「ノー・エスケープ 自由への国境」も「美女と野獣」も同じ!?映画ライター・高橋ヨシキ&映画監督・松江哲明トークイベント

映画
2017年04月28日

116591_01_R サバイバル・エンタテインメント映画「ノー・エスケープ 自由への国境」が5月5日(金・祝)より全国公開。公開に先がけトークイベントが開催され、映画ライターの高橋ヨシキとドキュメンタリー映画監督の松江哲明が登壇した。

 メキシコ=アメリカ間の移民問題にいち早く目をつけ、構想8年をかけて完成した本作。メキシコからアメリカへ不法入国を試みる主人公・セイモスと移民たち。そんな移民たちが銃弾が突如襲いかかる。襲撃者は正体不明。摂氏50℃、水なし、武器なし、通信手段なしの逃げ場のない砂場という空間で繰り広げられる衝撃の連続に目が離せないソリッド・シチュエーション&サバイバルエンタテインメント。“自由の国”を目指す命懸けの逃走劇が今、始まる――。

 本作に対して高橋と松江は「まさにタイムリーなネタ」と口をそろえる。日本人にとっては想像もできない国境の話でありながら、“アメリカ=メキシコ国境に壁を作る”というトランプ大統領令により、一転全世界注目の場所に。さらに「この作品はゾンビや宇宙人という存在を使わずに、現代のアメリカに象徴される問題をホラー映画化しようとした」(高橋)、「『ゼロ・グラビティ』を手掛けた親子だからこそ生み出せるサバイバル映画。不条理な恐怖を自然の視点で俯瞰している作品」(松江監督)とそれぞれ感想を。

 また本作の特徴として松江監督が「最近のメキシコ映画界の監督たちは、アルフォンソ・キュアロンもアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥもそうですけど、(過剰の表現をせず)抑制している。その抑制している映像がアメリカや世界で受けていて、賞も取りやすい」と映画傾向を分析する。続けて高橋も「過剰にしないのが流行っているよね。『ゼロ・グラビティ』のコンセプトを若いホナス・キュアロンが考えたというのも納得できる」とコメントした。

 高橋は本作を“人間狩り映画”と評し、「追う者と追われる者がいたらその映画は人間狩り映画!つまり世の中の9割9分の映画は人間狩りの映画なんですよ!」と断言し、「まあ僕が見る映画がそういう映画ばっかりなだけですけど(笑)」とコメントし会場を笑いに包んだ。すると松江監督が「『美女と野獣』もそうですもんね!あ、あれは野獣狩りか(笑)」と言い、会場はさらに盛り上がった。「まぁ(野獣も)元は人間ですからね。広く言えば人間狩り映画か」と松江監督が続けると「あれは“たいまつ狩り”!『フランケンシュタイン』のように愚かな村人たちがたいまつを持ってバケモノを狩る、というジャンル」と独自な解釈を展開した。さらに「なぜこんなに人間狩りが面白くて響くかというとシンプルだから。例えば鬼ごっこは、鬼も逃げるほうもどっちも楽しいじゃないですか。それって人間の本質的な部分で面白いと感じるんですよ。この映画は追う、追われるというシンプルな構造がすごく良かった」と語った。

 そして本作のタイトルの出方について松江は「今は最後にバーン!とタイトル出る映画が多い。タイトルを最後に出す映画はずるいと思ってるんですよ。でも、自分の作品でもやっちゃって、最初と最後にタイトルを出しちゃう。あれがカッコいいんですよ~(笑)」と照れ臭そうに語った。この発言に高橋は「最初にタイトル出してくれないと、スクリーン間違えてても気づかないじゃんね。最後にバーン!とタイトルが出ていいのは『ロボコップ』だけだよ」とコメントし、最後まで会場を笑いに誘い、和やかな雰囲気のままイベントが終了した。

 映画「ノー・エスケープ 自由への国境」は5月5日(金・祝)よりTOHOシネマズシャンテほか全国ロードショー

<キャスト>
ガエル・ガルシア・ベルナル(『バベル』)ジェフリー・ディーン・モーガン(「ウォーキング・デッド」シリーズ)
<スタッフ>
監督:ホナス・キュアロン(『ゼロ・グラビティ』共同脚本
プロデューサー:アルフォンソ・キュアロン(『ゼロ・グラビティ』監督)
脚本:ホナス・キュアロン、マテオ・ガルシア 字幕翻訳:松浦美奈 
配給:アスミック・エース <PG12>
公式サイト:desierto.asmik-ace.co.jp

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