金子大地インタビュー「頼家よりもっともっと、僕は弱い」『鎌倉殿の13人』

特集・インタビュー
2022年08月28日
『鎌倉殿の13人』源頼家(金子大地)©NHK

現在放送中の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK総合 毎週日曜 午後8時~8時45分ほか)で、源頼家役を務める金子大地さん。

大河ドラマ第61作は、鎌倉幕府の二代執権・北条義時(小栗旬)が主人公の『鎌倉殿の13人』。平安時代末期から鎌倉時代初期を舞台に、野心とは無縁だった義時がいかにして武士の頂点まで上り詰めていくのかが描かれる。

権力継承の時は突然訪れた。亡き源頼朝(大泉洋)に次いで二代鎌倉殿についたのは息子・源頼家(金子大地)。まだ若き殿を囲むのは“補佐”を謳い、欲に溺れる13人の御家人たち。比企と北条の対立により、ますます煩雑を極める関係性に頭を抱える日々の中で、頼家には周囲への不信感が募っていく。

第32回(8月21日放送)では危篤から一転、奇跡的に回復を果たすも鎌倉は既に千幡(源実朝)を新たな鎌倉殿とした新体制に向けて動き始めており、出家した頼家は修善寺へと送られることに。最愛の妻・せつ(山谷花純)と長男・一幡(相澤壮太)を討たれたことや、母・政子(小池栄子)にも真実を明かしてもらえないことを察した頼家は、何も信じることができなくなり失意に沈む。

「ただただ未熟で暴君なイメージではない、魅力的な頼家像になったのではないかなと思います。それがすごくうれしかったですし、大好きな役です」。そう語るのは、頼家を演じる金子大地さん。頼家、そして『鎌倉殿の13人』と向き合う日々の中で感じたことをお話しいただきました。

金子大地 インタビュー

『鎌倉殿の13人』左から)源頼朝(大泉洋)、万寿(のちの源頼家/金子大地)©NHK

◆源頼家は第23回(6月12日放送・当時の名は万寿)で初登場しました。本作の撮影に初めて参加した頃のことを覚えていらっしゃいますか?

途中からの参加ということでものすごく緊張していたんですが、皆さんが温かいムードで迎え入れ、ほぐしてくださったのですごくありがたかったです。

◆金子さんにとって、本作の源頼家という役との出会いはどんなものでしたか?

まず、演じさせていただけるというだけで本当にうれしかったですし、全力で挑もうと思いました。三谷(幸喜)さんが、いろんなことに追いつけていない中でも一生懸命頑張る頼家の姿を不安や孤独も含めて描いてくださったので、ただただ未熟で暴君なイメージではない、魅力的な頼家像になったのではないかなと思います。それがすごくうれしかったですし、大好きな役です。

◆頼家とご自身に共通する部分はあるのでしょうか?

僕は割と周りを頼ることができるタイプだと思うんですが、頼家はそこに逃げないんです。ある意味、肝が据わっていて覚悟がある。僕には絶対にできないことですね。頼家よりもっともっと、僕は弱いと思います。

◆頼家の政(まつりごと)にはどんな印象をお持ちですか?

政子と頼朝の息子というだけあって、頼家は本当に頭が切れて武術の才能にも長けている人物だったと聞いていました。でも実際に鎌倉殿になった時、そういった部分が光る前に対・御家人という関係性が生まれてしまった。いろんな人を信じて弱みを見せることができていたら、もう少しうまくいっていたかもしれません。でも、実際にあの時代にそれをやるというのは相当難しかったと思います。

『鎌倉殿の13人』源頼家(金子大地)©NHK

◆演じていく中で発見した頼家の一面があれば教えてください。

やはり源頼朝という偉大な人物と時代を作り上げていった人たちと対峙するというのは、すごく緊張することだったと思います。そんな中でも、それなりに覚悟がないと言えない言葉を頼家は言い切ることができるんですよね。演じていく中で、その「言い切る」ということがどれだけすごいことなのかを実感しました。
あとは、頼家が1人で蹴鞠をしているシーンも頼家のことを知るきっかけの一つになりました。いろんな大人たちに囲まれる中で誰を信用し、頼ったらいいのかわからず頭がパンクしそうだった頼家は、そういった感情を蹴鞠で紛らわせようとしていたんじゃないかなと想像しています。

◆ところで、13人の御家人たちを従えて誰よりも若い鎌倉殿(頼家)が上座に座る姿も印象的でした。

まず僕の気持ちから言わせていただくと、圧がすごくて怖かったです(笑)。「ここで弱みを見せてしまったら負けだ」というような気持ちを抱えて撮影に臨みました。でも、頼家はどうだったのかな…生まれながらにしての立場もありますし。僕自身はすごく背伸びをした状態で臨むことになりました。

◆どんな頼家像になったと感じていますか?

いずれは鎌倉殿になることが、頼家の場合は生まれた時から決まっていたので、頑張ろうとか、父を超えて鎌倉を良くしていきたいという気持ちはすごく強くあったと思うんです。でも、あまりにも早い段階で鎌倉殿になってしまったので、誰もが「本当にあの人でいいのか」と疑念を抱いたんですよね。それは頼家自身が一番、感じていたことだと思います。
とはいえ、最初からまるで自分を頼る気がない、欲にまみれた大人たちに囲まれるというのは本当に嫌で嫌で仕方なかったはず。何より、何をやっても源頼朝という圧倒的なカリスマと比べられてしまうことに重みをすごく感じていたと思います。「18歳で征夷大将軍になる」ということも、ドラマとして見ているとつい流れで見てしまうけれど、実際は相当な重圧や不安があったと思います。僕自身も、そういった苦悩や葛藤がどこかに垣間見えたらいいなと思いながら役に向き合っていきました。

『鎌倉殿の13人』©NHK

◆ちなみに、オンエアを見ている時はどのようなことを考えていらっしゃるのでしょうか?

