及川光博インタビュー「心を優しく抱きしめてくれるような終わり方だとうれしいなって」『最愛』

特集・インタビュー
2021年11月18日

『最愛』及川光博インタビュー

殺人事件の重要参考人となった女性実業家・真田梨央(吉高由里子)と、彼女を追う刑事で梨央の最愛の人でもある宮崎大輝(松下洸平)、そして梨央を支える弁護士・加瀬賢一郎(井浦新)の3人を中心に描かれるサスペンスラブストーリー『最愛』(TBS系 毎週(金)後10・00~)。梨央が社長を務める「真田ウェルネス」の専務・後藤信介を演じている及川光博さんが、出演に至った経緯や“不気味ッチー”へのこだわりを語ってくれました。

 

◆今作の出演を決めた一番の理由は何でしょうか?

プロットを読んだ時、残酷な事件とロマンスの融合を見てみたいと思ったのと、塚原あゆ子監督とまたご一緒できるが決め手でしたね。2019年にドラマ『グランメゾン東京』という作品で塚原監督と初めてご一緒させていただいた時、楽しい思い出しかなかったんです。打ち上げの時に、「ぜひまたご一緒したいです」と伝えていたのですが、そうしたら今回、チャンスが巡ってきたので、“これはご縁だな”と思ってお受けしました。『グランメゾン東京』で僕が演じた相沢と今作で演じる後藤は全く違うキャラクターなので、どう料理していただけるか楽しみでしたね。

◆現在第5話まで放送されています。後藤のキャラクターをどのように掴み、どのように演じられていますか?

後藤は第4話冒頭のモノローグであったように、孤独で会社が大好きな人間だと思っています。おそらく、完璧主義で人を信用していないんじゃないかな。ただ最近、薬師丸ひろ子さん演じる梓さんに対する感情は、ちょっとスペシャルなんじゃないかなと気になっていて。梓さんにふと人間的な表情を見せることがあるんですよ。どう思っているんでしょうね(笑)。

『最愛』及川光博インタビュー

◆新井順子プロデューサー、塚原あゆ子監督から言われて印象に残っている演出などあれば教えてください。

打ち合わせの時に、基本的に「無表情で何を考えているか分からない男」「不気味な存在感」ということを言われて、現場では余計な表現をしないように努めています。新井プロデューサーからは「不気味ッチー最高です!」と、塚原監督からは「素敵です♡」って言われるくらいで(笑)、特に指示などはないです。強いて言えば、後藤の癖ですかね。第1話撮影中に、塚原さんと「後藤の癖って、何だろう?」と一緒にに考えて、襟を直すという癖をプラスしました。なので、やりすぎない程度に襟を直しています。第5話の井浦新君演じる加瀬に迫られて肩をつかまれた時、払いながら直すというアドリブが自然と出ました。

◆後藤を演じるにあたり、「癖のある衣装がいい」と提案されてマオカラーになったとのことですが、他にこだわったところなどはありますか?

メイクさんがかなり細かくキャラクターデザインをしてくれて、わざと前髪をうねらせたり、整髪料でツヤを出して気持ち悪さを演出しています。後藤の不気味な存在感を出すために、みんなで細かいところを気持ち悪くしているんですが、僕自身それが楽しくて。演じるに当たっては、表情筋を極力使わず、身振り手振りも封印してます。これは僕が意識してやっていることなんですけど、動かないからこその感情表現は難しくもあり、楽しくもあります。

『最愛』及川光博インタビュー

◆今回のドラマのタイトルにちなんで、後藤の“最も愛おしい”と感じるところを教えてください。

衣装についてなんですけど、後藤は社内などではマオカラーなんですが、帰宅時や外出する時はスーツにネクタイ姿になるんですよ。第2話で梓さんと食事をする時もスーツ姿で。ここが愛しいポイントですね! 後藤は出社してわざわざマオカラーに着替えているんですよ(笑)。きっとマイルール、後藤の美学なんでしょうね。ちゃんと専務室にバリエーション豊かなマオカラーがハンガーラックにそろっているんです。これは台本上、どこにも説明されていないんですが、気づいてしまって。そこが愛しいですね。「どんなこだわりなんだよ」っていう(笑)。人として愛しいなって思います。

『最愛』及川光博インタビュー

◆第4話では鼻血を出すシーンもありましたね。

皆さん、鼻血の話題が大好きですね(笑)。少なくとも家族は大変喜んでいましたね。とにかく画的にインパクトがあるじゃないですか。少しでも爪痕を残せたという点では、鼻血を出して良かったです(笑)。鼻血を出すことについては、クランクインして、早い段階で監督から相談されていて。「全く問題ないです」と二つ返事でした。本番では、何度もやれるシーンではないので、“全集中!鼻血の呼吸”で出しましたね(笑)。無表情のままっていうのが楽しい。デヴィッド・リンチ的な不条理というか、シュールな映像美学、そういったことを個人的には意識しました。

◆ “不気味ッチー”に対するファンの方からの反響はいかがでしょう?

