水瀬いのり「最初のころはめちゃめちゃ猫をかぶってた私がこの先、私らしくあるための道しるべになってくれるアルバム」4thアルバム「glow」インタビュー

特集・インタビュー
2022年07月20日

4thアルバム「glow」水瀬いのりインタビュー

TVアニメ『五等分の花嫁』の中野五月役や『ご注文はうさぎですか?』チノ役などで活躍中の人気声優・水瀬いのりさん。高い歌唱力でアーティストとしても活躍する水瀬さんが、7月20日(水)に3年3か月ぶりとなる4thアルバム「glow」をリリース。今回は、そのアルバム制作の裏側と、9月にスタートするライブツアーへの意気込み、さらには子供時代の“テレビ”との関わりについても話を聞きました。

◆アルバムとしては前作の「Catch the Rainbow!」から3年3か月ぶりのリリースとなります。この3年間を振り返って、どんな3年だったと思いますか?

私のことをずっと応援してくれている方々の中には薄々気づいている人もいると思うんですけど、もともと私は伝えたいものがたくさんあるタイプの人間ではなくて。“とにかくたくさんの人に私のことを知ってもらいたい!”というよりは、“好きな人が好きでいてくれればいい”と思っている部分があるので、自分の活動をどんどん大きく広げていきたい気持ちはそこまでないんです。でも、そう言うと悲しむファンの方もいるでしょうし、私の活動を広げようと尽力してくださっているスタッフの方々もいる。3年前ぐらいは、そうした自分の気持ちと周囲の期待のはざまにいたんです。そうした中で、“自分の気持ちをすべてさらけ出したいけれど、うまく伝わるかな?”という不安もあって。私は言葉を巧みに操れるわけではないので誤解も生まれるだろうし、どうしたらいいんだろうと悩んだりしていて。でも、コロナ禍になってライブツアーが中止になったりしたことで、“私は表に出たくないわけではないんだな”という気持ちに気づいたんです。それは自分が目立ちたいということではなくて、会えなくなったことでファンの方が悲しんだり、みんなの心のピースがばらばらになるのは、私もやっぱり悲しくて。求められている限りは何かを発信し続ける意味があるのかなと感じて、それが自分の原動力なんだと気づくことができました。

◆その3年間で自分が成長したなと思うところはありますか?

そうした自分の気持ちをスタッフの方に言えるようになったのは、大きな変化だと思います。これまでは自問自答して乗り越えてきた部分もあって。でも、それは周りのせいではなくて、完全に自分の中で思いを閉じ込めてしまっていたんです。それをちゃんと他者に伝えることができるようになって、弱音を吐ける強さを得ることができたというか。自分では感情を表に出すのが上手じゃないと思い込んでいたけれど、“等身大”と言いつつ、実は自分でいろいろ着飾っていたことに気づいたんです。過去のライブ映像を見ると、今の自分だったらやらないだろうなと思うシーンも多くて。自分の素の気持ちを封じ込めて、“周りの期待に応えよう” “少しでも自分をよく見せよう”という意識でやっていたんだなと思いましたね。もちろんそのときは楽しかったんですが、今の自分だったらもっと伸び伸びできるんじゃないかと思って。それぐらい、ここにきて私の中の人間味がめきめき外に出てきたなというのは感じています。

◆でも、デビューしたばかりの時期に思っていることを言えないのは、ある意味で当たり前かなとも思います。

でも、私は特にそうだった気がするんです。しかも、その葛藤をめちゃくちゃ表に出しちゃうのがめんどくさいですよね(笑)。「大丈夫です!」と言いながら、絶対に大丈夫じゃない顔をしていたと思います。弱いなりのプライドがあったのかもしれないですね。アーティスト活動をさせていただくことの重大さを痛感しながら、“それに私は打ちのめされていません!”とアピールしてるのに、実際はヘロヘロになってた気がします(笑)。

◆自分の感情を周りの人に伝えられるようになったのは、何かきっかけがあったんですか?

もちろん時間が経ったこともありますが、スタッフの方々が私の内心を察して踏み込んでくれるようになったことが大きかったと思います。もともと私は友達をつくるときも、相手から踏み込んでくれない限りは自分から行けないタイプで。だから気づいたら、友達は踏み込んでくれるタイプの人たちばかり(笑)。音楽活動の現場でも、私はアーティスト扱いされるのが苦手で、本当は何でも話せるぐらいの距離感でいたいんですが、自分ではそこまで距離を詰めていけないことが悩みでもあったので、コミュニケーションを通じてそこを少しずつ解決してもらえたのはありがたかったですし、すべてスタッフの方々のおかげですね。ライブスタッフの皆さんも、顔を合わせるたびに「いのりちゃん!」と声をかけてくれたり、そうしたひとつひとつが自分の中で凍っていたものを溶かしていった感じがします。今では悩み事も相談できますし、バックヤードで支えてくれている方たちとそういう関係でいられるのはすごく心強いです。だから最近は、自分のラジオ番組でもスタッフさんの話をすることがすごく増えた気がします。

◆ずっとラジオを聞いていた方は、その変化に気づいているかもしれませんね。

そうですね。最初のころはめちゃめちゃ猫をかぶってましたからね(笑)。すごく舌足らずで、我ながら“もうちょっとハキハキしゃべれるよね!?”と思うんですけど、今となってはかわいいです(笑)。

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