青柳翔インタビュー「目の前のことに誠実に向き合う伍介の姿勢に共感」映画「たたら侍」

特集・インタビュー
2017年05月17日

戦国時代の島根奥出雲の村を舞台に、秘伝の製鉄技術“たたら吹き”を受け継ぐことを宿命づけられた主人公が葛藤や挫折を通して成長していく姿を描く映画「たたら侍」。本作の主演を務めた劇団EXILEの青柳翔さんに、撮影秘話や見どころを語っていただきました。


失敗もたくさんするけど、目の前のことに誠実に向き合っていく。そんな伍介の姿勢に僕自身もすごく共感できました

青柳翔インタビュー

◆錦織良成監督とタッグを組むのは、2013年公開の主演映画「渾身 KON-SHIN」に続き2度目になりますが、どういう経緯で本作への出演が決まったんですか?

前作の「渾身~」という映画をやらせてもらったときに、プロモーション中に監督と打ち合わせ室で「次は時代劇をやれたらいいね」みたいなお話をさせていただいて。で、「(監督の出身地でもある)島根には“たたら製鉄”というものがあってね」という話を聞いたのが最初のきっかけですね。そして、エグゼクティブ・プロデューサーのHIROさんをはじめ、本当にたくさんの方々からご協力していただけることになり、今に至るという。まさかここまで大きなプロジェクトになるとは思っていなかったので、いよいよ撮影が始まるとなったときは、責任を果たせるようにとにかく頑張らなければいけないなと身の引き締まる思いでした。

◆撮影は島根県の奥出雲地方で行われたそうですね。現地にはどれぐらい滞在していたんですか?

約3か月ぐらいですね。途中、1日か2日だけ帰ったんですが、あとはずっと行きっぱなしで。やはり常に現地にいてスタッフさんとコミュニケーションをとりながらやらせてもらったほうが環境的にも集中しやすいですし。そういう機会を与えていただいて、すごくありがたかったです。それから、監督の錦織さんのほかにも、照明さん、音声さん、スクリプターさんとか、ほとんどが前作の「渾身~」でご一緒させてもらったスタッフさんだったので、本当にやりやすいというか。「あ~久しぶり! 元気だった?」と声をかけていただいて始められたのも心強かったですね。

◆青柳さん扮する主人公・伍介は“たたら吹き”という伝統技術を受け継ぐ使命を背負いながらも、「強くなって村を守りたい」という思いから運命に抗って侍になろうとする青年。この役を演じるにあたって、監督からはどんな言葉をかけられましたか?

「伍介は難しい役だからね。でも青柳君なら大丈夫でしょ? 自由にやっていいよ」とおっしゃってくださいました。この映画の中で描かれている伍介という人物は決してスーパーヒーローではなくて、失敗もたくさんするんです。でもそのたびに立ち上がって目の前のことに誠実に向き合っていく。そういう彼の姿勢は僕自身もすごく共感できました。演じる上では葛藤しながらも前に進んでいく伍介が、最後の場面である行動をとるんですが、それが本当に難しくて。そのラストシーンに至るまでの気持ちの流れみたいなものは、監督に何度も相談させていただきながらやらせてもらいました。

◆この映画の見どころの1つである“たたら吹き”のシーンもとても印象的でした。

“たたら吹き”は1300年以上前から日本に伝わる製鉄技法なんですが、今も奥出雲では実際に操業が続けられているんです。なので、撮影に入る前に資料としていただいたドキュメント映像を見たり。その後も体験見学を1、2回やらせてもらって、3回目に本番の映像を撮影しました。砂鉄を入れる量から、その振り分け方から、炭の入れ方まで、全部本物と同じようにやらせてもらったので、たたら炉の周りはとにかく尋常じゃない熱さなんですよ。それでも他の人に代わりにやってもらうわけにはいかないですから(笑)、これはもう気合いしかないなと。「火に立ち向かうことで鋼ができるんだ」という監修の方がおっしゃっていた言葉を思い出しながら、集中して臨みました。

青柳翔インタビュー

◆また本作は、「第40回モントリオール世界映画祭」ワールド・コンペティション部門で最優秀芸術賞を受賞されました。その知らせを聞いたときはどんな心境でしたか?

