松永大司監督&武正晴監督が語る“役者・村上虹郎”の魅力とは?

映画
2018年11月24日

映画『ハナレイ・ベイ』『銃』コラボトークイベント 映画『ハナレイ・ベイ』と『銃』のコラボトークイベントが開催され、両作品に出演した村上虹郎と、『ハナレイ・ベイ』の松永大司監督、『銃』の武正晴監督が登壇した。

 つい先日『ハナレイ・ベイ』を鑑賞したという武監督は「松永監督、よくやったな!という感じでしたよ」と語り「『ハナレイ・ベイ』は『銃』と似ている。あえてすべてを開示することをせず、場所と演出を使って表現するという挑戦的な映画。でも人間の内面にカメラを向けていると感じました。それは僕も『銃』で挑戦していることです」と明かした。

 さらに「吉田羊さん演じるサチが10年後に虹郎演じる青年と出会い、その青年が物語の途中から作品世界をかき回していく。主人公に寄り添っていく役だと思いますが、その役割を『銃』ではリリー・フランキーさんが担っているんです」と2作品の共通点を語った。

 また「音楽、特にイギー・ポップの『The Passenger』がずるいですよね。すごくいい。実は私はずっと『銃』の撮影中にこの『The Passenger』を聞いていたんです!あまりの共通点の多さにびっくりしました」というエピソードを明かすと、観客からは驚きの声が上がった。

『ハナレイ・ベイ』主演の吉田羊について、松永監督は「『銃』では監督と虹郎が心中する覚悟だったんだなと感じますが、(僕も)吉田さんと心中する覚悟でした」と撮影時を振り返った。

 武監督も吉田の演技に「(松永監督は)吉田さんの演技を絞り出しやがったなと。吉田さんを超えて主人公のサチだった。“松永さん、どんなことしたんだ”と思いました」と絶賛した。

 松永監督は“高橋”役を村上が演じることになり、脚本を村上に寄せて変更を加えていったと明かし「虹郎が高橋を演じてくれて、吉田さんのサチという役を引き出した」と村上の魅力に触れた。

 現場では高橋の友人“三宅”役を演じた佐藤魁のコンビネーションが賭けだったと語り、ファーストテイクを何度か粘って撮り直したあとは村上と佐藤の関係性を信じたという松永監督。佐藤は実際にプロサーファーということもあり、村上からは「サーフィンシーンの撮影中に『いい波に乗りたい』といって(予定外の)沖に向かっちゃう」という裏話も明かされた。

『銃』の撮影後に『ハナレイ・ベイ』の撮影現場に入ったという村上は「役柄的に解放感があった」と2作品の違いをあらためて実感した様子で撮影当時を振り返った。

 武監督は、劇中で高橋がサチに告げる、サーフィン中の事故で亡くなった息子タカシと同じセリフ“さいなら”の演出に「映画を一人で観ながら思わず『しゃれた映画だなー!』って言っちゃったよ」と語り、観客の笑いを誘った。

 その後武監督から「せっかくだしお客様から質問をもらおうよ!」と提案があり、急きょ観客からの質問を受けることに。

 早速、監督2人に「それぞれの作品の中で、この村上虹郎はすごい!というシーンはどこですか?」という質問が。

 武監督は「虹郎の鼻の穴が動き、鼻の穴まで芝居しているところ」と回答。役者の本能がそうさせている、とあらためて村上の演技を絶賛した。

 それに対し松永監督は「とにかくこの人(村上さん)は面白い。監督のイメージを越えてきてくれる。もっともっと一緒にやりたいな、と思わせてくれる役者です」と語った。

 村上に「それぞれの作品の中で、自分こんな顔するんだ、とか発見があれば教えてください」という質問が挙がると「『銃』の中では、なんで自分あんな行動したんだろう、と感じるほど、自分のその時の想いがきちんと反映されていると感じました」と。

 一方「『ハナレイ・ベイ』では大人な虹郎が観れますよ!(本業が役者ではない)佐藤魁がいたから、このセリフは自分が発するべきなのか、魁が発するべきなのかと、自分がきちんと考えることができた。計算して演技することができた気がします」と明かした。

 最後は、観客からのリクエストに村上が応え、『ハナレイ・ベイ』の印象的なフレーズ「さいなら~」を披露。会場から大きな拍手が湧き起こった。