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岸井ゆきのインタビュー「“クリスマスなんてクソくらえだ!”と思っている人は、スッキリするんじゃないかと思います(笑)」映画「太陽を掴め」

岸井ゆきのインタビュー「“クリスマスなんてクソくらえだ!”と思っている人は、スッキリするんじゃないかと思います(笑)」映画「太陽を掴め」

『99.9-刑事専門弁護士-』や大河ドラマ『真田丸』でも注目を集めた岸井ゆきのさん出演の映画「太陽を掴め」が、12月24日(土)より公開中。日本映画界の新鋭・中村祐太郎監督の劇場デビュー作で、元子役のミュージシャン・ヤット(吉村界人)、フォトグラファーのタクマ(浅香航大)、そしてヒロインのユミカ(岸井)を中心に、都会に生きる若者たちの群像を心揺さぶる音楽とともに鮮烈に描きだした、新たな青春映画の傑作。岸井さんがユミカ役を通して、芝居との真摯な向き合い方を語ってくれました。

岸井ゆきのインタビュー

◆「太陽を掴め」は、まさに太陽のような熱さを感じる素晴らしい青春映画でした。

監督の熱さがすごく伝わる映画だと思います。現場ではその熱さが強すぎるがあまり、監督が何を伝えたいのか理解できないときもありましたが…(笑)。同じように界人君にもこの映画に懸ける熱さを感じたので、私はいい意味で巻き込まれていこう!と思っていました。

◆中村監督から、ユミカの芝居について何か指示はあったんですか?

ありました。台本を読んで、ユミカに関して理解に苦しむところもあったので、そこを監督とたくさん話し合いました。ただ、監督からの指示は擬音語と擬態語でなかなかよく分からない部分があって。「バッとやって、ガッとやって、こうだから!」みたいな(笑)。監督のその熱さとかニュアンスを私なりに「こういうことなのかな」と解釈しながら演じました。

◆ユミカの理解に苦しむ部分というのは、どういうところだったんですか?

ユミカって、どこかズルいなって。しかも、そのズルさを「自分は弱いから」ってことで正当化しようとしているように思えたんです。結局のところ、逃げているだけのように思えて。ユミカに対して客観的になってしまってすごい悩んだんですけど、監督の演出が理論的じゃなかったのが逆に良かったみたい。私も頭で考え込まず、感情で「やってみます!」って気持ちになれた気がします。

◆思いを寄せられているヤットと、元恋人のタクマ。この2人の間でどっちつかずの態度を取り続けているユミカには、確かにズルさを感じますね。

たぶん、そのときの気分で決めてしまっているのかなと。「みんな弱いし、でも戦っているんだよ!」と思って。そうそう、その「弱いから」ってセリフを夕暮れのベンチでヤットに言うシーンは短期集中で撮ったんです。絶対に夕焼けで撮りたいってことだったんですけど、もう日が沈みそうなタイミングで。すごいスピードで撮って「次の現場行くぞー!」って。いろんな場面で、そんな感じの場面があったんですけど、でも、だからこそ、頭の中だけでガチガチにならず、のびのびやれたのかもしれないなって思います。

◆そうやってユミカ役と闘い続ける中で、ここだけはブレないように演じようという軸はあったんですか?

そこはあまり考えなかったです。中村監督の演出もシーンのつながりというよりは、その瞬間の熱みたいなものを大切にしているところがあって。私が前のシーンのつながりを気にしていたりしても、結局そこではないところの話になり(笑)。「このシーンのときはこういう気持ちでいいんだ」というところに気持ちを持っていきました。最終的には、ユミカ自身がブレているからいいのかなと思うようになって、だんだん気が楽になっていきました。

◆でも唯一、あるシーンでヤットに絡んだときのセリフはユミカの本心を見た気がしました。その後、後悔するかのようにうなだれるところも含めて。

あのシーンは、珍しくユミカがヤットに対して思っていることをぶつけるっていう意味で、演じていてすごく楽しかったです。ユミカがただの「嫌な女」とだけ見えるのは嫌だなと思って…大事に演じました。

界人君は激熱、浅香君は冷静。2人の差が面白かったです

岸井ゆきのインタビュー

◆俳優としての吉村さんの印象はいかがですか?

ひと言で言えば「激熱」ですね。テストのときから本意気なんですよ。一個一個にいつも一生懸命で、熱くて。なかなかほかにいない俳優さんです。

◆ヤットが絶唱する圧巻のライブシーンは、そんな吉村さんの熱さを象徴しているように思います。

あのライブシーンも、ほかの作品なら当てぶりだったりするんですけど、界人君は毎テイク本気で歌ってて。演奏もそのときどきでやっていたので、同じ音が流れることがないんですよ。私はユミカとして現場にいたんですけど、見ていて気持ちが熱くなって。すごく楽しかったです。

◆吉村さんはいい意味で、1回1回のシーンに懸けてらっしゃったんですね。

そうそう、本当にサンボマスターみたいな人です(笑)。

◆そういう熱さは、ヤットに通ずるものがありますね。

私はヤットそのものだと思ってました。ぴったりでしたね。逆に浅香君は冷静な人なので、その2人の差が面白かったです。

◆浅香さんの印象について、もう少し聞かせていただけますか?

浅香君とは2人のシーンも多かったので、役のことについてもよく相談していました。界人君がそのときの熱量で演じるのとは対照的に、浅香君は考えを積み重ねて演じるタイプなのなかって。プル役の森(優作)さんやサラ役の三浦(萌)さんもまたタイプが違うので…本当に混沌とした、面白い現場でした(笑)。

◆劇中で特に印象的なシーンを挙げるとしたら、どこですか?

