「シンプルな生き方が本当にうらやましい」向井理インタビュー

特集・インタビュー
2015年07月02日

NYタイムズやイギリスの旅行誌で「今、一番行きたい国」に選出され、東南アジアの中で最も注目されているラオス。人々を魅了する理由は、一体どんなところにあるのか…。実際に現地を訪れ、ラオスの“今”を体感した向井理さんにお話を伺いました。

ラオスは街全体が瞑想している感じ

――初めてのラオス、印象はいかがでしたか?

ラオスがどういう国なのか、あえて勉強しないで予備知識も持たずに行ったんですが、最初の印象としてはいわゆる“東南アジア”という感じでした。
僕はカンボジアに3回くらい行ってますけど、気候だったり空港に降り立ったときの雰囲気はすごく似ていましたね。

――日本や、ほかの東南アジア諸国との違いはどうでしょう?

東南アジアの人たちは結構そうなんですけど、良くも悪くも適当な人たちだったりするんです(笑)。とにかく暑いから、寝てる人も多いですし。
でもタイやカンボジアと特に違ったのは、同じ仏教国家だけどラオスのほうがより敬虔な感じがしたところですね。生活に密着していて、お堅いと言えばお堅い。お坊さんに対しても“神様の使い”という見方をしているので。だから1回入門したら、たとえ自分の子供でも親は話しかけてはいけないですし。
彼らは“徳を積む”という言い方をしてましたけど、子供が仏教のお寺に入りたいと言うと、「神様になるから」と親御さんはすごく喜ぶんですよ。

――すごく厳しい世界なんですね。

禁欲生活なので女性も話すことができなかったり、ルールもいろいろあるみたいです。
ラオスの人たちの中にはそういったお坊さんの経験を積んだ人もいるし、辞めてから普通の仕事をするっていう人もいるからか、すごく静かな雰囲気なんですよね。仏教の思想が根付いているというのもあるかもしれないんですけど。
例えばカンボジアやタイは、マーケットに行くと「これ買わない?」ってどんどん人が寄ってくるんですけどそういうことも一切なかったですね。こちらが話しかけない限り近寄ってこないし、相手の領域を守る人たちなので自分の時間を保てる、という意味では過ごしやすかったです。すごく静かで、街全体が瞑想している感じがしましたね。

自然に囲まれた生活は、けっこう相性がいいかも(笑)

――現地で一番印象的だったことは何ですか?

いろんな経験をさせてもらった中で、民族の生活は印象的でしたね。焼畑農業でお米や野菜を栽培して生計を立てている“山の民・白モン族”とか。実はラオスに行くまでに日本で仕事がバタバタしていたので、あっちで少し体調を崩してたんです。でも川や山に行って、自然に囲まれた場所で生活したらすぐ直っちゃったので、けっこう相性がいいのかなと(笑)。
メコン川流域に暮らす川海苔の村では海苔の収穫を手伝わせてもらったんですが、見た目以上にけっこう難しかったですね。食べ物ですし、作業自体は全然苦ではなかったですけど。

――向こうでは、ご飯もけっこう召し上がったそうですね。

川海苔の村では家にもおじゃまして、ご飯もしっかりごちそうになりました。食べることはすごく好きですし、食べるために生きているので(笑)。向こうではもち米がメインで、食卓には筒状の物にお米を蒸した料理が多かったです。それをこねて、おもちみたいにして食べるんですけど、腹持ちがいいんですよね。虫も食べますし、ハチノコとか海苔とかもあって。東南アジアの料理としては、ほかの国とそんなに変わらないんじゃないかな。
どこの国でもそうですけど、僕は食べることとか食べ物ってその国の文化だと思うんです。言葉とか教育とか伝統芸能とか音楽とかもそうですけど、食はそのうちのすごく大事な要素じゃないかなって。

彼らのシンプルな生き方が本当にうらやましい

――質素な暮らしや人々の助け合いの精神など、どこか昔の日本に通ずる部分もあるのかなと思うんですが、彼らの生活は向井さんの目にどう映りましたか?

すごくうらやましいですよね。日本じゃできないですもん、やろうと思っても。
仕事どうこうっていうより、自分たちで生活するっていうのができない社会になってるじゃないですか。携帯電話とかパソコンを使っちゃってると、それがない生活にはもう戻れないだろうし。僕がまだ小さいときはポケベルでしたけど、それですら戻れないでしょうしね(笑)。手段がないっていうのもあるだろうけど、ラオスの人々はそういう情報機器に依存せず、自分たちで農業をして作物を売りに行く生活を今も続けているんですよね。それでもみんなが人生に満足していて。幸せって人によって違うと思いますけど、便利になったから幸せになるわけじゃないんだなと、人々に触れ合ったことでより感じましたね。
彼らのすごくシンプルな生き方は、本当にうらやましいです。

――心の余裕だったり、現代人が学ぶべき部分はたくさんありますね。

すごいなと思ったのが、ラオスという国を、家族を愛してるとみんなが普通に言うんですよ。最初は「インタビューされてるからかな?」なんて思ったんですけど、通訳の人に聞いてみても、「日本の愛してると同じくらい重い言葉を、彼らは使ってますよ」と言っていて。自分はこうやって家族を支えていきたい、国のために貢献したい、としっかり述べられるのはすごいことですよね。
辛いことを辛いと思わないし、そういうことよりもどうやって家族に貢献するかとか。まずベクトルが僕らとは違うんでしょうね。教育してできることでもないし、なぜそういう考えになったのかは不思議ですね。真似しようと思ってもできないので。

――今回の旅で、プライベートでもまたラオスに行きたいと思われましたか?

そうですね。話していて親切さを感じましたし、穏やかな国で本当に居心地も良かったので。ただ、この仕事をしているからこそ行ける場所っていうのもあったので、プライベートだと特に目的も持たず、何もすることがなさそうな…(笑)。観光しにきているヨーロッパの方たちは「だらだらと無駄に時間を過ごすのが贅沢だ」って言ってたので、僕も次回行くときは予定を決めず、のんびりラオスの雰囲気を味わえたらと思います。

 

●photo/中田智章 text/多田メラニー

 

PROFILE

向井理●むかい・おさむ…1982年2月7日生まれ。O型。神奈川県出身。
ドラマ『信長協奏曲』、『S-最後の警官-』や映画「小野寺の弟・小野寺の姉」ほか多数の作品に出演。映画「S-最後の警官-奪還 RECOVERY OF OUR FUTURE」が8月29日に、「天空の蜂」が9月12日に公開する。


番組情報

『向井理が見た未来への生きるヒント』ラオス・世界遺産の街
BSフジ 7月4日(土)後7・00~8・55