うちのベイベーたちは慣れたものですよ。嫌味な役をやれば、“嫌味ッチー”、キザな役をやれば、“キザミッチー”など、僕のバリエーションをみんな楽しんでくれていると思います。

◆“不気味ッチー”は演じていて楽しいですか?

楽しいですね。ただこの1クールでいいかなと(笑)。この役どころがずっと続いたら、ちょっとつらいなって(苦笑)。

◆ヒールを演じる楽しさや難しさはどこでしょう?

日常の自分と全く切り離せるところは、お芝居ならではの楽しさだと思います。僕は役に引っ張られるタイプではないので、その切り替えを楽しんでます。難しさは、たたずまいや所作に自分らしさがでないようにすること。そこは湯船に浸かりながら台本を読んでいる時も現場への移動中もイメージトレーニングですね。かなり意識しないとキラキラしちゃうので…(笑)。

『最愛』及川光博インタビュー

◆本作は主人公と対立する役どころですが、及川さんは仲間側と対立する側、どちらにより面白さを感じていますか?

演じるという意味では、どちらも面白いです。僕の場合、仲間側にいても、いつ裏切るか分からないっていうパターンが多いんですよ。打ち合わせの時に、「あとあと裏切りますか?」って聞きたくなるくらい(笑)。だから、どちらの側にしても、エンターテインメントとして多くの人に楽しんでもらえるよう、いつでも心変わりできるように備えています。

◆では、対立する側を演じるやりがいは?

対立構造をはっきりさせることによって、視聴者の皆さんがより主人公に感情移入できるところです。そういった意味では、敵は手強いほうが面白いし、ドラマが盛り上がるじゃないですか。なので、そこにやりがいを感じます。

『最愛』及川光博インタビュー

◆共演者の皆さんの印象はいかがでしょうか?

吉高ちゃんは天才です。とにかく切り替えがすごいんです。本番前は、出演者やスタッフさんたちとキャッキャッと談笑しているのですが、いざ本番となった時の演技は素晴らしいなと。僕もカットがかかるとただのミッチーに戻るので、そこでは吉高ちゃんと、昭和のオヤジギャグとかを言い合ってキャッキャッしてます(笑)。井浦さんはマイペースで、物事の掘り下げが深い方だなと思います。学者肌と言いますか。基本はニュートラルでいて、ご自身で自分の色を決めないからこそ、いろんな役柄にハマるんだろうなと思います。田中みな実さんは頑張り屋さん。集中力がすごいんですよ。楽屋でごあいさつする時は、ほがらかに笑顔でお話するのですが、現場に入ったらずっと役のまんまで。セルフプロデュースもできる方だから、意識を抜本的に変えているんだと思います。(松下)洸平とは全然絡むシーンがないんですよね、仲が良いのに…。現場ですれ違ったりはするんですけど、以前『#リモラブ~普通の恋は邪道~』で共演した時と比べて、陸上部出身という役柄もあって、日焼けして逞しくなっているし、さらにマスクもしていたので、最初誰だか分からなかったです(笑)。

◆どのようなエンディングになることを予想されていますか?

個人的に、市川崑監督が描く金田一耕助シリーズが好きなんです。なので、後味は悪くても構わないので、ラストシーンは何か心を優しく抱きしめてくれるような終わり方だとうれしいなって。

◆最後に、後半へ向けて後藤の見どころをお願いします。

やはり、後藤や「真田ウェルネス」にしつこく付きまとってくるフリー記者の橘しおり(田中)とどう決着をつけるのか。後藤が最も隠したかった真実とは何なのかに注目していただけたらと思います。そして、次の鼻血チャンスはいつくるのか(笑)。ドキドキしながら見てください。

PROFILE

『最愛』及川光博インタビュー

及川光博
●おいかわ・みつひろ…1969年10月24日生まれ。東京都出身。最近の出演作は、ドラマ『グランメゾン東京』『#リモラブ~普通の恋は邪道~』『半沢直樹』『ドラゴン桜 第2シリーズ』など。

番組情報

金曜ドラマ『最愛』
TBS系
毎週金曜 後10・00~10・54

<第6話(11月19日放送)あらすじ>
加瀬(井浦新)は、警察に連行された優(高橋文哉)と面会し、15年前の事件だけでなく昭(酒向芳)の殺害も自らがやったことだと告げられる。さらに、公園で昭と争った時の様子がイヤホン型カメラに記録されていることを聞き出し、その動画データを解析することに。
そんな中、優の処遇を心配し不安に怯える梨央(吉高由里子)。心配して訪れた加瀬から優が置かれている状況を聞き、優しく励まされながら何とか眠りにつくのだった。
梨央が優のことで後藤や兄・政信(奥野瑛太)から社長としての責任を追及される一方で、加瀬が民間の科捜研に依頼していた動画データの解析が完了。加瀬はある疑問を抱く。また大輝(松下洸平)ら警察も、優の証言による裏取をもとに現場周辺で聞き込みを進める中、新たなタレコミがあり…。

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