ヤットが大雨に降られているところは、印象的ですね。あと、ヤットとユミカが喫茶店でデートっぽいことをするシーンも好きでした。あれは実際にある喫茶店で撮ったんですけど、雰囲気がすごくよくて、プライベートでもまた行きたいと思うくらいでした。いかにも「マスター」って感じのおじさんがいて、コーヒーをコトコト入れてくれるんです。楽しかったなぁ、あのシーン。

◆ヤットとユミカの関係はその後、ジェットコースター的な展開が待ち受けますね。

そのキーパーソンの1人となるヤットのお兄ちゃんが、私はすごく苦手で。演じた松浦(祐也)さんのことまでそのときだけは苦手だと思ってましたから(笑)。臭いまで伝わってきそうな、松浦さんのその嫌悪感を漂わせる雰囲気作りがすごいな、さすがだなぁと思いました。

◆岸井さんにとって今作の撮影がいかに悪戦苦闘だったかがひしひしと伝わってきます(笑)。

スケジュールもぎゅっと詰まっていて、なかなか大変でしたが、監督、スタッフ、共演の方たちと少しでもコミュニケーションをとりながら、一生懸命演じました。「監督を信じてついていこう」と吹っ切れるようになってからは、少し役に対しても寄り添えるようになってきた気がします。最終的に、こうして東京国際映画祭にも招待していただいて、皆さんにも公開できることが何よりもうれしい。頑張ってよかったなと思います。

役の人生を考えるのは面白い

岸井ゆきのインタビュー

◆この映画には「塗り替えるのは僕らの世代」というメッセージも込められていますが、そこから感じるものはありますか?

「このままじゃダメだ!」っていう熱意がすごい伝わってきますよね。まず、私は自分自身のキャンバスをしっかり作っていくことから始めていきたいなと思っています。

◆2016年は『99.9-刑事専門弁護士-』や大河ドラマ『真田丸』などにもご出演されていて、今まで以上に役の幅が広がっているように思うのですが、その実感はありますか?

そうですね。『真田丸』は初めての時代ものでしたし、10月にやらせていただいた舞台「るつぼ」は17世紀に実際にあったキリスト教徒の魔女裁判がベースになっていて、海外の時代ものはそれが初めてでした。私はキリスト教徒のように普段から神にすがっているわけではないので、まずそういう心からシフトしながらいろいろ考えたり、分からなければ何かに置き換えたりして。そういういろんな準備が、今後も芝居を続けていく上で必要になるわけで、でももともとの知識があればその期間は短くなって、役に入る時間を長く持てる。今後もまだまだたくさんのことを学ばなきゃいけないなと思っています。

◆女優という仕事の面白さを感じるのは、どんなときですか?

「るつぼ」、すごい大きな声を出せるんです。しかも、700人ものお客さんの前で、毎日。それってなかなかできることじゃないし、あらためてすごいことだなと思って。あと、私が演じる役って、100%ハッピーなことってないんですよ。ハッピーに見えても、いろいろあって生きてきた人物だったりする。「こんなこと言ってるけど、過去に絶対何かあっただろう」とか、そうやって役の人生を考えるのは面白いです。

◆例えばその役がユミカのようになかなか理解が難しい役だったとしても、考える面白さはありますか?

なかなか理解できなかったとしても考えればつじつまが合うので、それが面白いと思えるところなんですけど、ユミカに関してはなかなかつじつまが合わない(笑)。私の中にないキャラクターすぎたのか、もしくは心の居所が神出鬼没なんですよね。このときはこう思ってた、でもこのときはこう思ってた、っていう。でも考えてみると、さっきまでうどんが食べたかったのにすき焼きが食べたくなったり、パスタが食べたかったのにソーメンが食べたくなったりとか、そういうことって私にもあるよなぁと思って。人間誰しもそこまでつじつまが合うように生きてるわけじゃない。だから、ユミカ役に関してこれはこれでいいのかなと、整理がつくようになってきました。ただ、考え方の起点から到達点までがあるとないでは、面白さは変わってくるかなと思います。私は余白があったほうが面白いかなと思います。

◆では最後に、これから「太陽を掴め」をご覧になる方に向けてメッセージをお願いします。

私たちの思いを凝縮したような熱さの塊がすてきな劇伴とともに描かれている映画で、寒い時期にはぴったり。温かくなれる…ってことはないかもしれませんけど(笑)、熱いものを残せたらと思ってみんな全力を尽くしました。「クリスマスなんてクソくらえだ!」と思っている人は、この映画を見ていただけたらスッキリするんじゃないかと思います。ぜひご覧ください!

 

■PROFILE

岸井ゆきの
●きしい・ゆきの…1992年2月11日生まれ、神奈川出身。AB型。2016年はドラマ『99.9-刑事専門弁護士-』『真田丸』、映画「ピンクとグレー」「闇金ウシジマくんPart3」、舞台「るつぼ」など、15本以上の作品で存在感を放った。2017年は、1月スタートのTBS系『レンタルの恋』に出演。同年公開予定の「おじいちゃん、死んじゃったって。」では、映画初主演を務める。

 

■作品情報

映画「太陽を掴め」「太陽を掴め」
12月24日(土)テアトル新宿、名古屋シネマスコーレほか全国順次公開
監督・脚本:中村祐太郎
脚本:木村暉
出演:吉村界人、浅香航大、岸井ゆきの、三浦萌、森優作、内田淳子、松浦祐也、古舘寛治/柳楽優弥ほか

©2016 UNDERDOG FILMS

 
●photo/中村圭吾 text/甲斐 武

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