『猫忍』動物トレーナー・北村まゆみインタビュー「猫好きな方は間違いなく楽しめます」

特集・インタビュー
2017年02月02日

忍者と猫の交流を描いたドラマ『猫忍』が、現在、tvk、チバテレ、テレ玉、BSフジほかにて放送中。主人公・陽炎太(大野拓朗)が“父上”と呼ぶ猫を、本作が役者デビュー作となる“ちょいポチャオヤジ猫”金時が貫禄たっぷりに演じている。動物プロダクション「ZOO動物プロ」に所属し、『猫侍』『オトナ女子』など、さまざまな映像作品に携わっている動物トレーナー・北村まゆみさんに、キャスティングから撮影時の珍事(!)まで、裏話をたっぷり聞きました。

猫にしては珍しく、金時は“抱っこ”が大好きな甘えん坊

『猫忍』

◆本作で役者デビューを果たした金時ですが、デビューのきっかけを教えてください。

台本には「茶色いデブ猫」とあったんです。そこで「確か知り合いの飼い主さんのお友達が飼っていた猫がぽっちゃりさんだったような…」と、オーディションを受けてもらいました。オーディションではうちのタレント猫も見せて…。(金時、乱入!コップの水を飲み始める)ちょっと、金ちゃんそこで水飲むの~~~!?

『猫忍』

◆さすがの大物ぶりですね(笑)。

すいません(笑)。オーディションの話ですが、そのときは金時もすごく緊張していて、固まっていたんです。そしたら猫の撮影経験が豊富な渡辺(武)監督が「何かするよりは動かない子のほうがいいよね」とおっしゃって、金時に白羽の矢が立ちました。飼い主さんもすごく協力的な方だったんですよ。自分の猫を1か月半以上他人に預けるって相当勇気がいると思うんですが、飼い主さんは私たちの動物に対する思いを分かってくださる方で、「喜んで!」と送り出してくれて。

◆撮影がスタートしたときの金時はどんな様子でしたか?

『猫忍』が初めての撮影だったので最初はこんなに堂々としておらず、すぐ隅に行ってしまうような感じで。でも、日光ロケでかなり鍛えられたというか、「こういうものなのかな」と金時も理解していって、わりとすぐに堂々とするようになっていきました。

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◆物語では、陽炎太と金時が共に暮らしています。金時は大野さんとのシーンが圧倒的に多いですが、彼らの相性はいかがですか?

大野さんは犬を飼っていらっしゃるので、甘えられるのがお好きみたいなんです。また、普通の猫は抱っこを嫌いますが、金時は飼い主さんから「できるだけ抱っこをしていてください」と言われるほどの甘えん坊。だから、相性はとてもいいと思います。私も待ち時間にずっと抱っこしていましたが、金時は何せ体重が8.5キロもありますから、抱っこし続けるのはかなり苦労しましたね。3日ぐらいで「もうだめかも」と挫折しそうになりました(笑)。

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◆ということは、女優さんは抱っこにかなりご苦労されたのではないですか?

女優陣、子役の皆さんには本当に苦労をかけたと思います。幸役の大沢ひかるさんは、せりふを言っている間に金時を抱っこする手がどんどん下がってしまって(笑)。だから、バストアップのシーンでは、私が下から金時を支えていたりしました。そういう意味では、映画に出演されている佐藤江梨子さんが、一番大変だったかもしれないです。大野さんですらしていない片手抱っこをしていましたから。アップのときは、手元に支えを置いて撮影していました。

◆『猫侍』では、スター猫・あなごの動物トレーナーを務められていましたが、そのときは支えを使った撮影はなかったのですか?

全然なかったです! あなごは金時の1/3の大きさなんですよ(笑)。『猫侍』では北村一輝さんがあなごを抱きながら殺陣をされていましたが、もし金時を抱いていたら絶対に負けちゃいますね(笑)。

私が突拍子もないことをするので、大野さんにとっては“苦行”で…

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◆金時の撮影で、北村さんが一番大事にしていたことは何ですか?

猫には仕事をしているという自覚がないんですよね。ましてや金時は初めての撮影なので、メンタル的な部分と、その影響から来る体調管理は一番大事にしていました。その上で、こわばったり、うなだれたり、落ち込んだ表情にならないよう大野さんには金時とたくさんコミュニケーションを取っていただいて、安心している様子が撮れればいいなと。

◆長期の撮影では多くの苦労もあったと思いますが、一番大変だったことは何ですか?

猫の撮影で一番大変なのは「目線」なんです。カメラ目線がほしいとき、カメラの横で呼んでも絶対に見ないので、わざと違う所から呼んで目をそらせた所がカメラ目線になるようにしたり。ただ、同じ手法を使っていると3回ぐらいで猫が飽きてしまうので、手を変え品を変え、気を引くようにしています。それで大野さんを苦しめているんですけど……。

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◆苦しめているというと?

