M-1決勝直前!錦鯉インタビュー「“生きててよかった!”と思える瞬間なんて、いつくるか分からない」

特集・インタビュー
2021年12月18日

昨年、そして今年と2年連続で『M-1グランプリ』の決勝進出を果たした錦鯉。史上最年長ファイナリストとして注目を集める彼らが、初の自叙伝『くすぶり中年の逆襲』を刊行。自分たちの半生を余すことなく、赤裸々に、そして爆笑の掛け合いで綴った本作。「本を出すのは夢だった」と語る彼らに、著書に込めた思い、そして開催を間近に控えるM-1決勝に懸ける思いを直撃した!

 

◆先月、初の自叙伝『くすぶり中年の逆襲』を上梓されました。まずは、出版に至った経緯を教えていただけますか?

長谷川雅紀:ボクが昨年の『M-1グランプリ2020』の記者会見で、「人生大逆転みたいな本を出したい」と話したんです。そしたらその後、新潮社さんから「本を出しませんか?」と言っていただいて。め~っちゃくちゃうれしかったですね! なんせ、本やDVDが店頭に並ぶというのは、デビューしたころからの憧れだったんです。本当に夢がかなって、言霊というのはあるんだなと思いました。本気でやりたいと思っていることは、ちゃんと口にしたほうがいいんですね。

渡辺隆:僕はまさかこんなにちゃんとした本になるとは思いませんでした(笑)。ですから、出来上がった時はびっくりしました。

長谷川:どういうのをイメージしてたの?

渡辺:ホッチキスで止めてあるような、冊子みたいなものかなって思ってた(笑)。そしたら、ちゃんと本の形をしていて。当たり前だけど、名前もちゃんと入っていて(笑)、うれしかったですね。

◆拝読しましたが、お2人の半生が軽快な掛け合いで展開されていくので、ずっと漫才を見ているかのように一気に読めました。

渡辺:雅紀さんでも読めたんで、すごく読みやすいと思いますよ。雅紀さんはこれまで、文字だけの本を5冊しか読んだことがないんです。これが6冊目なんです。

長谷川:そうなんです。人に勧められて読んだ小説を5冊だけ。

◆ちなみにその5冊というのは?

長谷川:『東京タワー』(リリー・フランキー)と『夜のピクニック』(恩田陸)と『電車男』(中野独人)と『告白』(湊かなえ)。それと、『ルビンの壺が割れた』(宿野かほる)。『東京タワー』は夜中に一人でファミレスで読んで泣きましたね。恥ずかしかったです(笑)。

◆渡辺さんは普段、本を読まれるんですか?

渡辺:僕もあまり読むほうではないですね。でも、松本人志さんの本は全部読んでます。やっぱり、僕にとってのダウンタウンさんはヒーローですから。なので、最近になって憧れの人と共演できるようになったというのはすごく感慨深いです。しかも、この年齢なのでなおさらです。初めてお会いした時は緊張もありましたけど、“本当にいるんだ!”っていう気持ちになりましたね。あまりにも雲の上の人過ぎて、実在しないんじゃないかと思ってましたから。

長谷川:ははははは! でも、分かるなぁ。

渡辺:ビートたけしさんもそうでした。“あ、本当にいるんだ!”って、感動しました。雅紀さんはそういう人いる?

長谷川:ボクはこの本にも書いているけど、とんねるずの石橋貴明さん。青春真っただ中の時に大好きだった方ですから。昨年、初めて共演させてもらった時に番組終わりに楽屋にあいさつに行って、思いの丈を全部語ったの。学生時代にラジオを聞いていたこととか、よく見ていたテレビ番組とか。そうしたら、貴明さんのほうもボクの芸歴や年齢を知ってくださっていて。「ここからの一発逆転満塁ホームランもあるからね!」と言っていただいて。

渡辺:それはうれしい言葉だね。

長谷川:それに、(明石家)さんまさんとお会いできたのもうれしかったなぁ。その時も、「子供のころにいつも『オレたちひょうきん族』を見てました」とお伝えして。初めて見たのが小学生の時だから、40年たってまさかお会いできるとは思ってもみなかったので感動しました。

