馬場康夫監督が語る『潜水艦カッペリーニ号の冒険』の見どころ「今回の二宮君はナンバーワンじゃないかな」

1月3日（月）に、二宮和也さんが日本海軍軍人・速水洋平役を演じるドラマ『潜水艦カッペリーニ号の冒険』（フジテレビ系）が放送。第二次世界大戦中に運命的な出会いを果たす、厳格な日本海軍軍人と陽気なイタリア人の国境を超えた友情と恋を、史実に基づき描いた物語だ。

この度、そんな本作の監督を手掛けた馬場康夫さんにインタビュー。「めちゃめちゃ面白い」と惹きこまれ、映像化に向けて奔走し続けたというこの史実の魅力、本作における二宮さんや速水の妹・早季子役を演じた有村架純さんの魅力についてなど、より放送が楽しめるお話をお聞きました。

◆まず、この作品を制作しようと思ったきっかけを教えてください。

この作品は史実が元になっているんですが、初めてその史実を知った時にめちゃめちゃ面白いなと感じたのがきっかけでした。第二次世界大戦中、イタリアは優秀な潜水艦をいくつも持っていて、物資を運ぶのにその潜水艦を使ったそうです。潜水艦であれば海中を潜りながら移動できるから、敵側になかなかバレないだろうと。そうやって当時シンガポールにあった基地まで日本が求める物資を運んだのが“コマンダンテ・カッペリーニ号”なんです。

◆実際に存在していた潜水艦がモデルになっていたのですね。

はい。そのカッペリーニ号が海中で内密に、周囲との連絡も取れない中で移動している間に、本国で革命が起こり、味方だったはずの日本と敵対関係になってしまっていたんです。でも、潜水艦の中にいるイタリア人たちはそんなことはつゆ知らず、日本が必要としているものを命懸けで持って行くのだからきっと大歓迎されるんだろうと思っていただろうに、いざシンガポールに着いたら日本人から銃を突きつけられて、「え、なんで！？」ですよね。

◆まるで“浦島太郎”のようです。

結局、彼らは捕虜収容所に入れられるのですが、あの潜水艦を放っておくのはもったいないと「誰か動かせないか」と声を掛けると、3人のイタリア人が手を挙げた。そんな彼らが、カッペリーニ号を日本まで運んで来たんです。でも、そこで出会う二宮君演じる速水のような日本の超堅物な軍人たちと、“食べて歌って恋をして”を信条にするイタリア人って、もう真逆じゃないですか。ところが、いつしかそこに友情が芽生えていく、こんなに面白い要素が詰め込まれている史実は他にないんじゃないか、と思ったのが制作のきっかけですね。

◆速水役が二宮さんに決まった時はどのようなお気持ちでしたか？

速水役が二宮君に決まったと聞いた時、正直はじめは「ちょっとイメージと違うかも」と思ったこともあったんです。というのも、僕自身ドラマオタクで、二宮君が主演しているドラマは全部見てきているのですが、ちょっと甘くて柔らかいイメージを持っていて。でも、やっぱり彼はとんでもないですよ。堤（真一）さん演じる上官から速水が「ガチガチだな、お前」と言われるシーンがあるんですが、本当に誰が見てもその通りガチガチなんです。

◆まさに、速水を体現されていたと。

そうですね。そして、速水は今まで二宮君が演じてきたどのキャラクターにも似ていない気がします。例えば、僕が好きな作品である、『拝啓、父上様』の一平（二宮）なんかもちょっと頼りない感じの役ですよね。でも今回は、速水の部下が「あの上官の前で女のことなんて1分も考える暇ないから覚悟しとけ」というようなせりふをイタリア人たちに言うシーンがあるんですが、まさにその通り、鬼の形相を浮かべています（笑）。

◆二宮さんがイタリア語を話している予告映像も話題になりました。

外国語をペラペラ話せてカッコいいキャラクターというのは昔から映画やドラマによく出てきますが、今回の二宮君はナンバーワンじゃないかな。よくあんなに早口で、噛まずにペラペラとイタリア語を話せるなと。しかも、発することだけに一生懸命になっていなくて、きちんと感情表現をしながら話していますし、もう本当にすごいんです。でも、けして練習している姿は見せないんですよね。劇中ではフル尺で歌も披露しますし、ファンの方には絶対に満足していただけると思います。

◆対して、速水の妹・早季子役を演じた有村さんはいかがでしたか？

これは二宮君もそうですが、有村さんは僕なんかが口を挟む余地がないくらい、ものすごく役について計算されていて、プランやビジョンをしっかりと持たれているなと感じました。今回も、「第二次世界大戦中の女性」ということをイメージして来られていたのか、いつも拝見している有村さんよりもお芝居のスピードがゆっくりなんです。きっとその当時の女性の、おだやかで優しい感じを表現されていたのだなと。今までの有村さんとは違う姿が随所で楽しめると思います。

◆速水と交友を深めるアベーレ、シモーネ、アンジェロ役のお三方をはじめ、今回ご一緒されたことで感じたイタリア人の方々の印象を教えてください。

今回出ていただいた3人はすごくまじめでした。でも、やはりイタリア人らしさもあり、陽気で、食べることが大好きですし、女性の話もよくしていましたね（笑）。セットの中を見て回っては「これどうなってるんだろう？」など、いつも賑やかにしていて、彼らのおかげで撮影中にピリピリすることもほとんどなく、とても楽しい現場になりました。

◆最後に、読者の方々へ一言お願いします。

この作品は、戦時中のガチガチな日本の軍人と、陽気に人生を謳歌しているイタリア人が、最初は互いに猛反発していたのに、次第に深い友情や恋が芽生えていくという素晴らしいお話です。そこの軸がしっかりと描かれた脚本を元に、そういった魅力的な部分をきちんと表現できたんじゃないかなと自負しています。老若男女どなたでも、そしてイタリア人の方にも楽しんでいただける物語になっていると思います。ぜひ多くの方に見ていただけたらうれしいです。