片桐はいりインタビュー「心のどこかに置いておくような作品になってほしい」『東京放置食堂』

特集・インタビュー
2021年09月29日

◆片桐さんが演じられる日出子の第一印象はいかがでしたか?

きっちりしていて、曲がったことが嫌いで、真っすぐ生きてきたという型どおりの印象もあるんですけれど、同じ50代の女、そして、仕事に一途に生きてきた女として「もう限界だよ!」みたいな気持ちが何となく分かるような気がして、共感を覚えました。定年まではまだあるんだけど、ずっと頑張ってきたんだろうなぁって。私たち昭和30年代、1960年代とかに生まれた人間は何となく世の中は右肩上がりになっていくものだと信じて生きてきたところがあるんですよ。そういう人間にとって「え!?」って思う瞬間が訪れたのではないかと思いました。

◆演じる上で意識したことはありますか?

“お説教するような性格ってどうなの?”って考えた時に、“あっ!「男はつらいよ」の寅さんって自分は恋愛成就していないにも関わらず、ものすごく恋愛の話をうまくするよね”と自分の中で思い出して。“日出子を寅さんだと思えばいいんだ!”とひらめいたんです。それに加えて、日出子はお説教というより、どこかで聞いたような真っ当なことを言うニュアンスで捉えています。上から人に物を言うというよりは、一生懸命真っ当なことを言おうとしてる人を演じたいなと思っています。自分が未熟なのに、お節介心で真っ当なことを言ってしまいたくなる人という感じですかね(笑)。

◆大島でのロケはいかがですか?

大島では車は時速40キロで走らないといけなくて。信号はなくてもいいんだけど子供たちが東京とか都会に出て行った時に信号を見てびっくりすると困るからとりあえず作っておこうみたいなことで信号があるらしんです。そういうゆっくりした時間の中にいて、今すごく気持ちがいい。大自然に囲まれた大島の中にいると、もう細かいことなんか言ってられない! みたいな気持ちになるんです。 “お天気に対して文句言ったって、しょうがないじゃん!”って気持ちになれるんです。撮影はすごく大変ですけど、気持ちはとても健やかです(笑)。

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