◆話を『くすぶり中年の逆襲』に戻すと、お2人は“遅咲き芸人”として注目されていますが、この本のまえがきに長谷川さんが書かれていた、「やめる勇気がなかっただけ」という言葉がものすごく刺さりました。

長谷川:そうですか。ありがとうございます! 本当に正直な気持ちなんですよね。20代で芸人を目指して、30歳近くで上京して、でも全く売れなくて。とはいえ、芸人をやめたところでボクはなんの資格も持ってないし、手に職もありませんから。仮に就職しても、ボクなんかは出世も望めないし。それならアルバイトをしながら芸人を続けたほうが、0.000001%くらいは可能性があるかもしれないなって。まぁ、もしかしたら、それも芸人をやめられなかった言い訳なのかもしれませんけどね。

渡辺:これで家族がいたら、また違ったんだろうけどね。

長谷川:そうだね。守らなくちゃいけないものがあるとね。

渡辺:その点はよかったね、我々は独身で。モテなくて本当によかった(笑)。

◆渡辺さんも同じような思いだったのでしょうか?

渡辺:僕はやめる勇気がなかったというか、芸人を目指したころから、“この人生、別にどうなってもいいや”って感じで生き始めていたんですよ(笑)。といっても、自暴自棄になっていたわけでもないし、“芸人人生に賭けてやるぞ”みたいな重さがあったわけでもないんですけどね。本当に何も考えてなかったし、どうなってもいいやって思ってて。そう思えたらなんかニヤニヤしてきちゃって、“あ〜、これでいいかな”って(笑)。

長谷川:ね。ダメなコンビでしょ?(笑)

渡辺:かといって、注目してもらえるようになった今、“やっぱり続けることは大事だよ”とか、“諦めずに頑張れよ”っていう気もさらさらないんですけど(笑)。

長谷川:この本を読んでいただければ分かるのですが、ボクらは本当に計画とか計算なしでダラダラとやってきて、今こういう状況になっているだけだもんね(笑)。ただ、そんなボクも、去年49歳になって初めてM-1の決勝に出ることができました。その時、生きててよかった!と思える瞬間なんて、いつくるか分からないなと思ったんです。もしかすると若いころに人生最高のタイミングがくるかもしれないし、ボクらみたいに40歳を過ぎてくるかもしれない。そう思うと、人生って面白いなって感じますね。

渡辺:こうやって自叙伝を出すことだって、想像もしてなかったしね。

◆お2人は昨年から今年にかけて一気にブレイクされましたが、環境の変化はありましたか?

渡辺:あまり変わらないですよ。もちろん、生活は楽になりましたけど。雅紀さんは10kgぐらい太ったんだっけ?

長谷川:うん。

渡辺:ただ、それまでがまともに食べられない人生だったので、ようやく人並みになっただけなんだけどね。

◆街で声を掛けられることも増えたのでは?

渡辺:僕は全くですよ(笑)。でも、雅紀さんはあるみたいですね。

長谷川:そうなんです。帽子をかぶって、マスクをしていても気づかれます。

渡辺:歩き方がバカなんですよ(笑)。ペンギンみたいな歩き方をしてるから目立っちゃう。

長谷川:あ、そう? それでバレちゃうんだ!? この前も工事現場の方に「あ、こんにちは!」って声を掛けられて。「俺も50歳なんだよ!」って言われて、「そうですか。お互い頑張りましょう」なんて会話をしてましたね。

渡辺:それ、最初に「こんにちは!」って言ったの雅紀さんなんじゃないの? 自分で気づいてないだけで。

長谷川:そんなわけない。向こうからだよ(笑)。そういえば、少し前にも駅に向かって歩いてる時に細い道から全然知らない人が寄ってきて、「いやぁ、見てますよ」って自然な感じで話しかけられたことがあった。「ありがとうございます」なんて言いながら、5分ぐらい駅まで話しながら歩いてて。

渡辺:えっ、そのまま一緒に!?