私が突拍子もないことを何の前触れもなくやるものですから、大野さんが笑っちゃうんです。例えばCGを使う場面。CGではそこで何かが起きていて、大野さんも金時も同じ方向を見てほしいんです。当然、金時には何も見えないので、リアクションの取りようがないですよね。でも、金時の「あいつ何やってるんだ?」という目線を撮りたいので、私が物陰から飛び出てウワーっとやったり、それでもダメなら少しずつ近寄ったりするんです。それを真顔で見ていないといけない大野さんにとっては“苦行”ですよね。カットがかかった瞬間に「もう苦しいです」とおっしゃっていました(笑)。事前に説明しないまま思いつきで動いてしまうので、大野さんにはご迷惑をおかけしたなと思います。

◆なるほど(笑)。今までお話を聞いてきて、すごく和やかな現場なのかなという印象を受けました。

動物は、ピリピリしている現場を嫌うんです。空気感ってとても大事で、罵声が飛び交うような現場だと猫が怯えてしょうがないんです。だから、猫がいるときはみんな声や所作を静かにしてもらっています。ほかに、スタッフの皆さんには「動物は、同じことを2回やらないと思ってください」と伝えています。テストをやってしまうと、テストが一番になってしまうんですよね。だから、私の立場で言うのも申し訳ないですが「本番だけで」と(笑)。そのほうが、リアルな動きが撮れるんですよ。今回は『猫侍』でご一緒していたスタッフの皆さんと作っているので、以前私が10言っていたことが5で済むというか、すごくやりやすい環境で金時も撮影できているんじゃないかと思います。

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◆昨年12月に行われた舞台あいさつで渡辺監督がおっしゃっていましたが、金時は現場でよく寝てしまうそうですね。

そうなんです。監督の声を聞くと寝るという変なルーティンができてしまいました(笑)。恐らく、カチンコとの連動だと思うんです。猫はカチンコを嫌うのでなるべく離してもらっていますが、アップのシーンはどうしても近くなるので猫はとても怖い思いをするんです。「本番、よーい、スタート!」と監督の声がかかるとカチンコが鳴ることを金時は理解しているので、怖い思いをしないためにカチンコが鳴る前に寝てしまって(笑)。自分で都合のいいようにコントロールしているように見えて、何だか猫らしいですよね。ただ、大野さんと一緒のシーンは、大野さんが絶対に金時をカチンコから離してくれるんですよ。大野さんの優しさは金時に対するしぐさや目線を通して映像でも感じられるので、きっとファンの方はキュンキュンするのではないでしょうか。私が金時を抱っこして歩いていても、大野さんはすぐ「金時~!」と金時に顔を近づけてくるほどメロメロなんです(笑)。

『猫忍』

◆ドラマの今後の見どころを教えてください。

今までと同じようにほっこりしているところもありますが、忍者の数が増えるに従ってシャープな部分も多くなると思います。中盤は、ちょうどジェットコースターのスピードが乗ってきたようなところ。スピードマックスのところで映画に突入するので、1話も目が離せないと思います。

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◆最後に、『猫忍』視聴者の方に向けてメッセージをお願いします。

猫と一緒にいると、やっぱり人のほうが関係性が下になるんです。それに加え、今回は大野さんが猫を父上と信じているので、金時にかける言葉やしぐさにクスクス笑えると思います。それだけではなく、アクションも本格的なので、そのギャップが面白いかなと。残念ながら金時はアクションシーンにはほぼ出ていないですが、猫がこれだけ出てくる作品はあまりないので、猫好きな方は間違いなく楽しめると思います。大野さんのカッコよさ、優しさが共存している部分も作品の1つの魅力ですし、共演者の方々もそうそうたる顔ぶれなので、「誰がどこで出てくるんだろう?」という楽しみ方もできます。ぜひ最終話まで、そして映画まで見逃さずにご覧ください。

 

■PROFILE

int_nekonin_01北村まゆみ
●きたむら・まゆみ…動物プロダクション「ZOO動物プロ」に所属し、動物トレーナーとして幅広く活躍中。これまでに関わった作品は、ドラマ・映画『猫侍』、ドラマ『オトナ女子』ほか多数。

金時
●きんとき…2012年7月10日生まれ。日本猫。オス。体重8.5キロ。甘えん坊の大食漢で内弁慶。カギしっぽ。『猫忍』で役者デビューを果たした。


■作品情報

『猫忍』ドラマ『猫忍』

放送局:tvk、テレ玉、チバテレ、三重テレビ、KBS京都、サンテレビ、TVQ九州放送、とちぎテレビ、テレビせとうち、静岡第一テレビ、群馬テレビ、BSフジ、アニマルプラネット、スターキャット
※各局放送日・放送時間等は、『猫忍』公式HPをご確認ください。

<INTRODUCTION>
大ヒット動物ドラマ&映画『猫侍』のスタッフが再結集して送る忍者活劇。主人公は、忍びの掟を破り生き別れた父親そっくりの猫を飼い始めてしまうイケメン忍者・陽炎太。忍者なのに等身大、そしてややコミュ障な陽炎太を演じるのは、本作で映画初主演を務める大野拓朗。そして、『猫侍』でブレイクしたツンデレ白猫の玉之丞=あなごに続くネクスト猫スターは、存在感抜群、師匠感満載のオヤジ猫・金時。演じるのはその名も“父上”。本作が役者デビューと思えない、貫禄たっぷりの演技を披露している。

<STORY>
霧生家の若手忍者・陽炎太(大野)。幼少期に父親と生き別れ、ずっと愛を知らずに生きてきた。父親は、赤鼻をした伝説の忍者・剣山(船越英一郎)。大人になった陽炎太は、ある日、ミッションのため江戸を訪れる。大名屋敷から金魚を盗み去ろうとしたとき、赤鼻のでっぷり太った猫の存在に気づく。陽炎太は、その猫が生き別れた父親だと確信する。

出演:大野拓朗、藤本泉、草野イニ、大沢ひかる、青木玄徳、鈴木福、金山一彦、永澤俊矢、麿赤兒、船越英一郎 ほか

監督:渡辺武・佃謙介
脚本:黒木久勝
企画:AMGエンタテインメント
制作プロダクション:ラインバック
製作:『猫忍』製作委員会

映画『猫忍』は5月20日(土)より全国公開

『猫忍』公式HP:http://neko-nin.info/

©2017『猫忍』製作委員会

 
●photo/中村圭吾 text/金沢優里