「“愛”も“呪い”も単体では存在しない、背中合わせの言葉なのかな」矢井田瞳がドラマ『ゆりあ先生の赤い糸』主題歌「アイノロイ」を書き下ろし

デビュー24年目を迎え、精力的に活動し続ける矢井田瞳さんが、このほど菅野美穂さん主演の連続ドラマ『ゆりあ先生の赤い糸』（テレビ朝日系　毎週木曜　午後9時～9時54分）の主題歌を配信リリースした。矢井田さんにとって12年ぶりのドラマ主題歌となる「アイノロイ」は、オファーを受けての書き下ろし。「原作を読むところから曲作りを始めた」といい、斬新だと感じたストーリーとヒロイン像に共感できる部分もたくさんあるそう。曲に込めた思いや念願だったという音楽プロデューサー・Yaffleさんとのタッグについて、最後には今ハマっているエンタメについてもお聞きしました。

◆この「アイノロイ」は「ドラマの主題歌を作ってほしい」というオファーだったのですか？

そうですね。ドラマのために書き下ろしたので、原作を読むところから曲作りをスタートしました。原作を読んで最初に思ったのは「斬新だな」と。シンプルなラブストーリーではないし、シンプルなサクセスストーリーでもない。いろいろな要素が、特に第1話なんて絡みに絡み合って、人生に一度経験するかしないかみたいなことが次から次へと起きて。重ためな話なのかなとか思っていたら、そこからのゆりあ先生の立ち向かい方が爽快感すら覚えるというか。気がついたらどんどん応援したくなるという、すごく新しいヒロイン像も斬新だなと思いました。

◆そのヒロイン像に共感できる部分はありましたか？

たくさんありました。ゆりあ先生は、幼いころにバレエをしていて。私は違う習いごとでしたが、若いころは自分が少しずつ大人になっていることなんて考えずに、まずは目の前のことをやっていました。子供のころは何にだってなれると思っているけど、大人になってみると実はそうじゃないんだなと。「自分のサイズってこれくらいなんだな」と悟ってからの先が結構長いんだということにも気づいて。いろんな経験をしてきたからこその今、みたいな面で、ゆりあ先生と重なる部分が多いかなと思います。世代的にも近いですし。

◆リリースにあたって矢井田さんが出されたコメントに「日々をたくましく生き抜くすべての方々を心に描きながら紡いだ曲」とありましたが、ご自身についてたくましいなと思う部分はありますか？

結構たくましいと思っています。でもこれは自己評価なので、周りから見たらただただ危なっかしいヤツかもしれないですけど（笑）。これまで何の失敗もなく歩んできての今ではないので。失敗だったり悔しい思いだったり、進んだ道をその倍戻ったりしながら、進むごとにどこかしらが強くなっているというか、かさぶたになって治って皮膚がどんどん強くなるような感じ。それを経て今があるから、たくましく生きられているような気はします。年を重ねるとともに、ある程度たくましくなるって自然なのかなと思うんです。少々なことでは動じなくなる、流す力も出てくるというか。

◆主演の菅野美穂さんについては、どんなイメージを持たれていましたか？

サバサバしている方という印象です。竹を割ったような気持ちの良さと女性らしさが共存していて、キュートで美しくて。もちろんドラマで真剣な役をされている時も素晴らしいんですが、私が学生のころからの菅野さんのイメージって、ドラマの宣伝などでバラエティ番組に出られている時に、自分も出ている方と一緒に番組を盛り上げたい！という立ち振る舞いをされているイメージがすごくあって。見ていてすごく気持ちが良くて、一視聴者として菅野さんが出ていたらうれしかった覚えがあります。

まだドラマの撮影現場などにはお邪魔できていないんですが、菅野さんとは何年も前にトーク番組で共演させていただいて、そこからだいぶ間が空いているのでお会いしたいです。

◆矢井田さんもお笑い好きで、トーク番組や音楽系のバラエティなどでのお話も楽しいイメージがあります。

そんな！　とんでもございません！　大阪で育ってお笑いが大好きですが、大好きとやるのは全然違うので。自分と違う畑というか、音楽やライブじゃない場所に出させていただくときは毎回ド緊張するし、毎回イチからのスタートという感じで頑張り方が分からず、何をやっていいか困る感じになります。