長谷川:一緒に。まるで待ち合わせでもしていたかのような感じで隣にきて話しかけてくるもんだから、びっくりしたよ(笑)。

◆(笑)。長谷川さんは親近感があって、話しかけやすいのかもしれませんね。

長谷川:それもあるんですかね。ある時は、カップ焼きそばを食べながら歩いてる2人組の中学生とすれ違ったことがあって。ふとボクに気づいたらしく、「あ、芸人!!」って言われて(笑)。

渡辺:それは相手にするとちょっと危険だな(笑)。

長谷川:でしょ。「焼きそば、食え!」って言われそうで(笑)。しかもでっかいサイズだったし。

渡辺:大きさは関係ないだろ(笑)。

◆では、まもなく開催される『M-1グランプリ2021』についてもお話を伺いたいと思います。まずは2年連続の決勝進出、おめでとうございます!

長谷川渡辺:ありがとうございます!

◆予選の手応えはいかがでしたか?

渡辺:準決勝はみんなウケてましたからね。正直、緊張しました。

長谷川:そうだったね。

渡辺:僕らも手応えはあったんです。でも、みんなもあったと思います。

長谷川:現場もいい感じであったまっていて、みんな面白くって。ほんと、どうなるか分からなかったなぁ。

◆昨年も予選を勝ち抜いた経験をしていることで、多少の心の余裕があったんでしょうか?

長谷川渡辺:(2人とも無言で首を振る)

渡辺:全然ないです。M-1に関しては、そうした慣れは全くないですね。だって、僕らよりも慣れている芸人たちが予選落ちしてるぐらいですから。だから、思いっきりやるだけでした。周りを見ても、明らかにみんな、ほかの現場で会う時とは目の色が違いますし。

長谷川:本気で獲りにいってるのが伝わってくるもんね。

渡辺:そうそう。人間の欲が一番出る大会なので(笑)。

◆(笑)。決勝でやるネタ選びに関してはどのような対策を練っていらっしゃるんですか?

渡辺:対策なんてできるわけがないです(笑)。当日の空気がどうなるのかなんて、それこそ自分たちの出番が来るまで分かりませんから。

出順やその時々の会場の空気でネタを変えたりは?

渡辺:ムリです、ムリです(笑)。僕らの対策は、考えて選んできたネタを思いっきりやる。これだけです。あとはどうなるか本当に分からない。昨年はパチンコのネタを決勝でやったんですが、バイきんぐの小峠(英二)さんに「なんであのネタをやったんだ!?」って普通に怒られて(笑)。本当に難しいですよ。

長谷川:ネタ選びに関していえば、東京ダイナマイトのハチミツ二郎さんが言ってたんです。「周りはよく、『もっといいネタあったじゃん』って言うけども、でも自分たちで考えて最終的に決めているんだから、それは決して間違いではないんだ」って。確かにそうで。いろんなことを言われるだろうなってことも分かった上で選んでますからね。振り返れば、もちろんたくさん反省はありますよ。けど昨年については、あの時点での選択肢はボクらにとって、あれしかなかったということなんですよね。

渡辺:うん。いろんな人に怒られましたけど(笑)、間違ったとは思ってないですね。

◆ちなみに、今年のネタはもう決めているんでしょうか?

渡辺:何本かは候補を決めてます。

長谷川:今年は二回戦、三回戦、準々決勝、準決勝と全部ネタを変えてるんです。それを踏まえた上で、決勝をどのネタにするかで悩んでいて。これからじっくり話し合って決めていきますので、放送を楽しみにしていてください!

PROFILE

錦鯉
●にしきごい…長谷川雅紀(1971730日生まれ。北海道出身/ボケ担当)と、渡辺隆(1978415日生まれ。東京都出身/ツッコミ担当)によって2012年に結成。202021年には『M-1グランプリ』で決勝進出をはたした。昨年からテレビ番組の出演数が急上昇し、ネクストブレイクのタレントとして注目を集めている。今年10月には初の単独ライブ『錦鯉独演会「こんにちわ」』を成功させた。

書籍情報

錦鯉・著
「くすぶり中年の逆襲」
発売中

価格:1430円(税込)

発行元:新潮社

 ●photo/干川 修 text/倉田モトキ

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2021年12月25日(土)23:59