小塚崇彦インタビュー「スケート人生に映画や音楽がくっついて残っている」ムービープラス「この映画が観たい」

特集・インタビュー
2018年01月30日

CS映画専門チャンネル「ムービープラス」で放送中の人気オリジナル番組『この映画が観たい』2月放送回は、フィギュアスケーターの小塚崇彦さんが登場。番組内では、自身のオールタイム・ベスト映画を紹介しながら、映画音楽と演技の関係をトップスケーターの視点で語ってくれた小塚さん。さらに目前に迫った平昌オリンピックへの思いも伺いました。

小塚崇彦インタビュー

◆“オールタイム・ベスト”5作品を選ばれましたが、「ホーム・アローン」以外はご自身が滑った音楽の映画となりましたね。

思い入れのある映画ということになると、やっぱりスケートを滑っている時の曲が最初に浮かんできました。でも、それだけでもなんだなと思い、小さいときの思い出が詰まった「ホーム・アローン」を入れました(笑)。

◆あまり迷わずに決まりましたか?

自分の中でどんな曲で滑ってきたかなと思ったらポン、ポン、ポンと決まりました。
収録で話をしていて、映画というものは思っていた以上にスケートと密接な関係があるんだなというのを感じました。自分への発見もありましたね。
皆さんも青春の1ページと共に音楽や映画があると思うんですけど、僕の場合はスケート人生というものがほぼ大半を占めていたので、その1ページとして映画や音楽というのがくっついた状態で残っているんだなというのを再確認しました。

◆番組で音楽を先に聞いてから映画を見ているパターンが多いとお話しされていましたが、この曲で滑るんだと思いながら見ると見方は変わりますか?

演技ではクラシックを使うことが多いんですが、クラシックはそういったイメージがないんです。自分の色に染まりやすい。映画の音楽になると、映画のイメージがあるじゃないですか。審判員の人たちにもそのイメージがもともとついている。だから、それを自分の色にすることの難しさは経験していました。

真似をすればその雰囲気にはなるんですが、僕が「パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち」の曲で滑ったときには6、7人が同じ曲でかぶっていて、はっきりいって埋もれちゃうんですよね。

それが「ロミオとジュリエット」につながっていて、物語としては最後にロミオが死んでいくんですけど、僕は殺さず最後は告白してハッピーエンドで終わるというところで締める演技にしました。そういったところは「パイレーツ~」のころからちょっと大人になって、頭の中で構成を考えて、これなら他の人に埋もれないなとか、そういう成長があったんだなと思います。

◆「ロミオとジュリエット」では、ロミオになったというイメージですか?それとも初々しい恋の物語を描いたというイメージですか?

映画の途中までのロミオを演じたという感じですね。「栄光への脱出」についてはあの音楽を演じていたっていう感じです。誰をっていうわけじゃなくて、音楽の壮大さだったりとか、人の心が動く何かを引き出すことを目指して、音楽とマッチした動きというか、そういったものを表現しました。

◆登場人物を演じるのと、作品全体を演じる違いは?

「ロミオとジュリエット」でロミオを演じるのか、全体の映画を演じるのかでだいぶ違っていて、映画はいろんな人が出ているので、いろんな感情を表現しなければいけない。ロミオ1人を演じるならロミオの感情を表現すればいい。何を軸に置くかっていうのが大事になるんです。

◆小塚さんがやりやすいのは?

僕はどっちかというと全体を演じている方が演技はしやすいです。というのは、あまり固定観念がないから。ロミオはこういう人だっていう固定観念が皆さんそれぞれの中にあると思うんです。その平均をとって“これ”というのはないわけで、それを導き出すのは無理ですよね。
ということは、自分なりのロミオを演じなければいけなくて、それが採点されるとなると、このロミオは違うよっていう人もいれば、このロミオいいねって思う人もいる。その不確定なものを演じるっていうのはなかなか難しくて苦手でしたね。僕は自分のものとして演じる、それを認めてもらえるというほうが演じやすかったです。

◆小塚さんにとって、音楽は自分のスケートにとってどんなものですか?

自分と合っていれば気持ちよく滑らせてくれる存在でありながら、なかなか合わない曲というのがあって、それはそれで自分を成長させてくれる存在なんです。自分の中にはない感性を生むわけですから。しっかりと曲を通じて成長していくということが音楽との付き合い方ですね。
皆さんにはジャズとかクラシックが僕に合ってると言われることが多いんです。ただ、成長させてくれるという意味では、真似をするターゲットがいて、それに近づいていこうとするという映画音楽がいろいろと成長させてくれる。ジャズやクラシックはそのまま滑っちゃえば自分に合うんですけど、そこで1つ、壁じゃないですけど、それを作ってくれるのが映画音楽です。
同じジャンルばかり滑っていても器は広がっていかないし、スケートって試合だけで終わりではなくて、アイスショーもありますし。いろんな曲、いろんなジャンルを滑らなきゃいけないっていうのは、佐藤有香さんにもずっと言われていました。

◆最後に、いよいよ平昌オリンピックが始まりますが、選手たちにエールをお願いします。

出場する選手には、自分が思い描いていた演技をしてもらいたいです。それができればメダルは近づいてくると思うので、まずは挑戦する気持ちを忘れないこと。
オリンピックという場所は、たくさんのいろんな人がいて、選手村もそうですし、スケートだけじゃないし、いろんな人と友情を分かち合うということもしてもらいたい。
いましっかりと練習や経験を詰めこんで、オリンピックでしっかり演技してもらいたいなと思います。

 

■PROFILE

小塚崇彦●こづか・たかひこ…1989年2月27日生まれ。愛知県名古屋市出身。
フィギュアスケート一家の長男として生まれ、3歳でスケートに初挑戦。
5歳の時に幕張で開催された世界選手権を観戦し、優勝した佐藤有香氏の演技に感化されて、本格的にフィギュアスケートを始める。
以降、2016年3月の現役引退まで、日本を代表するトップスケーターとして活躍する。
現在は、フィギュアスケートをはじめとしたスポーツの普及活動を中心に、活動の幅を拡げている。

 

■番組情報

小塚崇彦インタビュー「この映画が観たい#53 ~小塚崇彦のオールタイム・ベスト~」
自身の人生に影響を与えた映画について語る、ムービープラスの人気番組。今回、小塚崇彦が挙げたオールタイム・ベストは、「ホーム・アローン」「パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち」「ロミオとジュリエット」「風の谷のナウシカ」「栄光への脱出」の5作品。

CS映画専門チャンネル・ムービープラス
2月5日(月)23:00~23:30ほか

番組ページ(http://www.movieplus.jp/guide/mybest/
ムービープラス公式サイト(http://www.movieplus.jp/

関連番組
「特集:フィギュアスケート×映画音楽」
2月5日(月)~8日(木)13:30ほか

浅田真央がGPファイナルで使用した「オズの魔法使」をはじめ、5人のフィギュアスケーターがプログラムで使用した音楽の映画を特集。映画放送直前には、小塚崇彦が解説するミニナビの放送も。

村上佳菜子×「マスク・オブ・ゾロ」
鈴木明子×「ウエスト・サイド物語」
アレクセイ・ヤグディン×「仮面の男」
浅田真央×「オズの魔法使」
織田信成×「ラスト サムライ」