドーナツの穴を覗くシーンには、ウソがなかった気がします。

松本:混沌とした撮影現場での世理奈ちゃんの存在は、花子にとってのよしえのようで…彼女がいてくれるだけで、心が洗われました。

松本まりか&モトーラ世理奈『雨に叫べば』インタビュー

◆確かに、役柄的にも松本さんとモトーラさんの間に友情が芽生えるというのは、意外ではあります。

松本:2人の年齢差を気にせず、世理奈ちゃんと私が友だち役で成立すると思った内田さんの感性が素敵だなと。役って、見た目より実年齢でキャスティングされることのほうが多いので、世理奈ちゃんと私を友だちにしようという発想は、なかなか出てこないんですよ。常識にとらわれない内田さんのおかげで、世理奈ちゃんとの友情関係が作れたのは、私にとってはうれしいかったですね。

モトーラ:どんな仕事の世界でも言えることですけど、同じ現場で戦っているもの同士には年齢って関係ないんですよね。一緒に作品を作っているからこそ感じ合えたもの…そこで繋がっているからこそ、出てくる感情があると思います。

松本まりか&モトーラ世理奈『雨に叫べば』インタビュー

◆距離が縮まっていくシーンで、どんな会話をしたか覚えてますか?

松本:意外だったんですけど、世理奈ちゃんが、私のインスタを見ているって話をしてくれました。その時に、「会いたかったんです」って言ってくれて。世理奈ちゃんにとって、私は別の世界の人なんだろうな思っていたので、そんな風に気になってくれていたんだと本当にうれしかったですよね。

モトーラ:私のほうこそです。まりかさんが私のことを知ってくださっているんだっていう驚きと、うれしさがありました。私がこんなこと言うのはなんですけど…まりかさんのことは、1人の女性としてすごく気になっていて。まりかさんが今までどんなことをして、どんなことを聞いて、感じてきたんだろうって、気になるんです(笑)。

松本:世理奈ちゃんが私の今までのことに興味をもってくれていたなんてうれしいですね。私、取材を受けると今までのことを聞かれることが多いんですよ。自分の過去なんて何とも思っていなかったから、最初はそれがとっても不思議で。世理奈ちゃんみたいな若い方にとって、この20年が、何か影響があるのであれば、すごくうれしいですね。今日も世理奈ちゃんに気になるって言ってもらえて、また自分の過去が報われた気がしました。といっても、ただ自分の道を、私なりに生きてきただけなんですけどね(笑)。

PROFILE

松本まりか&モトーラ世理奈『雨に叫べば』インタビュー

松本まりか
●まつもと・まりか…1984年9月12日生まれ、東京都出身。2000年にドラマ『六番目の小夜子』で女優デビュー。2018年ドラマ『ホリデイラブ』の井筒里奈役で注目を集める。最近の主演ドラマに『向こうの果て』『それでも愛を誓いますか』『東京、愛だの、恋だの』がある。

松本まりか&モトーラ世理奈『雨に叫べば』インタビュー

モトーラ世理奈
●もとーら・せりな…1998年10月9日生まれ。東京都出身。雑誌『装苑』モデル。2018年に公開された映画「少女邂逅」で本格的に演技に挑戦、その後、NHK『透明なゆりかご』で難役を演じ注目される。最近の出演作に、映画「おいしい家族」「ブラック校則」「風の電話」、ドラマ『ソロモンの偽証』などがある。映画「ホリック xxxHOLiC」が2022年4月29日に公開される。

作品情報

『雨に叫べば』 ©︎2021東映・東映ビデオ
©︎2021東映・東映ビデオ

『雨に叫べば』
2021年12月16日(木)よりAmazonプライムビデオにて独占オンライン公開中

(STAFF&CAST)
監督・脚本:内田英治
出演:松本まりか
大山真絵子 モトーラ世理奈 渋川清彦
矢柴俊博 内田慈 石川瑠華 佐々木みゆ ふせえり 森下能幸
菅原大吉 須賀健太/濱田 岳/矢本悠馬 相島一之
本田博太郎 大和田伸也 高橋和也
主題歌:「雨zing Blues」(作詞:伊東妙子 作曲:T字路s)
製作:東映 東映ビデオ

(STORY)
まだ男尊女卑やパワハラの匂いが残る1988年。新人監督・花子(松本まりか)は、意味不明の理由でテイクを重ね、ベテランスタッフたちからいじめの洗礼を受ける。控え室では前貼りをいやがるアイドル俳優と落ち目のベテラン女優の間にトラブルが発生。ようやく撮り終えたシーンも、映画のレイティングに引っかかるということで欠番に。次第に追い込まれていく花子は、プロデューサーから「監督を交代します」と言われてしまう。果たして、彼女は自分が理想とする映画を撮ることができるのか…?

公式サイト:https://www.toei-video.co.jp/ameni

公式Twitter:@ameni_sakebeba

©︎2021東映・東映ビデオ

 

photo/河野英喜(エントランス) text/佐久間裕子 hair&make/ミック(松本)、斎藤紅葉(モトーラ) styling/秋山瞳(松本)、中本ひろみ(モトーラ) 衣装協力/VOTE MAKE NEW CLOTHE、DRESSLAVE、Cepica、Folk/N、ReFaire

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2021年12月25日(土)23:59