◆大学の同級生である南海キャンディーズ・山里亮太さんとの共演は、特に楽しく拝見しています。

山ちゃんと一緒にお仕事させていただくときは、多分甘えすぎているというか、本当に昔の同級生に会うみたいな感じで。山ちゃんがそれを引き出してくれているんでしょうね。

「このカタカナ5文字が私的にはしっくりきましたね」

◆「アイノロイ」のプロデュースは、初めて組まれた音楽プロデューサーのYaffleさん。矢井田さんの念願だったそうですね。

はい。いつかはご一緒したいと思っていたので、今回夢がかなってうれしいです。Yaffleさんにサウンドプロデュースしていただいたからこその新しさやグルーヴがあって、ノリもこれまでの矢井田瞳にはないものを引き出してもらえているかなと思います。

◆Yaffleさんからのコメントには「学生の頃に聴いていました」とありましたね。

そうなんですよ！　歴史の長さを感じます。でも、年齢差があっても一緒に1つのものにいきなり取り組めるのが音楽のいいところだと思っていて。音楽って経験が長いほうが良いとかダメとかではないし、同じスタートで同じものに向かっていけるのが魅力だと思うので、今回はそれをYaffleさんとできてうれしかったです。

◆タイトル「アイノロイ」も印象に残るワードです。

この曲の冠として自分の中で一番しっくりきたのが、カタカナ5文字で「アイノロイ」でした。カタカナって冷たい感じがするときもありますが、「愛と呪い」という言葉には、その冷たさがちょうど似合っているような気がして。「愛」と「呪い」を漢字で書くとまた全然違った感じの伝わり方になると思いますが、このカタカナ5文字が私的にはしっくりきましたね。

「愛」は何かとつながって感じるものだし、「呪い」も単体では存在しないというか、何かしらとつながっているもの。そういう意味では、背中合わせの似たような言葉なのかなと思ってこのタイトルにしました。

◆この曲をドラマと一緒に聴かれる方へ向けて、メッセージをいただけますか。

ドラマを見て、ゆりあ先生の生きざまから勇気やパワーをもらう方がたくさんいると思うので、ぜひ私の楽曲とともにパワーよ届け！と願っています。ドラマと一緒に楽曲も楽しんでいただけたらうれしいです。

◆最後に今、矢井田さんご自身がハマっていたり、読者に勧めたいエンタメを教えてください。

休みの日は、お笑いライブをよく見に行きます。例えばテレビに出ている芸人さんが見られるのは、東京なら「ルミネtheよしもと」などですが、そうではなくてお笑い事務所が主催するライブや、単独ライブなど小さい劇場もよく行きます。このあいだは下北沢で「無料ライブやってます。見てくださーい」と案内されたので、入ってみました。

そういう会場に行くまでは、例えばテレビでお笑いをやっている人＝お笑い芸人さんだと思っていたんですが、そうではない世界もいっぱいあることを知って。音楽でいうとライブハウスでバンドを見る時の「私だけが見てる！」みたいな、ウキウキ感があるんです。あと、やっぱり近くで見ると芸人さんの息遣いや目の動き、間合いの上手さや声の大小の使い方などが全部分かるので、そこにハマってしまって。なので売れている、いないとか関係なく「今日は時間があるからお笑いライブ見に行こうかな」と行ってみたりします。

今の時期はM-1グランプリが始まっていて、1回戦から誰が受かったかの発表や、その日の上位3組が動画で見られるので、娘と毎日チェックしています。

●photo／YOSHIHITO_SASAKI　text／松田優子　Hair ＆ Make／太田瑛絵

PROFILE

矢井田瞳
●やいだ・ひとみ…1978年7月28日生まれ。大阪府出身。A型。シンガー・ソングライター。通称、ヤイコ。2000年7月にメジャーデビューを果たし、2ndシングル「My Sweet Darlinʼ」が大ヒット。その後も数々のヒット曲を世に送り出し、新曲のリリースやライブの開催など、精力的にアーティスト活動を行う。