頼家を演じるすごく余裕のない自分が出てきて、「全然余裕がないな…」と思ったり(笑)。でも、見ている方にはそれが緊張感として伝わることもあるようで、逆によかったのかもしれません。頼家に対して「切ない」「かわいそう」という印象を持ってくださっている方がいらっしゃって、それは僕の苦悩が伝わっているような気がしてうれしかったです。

◆さて、ここからは最近の展開について振り返っていきたいと思います。危篤の頼家が奇跡的に一命をとりとめ、目を覚ましますが、既に周囲は頼家が去ったその先を見据えて動いていました(第31回・8月14日放送)。それを察知した頼家はどんな気持ちだったのでしょう?

とにかく絶望…というか、怒りなのかもわからない。頭が真っ白になるような、言葉ではとても表し難い感情でしたね。

◆その思いの矛先はどこに向いていたと思いますか?

裏切られたと思うのは、信頼しようと思っていたから。その思いが強ければ強いほど、怒りや絶望も強いと思うのでやっぱり…北条ですかね。特に義時(小栗旬)は兄弟のようにいつも支えてくれていた存在だったので、相当な怒りがあったと思います。

『鎌倉殿の13人』左から)政子(小池栄子)、源頼家(金子大地)©NHK

◆そして、第32回(8月21日放送)の政子が頼家の元を訪れるシーンでは、頼家が激昂するひと幕もありました。

意外にもこれまでは母上とのシーンがあまりなくて、そこでやっとちゃんとぶつかったんです。とても大事なシーンだったので僕自身も相当精神を削られました。怒りとか憎しみとか、絶望とか、それ以上のもっと重い悲しみと溜まっていたものが爆発したんですよね。撮影もすごくきつかったです。

◆政子を演じる小池栄子さんとはどのようなコミュニケーションを取られていましたか?

政子は北条の人なので関係性が複雑ということもあり、小池さんとのシーンは毎回緊張しました。頼家は本当はもっと政子に弱い部分を見せたかったんじゃないかなと思うんですが、そんなことを言えるはずもなく…むしろ、もっとたくましい自分の姿を母親に見せたいという気持ちが強まっていって。なので、小池さんと僕の間にもどこか距離があったのかもしれません。
でも、小池さんからの愛情は僕にすごく伝わってきていました。第32回は小池さんにとってもつらいシーンだったと思いますが、政子の母としての存在感をリアルに感じる時間でしたし、本当に母のように思っていました。

◆父・源頼朝役の大泉洋さんとはどんなコミュニケーションをとられましたか?

大泉さんが先に撮影を終えられたのですが、27、28話のオンエアが終わったぐらいの頃にお会いする機会があり、「幽霊として出ていろんなことを助言したい」とおっしゃっていて(笑)。僕は「ちょっと死ぬのが早すぎます」と伝えました。

『鎌倉殿の13人』左から)北条義時(小栗旬)、源頼家(金子大地)©NHK

◆では、北条義時役・小栗旬さんとの共演はいかがでしたか?

本作に取り組んでいく中で、小栗さんの存在はすごく大きかったです。上手く演じられなくて自信をなくしていた時に「大地、本当に好きなようにやっていいよ」「満足できない時、言いづらかったら俺に言ってくれれば『もう1回、今のカットやりませんか』と言うから、とにかく何でも言って」と声をかけてくださって。その言葉を受けてもっと自信を持ってやろうと思えましたし、義時と2人の芝居でもぶつかっていこうと。何より、小栗さんの優しさにすごく救われました。お芝居中も「大地、このせりふは俺がどう言えば言いやすい?」と、ずっと僕が演じやすくなることを優先して一緒になって考えてくださって。お忙しいのに僕のために時間を割いてくださって、愛を感じます。小栗さんの存在がなかったら、僕は演じきれなかったと思います。

◆最後に、源頼家という役を演じていく中で、金子さん自身にはどんな変化がありましたか?

技術面で挑み、演じることができたとは全く思っていなくて、本当に純粋に取り組んでいました。リハーサルも本番も自信がなくて終始不安で「これでいいのかな」と探りながらやっていましたし、オンエアを見ていても思います。でも、どこか吹っ切れた瞬間があったのかな。頼家と気持ちがリンクして、僕の心情をそのまま「頼家にのっけてしまえ!」と思う瞬間がありました。最終的には頼家に自然と感情移入できていたので、この経験は僕にとってかけがえのないものになりました。
そして、みんなの力で作品がこんなにも良くなるんだということをあらためて感じられました。現場の一体感や座長のすごさを体感できる、物作りへの熱量がある座組に入れたことが一番の幸せです。本当に良い作品に出会えたなと心から思っていますし、これからどんな作品に入る時も本作と同じように熱量をもってやっていきたいです。

『鎌倉殿の13人』源頼家(金子大地)©NHK

番組情報

大河ドラマ『鎌倉殿の13人』
NHK総合:毎週日曜 午後8時~8時45分
BSプレミアム/BS4K:毎週日曜 午後6時~6時45分

この記事の写真

©NHK