純粋にすごくうれしかったですし。こうして海外で賞をいただくことで、それがよりたくさんの方にこの映画を見てもらうきっかけになればいいなと思っていたので、そういう意味でもすごくありがたかったです。

◆錦織監督、共演の小林直己さんと共にモントリオールにも足を運ばれたそうですが、映画祭の合間に現地を楽しむ時間はありましたか?

直己さんは現地に1泊もしてないぐらいの弾丸で、僕も1泊しかできなかったんですよ。だから映画祭以外で思い出に残っていることといえば、中華のお店で食事をしたことぐらい(笑)。でも映画祭の雰囲気も満喫できましたし、それだけで十分楽しかったです。

◆今回劇中では“伝統を守り続けること”を宿命づけられた主人公を演じられましたが、青柳さんご自身がこれからもプライベートで“続けていきたいこと”といえば?

釣りですね。昔から釣りが好きなので、これからもずっとやり続けていきたいなと。地元の北海道に住んでいたときはニジマス釣りとか海釣りをやってましたね。で、東京に出てきてからは一時期ブラックバスにハマり、その次はシーバスをやるようになって。三代目J Soul Brothersの(山下)健二郎とか、劇団EXILEの小澤(雄太)とかと一緒に行ったりしています。釣りはやっぱりすごく楽しいです。

◆最後にあらためて、映画「たたら侍」の見どころを教えてください。

日本の美しい風景など、スタッフの皆さんがこだわって作り上げた映像、そして(伍介の幼なじみ・新平役の)直己さんや(村を見守る武士・尼子真之介役の)AKIRAさんのアクションシーンも見どころになっていると思います。またストーリーの部分で言うと、「憎しみの連鎖を断ち切る」という、簡単なことではないけれど、それでも諦めるより良い未来であればというメッセージも詰まっている作品だと思うので、ぜひたくさんの方に劇場で見ていただけたらうれしいです。

 

■作品情報

「たたら侍」「たたら侍」
5月20日(土)より全国ロードショー
原作・脚本・監督:錦織良成
エグゼクティブ・プロデューサー:EXILE HIRO
出演者:青柳翔、小林直己、田畑智子、石井杏奈、AKIRA、奈良岡朋子、津川雅彦 ほか

公式HP:https://tatara-samurai.jp/

<ストーリー>
諸国の大名たちが鉄砲の数を競い合う戦国時代、1000年錆びない鉄を作る秘伝の製鉄技術“たたら吹き”を継承する村下の長男として生まれた伍介(青柳翔)は、その幻の鋼鉄を狙う者たちに村が襲われるたびに強くなりたいと思っていた。そんなある日、商人の惣兵衛(笹野高史)から「農民でも侍になれる時代がきた」と知らされた伍介は、村を守るために侍になることを決意。そして、“たたら吹き”の継承者という自らの宿命に抗い旅に出るが、戦さ場で厳しい現実に直面する。

 

■プロフィール

あおやぎ・しょう…1985年4月12日生まれ。北海道出身。A型。劇団EXILEのメンバー。2ndシングル「そんなんじゃない」が6月7日(水)発売。映画「HiGH&LOW THE MOVIE 2/ END OF SKY」が8月19日(土)、「HiGH&LOW THE MOVIE 3 / FINAL MISSION」が11日11日(土)、日・香・台・独の合作映画「Mr Long/ミスター・ロン」が2017年公開予定。

©2017「たたら侍」製作委員会

 
●photo/中村 功 text/江藤利奈 hair&make/鵜飼雄輔(TRON) styling/松川 総(TRON)