安田顕インタビュー「あえて悪人を演じる必要はない」『連続ドラマW 絶叫』

特集・インタビュー
2019年03月23日

1人の平凡な女性が犯罪に手を染め、転落する壮絶な人生を描いた、葉真中顕の小説をドラマ化した『連続ドラマW 絶叫』。尾野真千子さん演じる主人公・陽子と共に保険金殺人に手を染めるNPO法人代表・神代武を演じる安田顕さん。キャリア史上最凶とも言える男を演じるに当たっての役作りなどについて聞きました。

安田顕インタビュー

◆原作・脚本を読んだ時の率直な感想は?

とにかく主人公の陽子の心情が切なかったですね。タイトルと同じような絶叫と言いますか、慟哭と言いますか、言葉にならない雄叫びと言いましょうか。まずは、そのことを強く感じました。

◆神代武という、これまで演じたことのない悪人を演じることについては?

自分と同じような境遇にいる女性と出会い、彼女を放っておけない気持ちから、一緒に住むことになり、「DV男を殺してほしい」という彼女の頼みを受け入れる。社会的に許されることではないですが、本人自体はそこに対する罪悪感はないというか、そうするしかなかったと思うんです。だから、彼が起こす行為が悪いだけであって、僕自身は悪い人をあえて演じようという必要はないと思いました。

◆そんな中での今回のお芝居のアプローチについて教えてください。

関西弁をまくしたてたりそれっぽい服装を着たりなど、見ていただければすぐ分かるところもあると思うんですよ。でも芝居のアプローチとしては見た目が温和なイメージの人が怖いことをするマイナスイメージじゃなく、見た目がヤバい人が優しいことをすることのギャップですね。それによって、彼が多くの人を惹きつけるカリスマ性みたいなものを出せるんじゃないかと思いました。

『連続ドラマW 絶叫』
『連続ドラマW 絶叫』

◆陽子にとって、彼は“底のない沼”と称されるような存在になりますが、その点についてはどのように表現されようと思われましたか?

自分の中にそういったものがあるかは分からないので(笑)、「こういう役を、あなたに演じてほしい」と選んでくださった人の言葉を信じて、取り組むしかなかったです。あとは、作品を見てくださった方がどのように評価してくださるか。実際の僕は彼と違って、気が弱いですし、うじうじしやすい性格なので、そのような感じが出てなかったら成功していると思います。

◆陽子を演じた尾野真千子さんとの共演はいかがでしたか?

尾野さんが僕の初主演映画「man-hole」(監督は鈴井貴之)に出演されていたんですが、直接の絡みはなかったんですよ。尾野さんが作品に取り組む姿勢がすごいと思ったのは、僕と取っ組み合いをするシーンで、カットが割られたときも、流れではなく、しっかり時間の経過を考えられて、お芝居をされていたこと。お芝居に対して、対役者さんに対して、真摯に向き合ってやられている方だと実感しました。

◆また、安田さんから見た陽子という女性の魅力とは?

亡くなった弟さんや、疎外感や孤独を植え付けた母親への思いなど、やはり切なさだと思います。そしてちょっとした角度の違いから、あのような家族の形になってしまって、神代武という男と出会った。自分の意図しないところで堕ちていく感じ。こういった話が実際にあるかもしれないというリアリティーも感じられました。

◆映画のようとも言われるWOWOW制作のドラマの魅力を教えてください。

1シーン、1シーン、すごく丁寧に時間を懸けて撮っていただきました。視聴者の皆さんに楽しんでもらうための作品を作る思い、ひたむきに取り組む姿勢が現場にも表れていたと思いますし、そういう作品に参加できたことはうれしかったです。ちなみに血糊を使った壮絶なシーンも和気あいあいでした。過去に出演したホラーもそうでしたが、そういう作品の方がみんな一致団結するんでしょうかね(笑)。

安田顕インタビュー

◆6月に公開される映画「ザ・ファブル」でも関西弁をまくしたてる怖い人(暴力団の若頭)を演じられていますよね。

そうなんですよ(笑)。映画「小川町セレナーデ」の後に、ドラマ『問題のあるレストラン』で女性らしい男性を演じることになったり、映画「愛しのアイリーン」の後に、「母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。」でも母親が重要な位置を占める息子を演じることになったり、作品が完成する前で誰も見ていないのに、同じような役やシチュエーションを演じることが続くんですよ。なんか不思議ですね。誰かが「今、こういうことにチャレンジされてはいかがですか?」と言ってくれているのかな。僕自身は似たシチュエーションだからちょっとキャラを変えてみようとか思うのは失礼だと思っています。あくまでも別の作品なので。

◆最後にドラマが放送される春にちなみ、この春から始めたいことを教えてください。

そろそろ花粉の薬を病院に行ってもらおうと思います。あれは忘れた時にやってきますし、市販の薬で何とかなるだろうと思っても、ならんのですよ!だから、ちゃんと受診して、しっかり頂こうと思います。小さいころにアレルギーの人ってあんまりいなかったと思うので、自分が花粉症になっていてなんかビックリしています。

 

■PROFILE

●やすだ・けん…1973年12月8日生まれ。北海道出身。A型。主演映画「母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。」が現在公開中。出演映画「ザ・ファブル」が6月21日(金)公開。

 

■番組情報

『連続ドラマW 絶叫』
WOWOWプライム
3月24日(日)後10・00スタート(全4話)
※第1話無料放送

公式サイト:http://www.wowow.co.jp/dramaw/zekkyo
 
●photo/中村功 text/くれい響 hair&make/西岡達也(Leinwand) sytling/村留利弘(Yolken) 衣装協力/ランバン オン ブルー